ほんとのほんと

(とがったことばがいくつか)

尖った言葉がいくつか

(かべにぶつかってころがってひえた)

壁にぶつかって転がって冷えた

(ざわついたまましずかになって)

ざわついたまま静かになって

(じかんだけがすりぬけた)

時間だけがすり抜けた

(だれかがだれかきずつけて)

誰かが誰か傷付けて

(だからどちらもきずついて)

だからどちらも　傷ついて

(おそろいのきもちではなれながら)

お揃いの気持ちで　離れながら

(おそろいのきもちでそばにいた)

お揃いの気持ちで　側にいた

(こえがききたくてなかなか)

声が聞きたくて　なかなか

(こえがだせなくて)

声が出せなくて

(こころはなんどもよんでいるのに)

心は何度も　呼んでいるのに

(こわくていたくてみじめでもだいじで)

怖くて痛くて惨めでも大事で

(かくしてかぎかけてわすれたふりして)

隠して鍵かけて忘れたふりして

(まもってきたほんとのほんとが)

守ってきた　ほんとのほんとが

(ふたりぶんでずっとよびあってるのに)

二人分でずっと呼び合ってるのに

(おとなのかおをしてから)

大人の顔をしてから

(いきかたがちょっとざつになった)

生き方がちょっと雑になった

(ふつうのことだしふつうがたいへんで)

普通の事だし　普通が大変で

(じかんにだいたいはこばれた)

時間に大体運ばれた

(とがったことばがてきかくに)

尖った言葉が的確に

(むねをつらぬいてころがってひえた)

胸を貫いて　転がって冷えた

(なにもできないよふるえながら)

何もできないよ　震えながら

(おさえつけていくのだろう)

押さえつけていくのだろう

(そばにいるいみをかんがえて)

側にいる意味を考えて

(なかなかたどりつけなくて)

なかなか辿り着けなくて

(からだはとっくにわかってるのに)

体はとっくに　解ってるのに

(うまれたときくらいのはだかのこえで)

生まれた時くらいの裸の声で

(どうぶつのままでそだたないこえで)

動物のままで　育たない声で

(かがみみたいにどうじにさわって)

鏡みたいに　同時に触って

(いまがおわればいままでにもどって)

今が終われば今までに戻って

(それでもいいよいまのつづきなら)

それでもいいよ　今の続きなら

(まもっていくほんとのほんとが)

守っていく　ほんとのほんとが

(いちどでもちゃんとだきあえた)

一度でもちゃんと　抱き合えた

(わけられないほんとのほんとが)

分けられない　ほんとのほんとが

(ふたりぶんでずっと)

二人分でずっと