さかさまに

(さかさまにさかさまに)

さかさまに　さかさまに

(わたしのじんせいはかえっていく)

わたしの人生は　返って行く

(はかばからゆりかごまで)

墓場から　ゆりかごまで

(すべりおちて)

すべり落ちて

(しあわせなふたりがこいびとにもどり)

幸せな二人が　恋人に戻り

(だいすきだったおばあちゃんがえがおでてをまねく)

大好きだったおばあちゃんが　笑顔で手をまねく

(ともだちのすんでいるぴかぴかのまんしょんは)

友だちの住んでいる　ピカピカのマンションは

(こうじのあとにたんぼになる)

工事の後に　田んぼになる

(かれんだーのひづけがいちにちずつもどり)

カレンダーの日付が　一日ずつ戻り

(こうえんのくすのきがちいさくなっていく)

公園のクスノキが　小さくなっていく

(だれかにぬすまれていたおきにいりのじてんしゃは)

だれかに盗まれていた　お気に入りの自転車は

(わたしのもとにかえってくる)

わたしの元に返ってくる

(しょうじょはやがてあかちゃんになり)

少女はやがて　赤ちゃんになり

(おかあさんにせおわれていく)

お母さんに　背負われていく

(ひとつずつわすれるために)

ひとつずつ　忘れるために

(こどもたちはがっこうにかよう)

子どもたちは　学校に通う

(ゆっくりとゆっくりと)

ゆっくりと　ゆっくりと

(とおくへきえるみんなのせなか)

遠くへ消える　みんなの背中

(こころからすきだったあのひとも)

心から好きだったあの人も

(やがてみしらぬひとになる)

やがて見知らぬ人になる

(さらさらとさらさらと)

さらさらと　さらさらと

(そらへのぼるあかいすなどけい)

空へ昇る　赤い砂時計

(おもいではやがてこおりのように)

思い出はやがて　氷のように

(みずにとけてきえゆくの)

水に溶けて　消えゆくの

(にしからのぼるゆうひにむかって)

西から昇る夕陽に　向かって

(じてんしゃでさかをおりたら)

自転車で坂を降りたら

(わたしをおいこしあなたははしる)

わたしを追い越し　あなたは走る

(うみのむこうまでかけぬけていく)

海の向こうまで　駆け抜けていく

(あじさいがさくころにわたしは)

紫陽花が咲くころに　わたしは

(ひとつずつわかがえる)

ひとつずつ若返る

(あめはそらへしとしとかえる)

雨は空へ　しとしと返る

(みらいをのせてみらいをのせて)

未来を乗せて　未来を乗せて

(やがてわたしもこどもにもどり)

やがてわたしも　子どもに戻り

(じてんしゃからさんりんしゃにのりかえる)

自転車から　三輪車に　乗りかえる

(そしてわたしは)

そして　わたしは

(おかあさんのなかへと)

お母さんの　中へと

(なきながらかえる)

泣きながら　帰る

(ゆらゆらとゆらゆらと)

ゆらゆらと　ゆらゆらと

(みずうみでひとりふねをこいでいたら)

湖で一人　舟を漕いでいたら

(だれもいないはずなのに)

だれもいない　はずなのに

(しんぞうのおとがひびきわたる)

心臓の音が　響きわたる

(きらきらときらきらと)

きらきらと　きらきらと

(みずのそこでじてんしゃがひかる)

水の底で　自転車が光る

(いつかきいたこもりうたが)

いつか聞いた　子守唄が

(わたしをよぶの)

わたしを呼ぶの

(さかさまにさかさまに)

さかさまに　さかさまに

(ここまでたどりついてふりかえれば)

ここまでたどりついて　振り返れば

(みんながわたしにとおくから)

みんながわたしに　遠くから

(わらいながらおおきくてをふっていたの)

笑いながら　大きく手を　振っていたの

(にぎやかににぎやかに)

にぎやかに　にぎやかに

(ここからはじまるよわたしのまーち)

ここから始まるよ　わたしのマーチ

(みずのながれにみをまかせて)

水の流れに　身をまかせて

(みらいをゆめみてねむる)

未来を夢見て眠る