夏目漱石「こころ」3-45

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投稿者投稿者たけしいいね0お気に入り登録
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夏目漱石「こころ」3-45
下)先生と遺書
夏目漱石の「こころ」(下)でございます。
なるべく原文ママで問題を設定しておりますので、誤字なのか原文なのかややこしいとは思われますが最後までお付き合い下さい。

オリジナルの書き方・読み方については以下に載せますので、参考の程よろしくお願い致します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
10:択んだ(えらんだ)
20:更えます(かえます)
28:二人前(ふたりまえ)
40:漸々(ようよう)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
今回は少し長めです。
お待たせしました。ごめんなさい、公開状態を切り替え忘れていました。i
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 mame 5702 A 5.9 95.3% 365.1 2189 107 43 2024/12/14
2 やまちゃん 5120 B+ 5.2 97.5% 416.2 2185 54 43 2024/11/13

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問題文

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(にじゅうさん)

二十三

(「わたくしのざしきにはひかえのまというようなよんじょうがふぞくしていました。)

「私の座敷には控えの間というような四畳が付属していました。

(げんかんをあがってわたくしのいるところへとおろうとするには)

玄関を上って私のいる所へ通ろうとするには、

(ぜひこのよんじょうをよこぎらなければならないのだから、)

是非この四畳を横切らなければならないのだから、

(じつようのてんからみると、しごくふべんなへやでした。)

実用の点から見ると、至極不便な室でした。

(わたくしはここへけいをいれたのです。)

私は此所へKを入れたのです。

(もっともさいしょはおなじはちじょうにふたつつくえをならべて、)

尤も最初は同じ八畳に二つ机を並べて、

(つぎのまをきょうゆうしておくかんがえだったのですが、)

次の間を共有して置く考えだったのですが、

(けいはせまくるしくってもひとりでいるほうがいいといって、)

Kは狭苦しくっても一人で居る方が好いと云って、

(じぶんでそっちのほうをえらんだのです。)

自分で其方のほうを択んだのです。

(まえにもはなしたとおり、おくさんはわたくしのこのしょちにたいしてはじめはふさんせいだったのです。)

前にも話した通り、奥さんは私のこの所置に対して始めは不賛成だったのです。

(げしゅくやならば、ひとりよりふたりがべんりだし、)

下宿屋ならば、一人より二人が便利だし、

(ふたりよりさんにんがとくになるけれども、しょうばいでないのだから、)

二人より三人が得になるけれども、商売でないのだから、

(なるべくならよしたほうがいいというのです。)

なるべくなら止した方が好いというのです。

(わたくしがけっしてせわのやけるひとでないからかまうまいというと、)

私が決して世話の焼ける人でないから構うまいというと、

(せわはやけないでも、きごころのしれないひとはいやだとこたえるのです。)

世話は焼けないでも、気心の知れない人は厭だと答えるのです。

(それではいまやっかいになっているわたくしだっておなじことではないかとなじると、)

それでは今厄介になっている私だって同じ事ではないかと詰ると、

(わたくしのきごころははじめからよくわかっているとべんかいしてやまないのです。)

私の気心は初めから能く分っていると弁解して已まないのです。

(わたくしはくしょうしました。)

私は苦笑しました。

(するとおくさんはまたりくつのほうこうをかえます。)

すると奥さんは又理窟の方向を更えます。

など

(そんなひとをつれてくるのは、わたくしのためにわるいからよせといいなおします。)

そんな人を連れて来るのは、私の為に悪いから止せと云い直します。

(なぜわたくしのためにわるいかときくと、こんどはむこうでくしょうするのです。)

何故私の為に悪いかと聞くと、今度は向うで苦笑するのです。

(じつをいうとわたくしだってしいてけいといっしょにいるひつようはなかったのです。)

実をいうと私だって強いてKと一所にいる必要はなかったのです。

(けれどもつきづきのひようをかねのかたちでかれのまえにならべてみせると、)

けれども月々の費用を金の形で彼の前に並べて見せると、

(かれはきっとそれをうけとるときにちゅうちょするだろうとおもったのです。)

彼はきっとそれを受取る時に躊躇するだろうと思ったのです。

(かれはそれほどどくりつしんのつよいおとこでした。)

彼はそれ程独立心の強い男でした。

(だからわたくしはかれをわたくしのうちへおいて、)

だから私は彼を私の宅へ置いて、

(ふたりまえのしょくりょうをかれのしらないまにそっとおくさんのてにわたそうとしたのです。)

二人前の食料を彼の知らない間にそっと奥さんの手に渡そうとしたのです。

(しかしわたくしはけいのけいざいもんだいについて、)

然し私はKの経済問題について、

(いちごんもおくさんにうちあけるきはありませんでした。)

一言も奥さんに打ち明ける気はありませんでした。

(わたくしはただけいのけんこうについてうんぬんしました。)

私はただKの健康に就いて云々しました。

(ひとりでおくとますますにんげんがへんくつになるばかりだからといいました。)

一人で置くと益人間が偏窟になるばかりだからと云いました。

(それにつけたして、)

それに付け足して、

(けいがようけとおりあいのわるかったことや、じっかとはなれてしまったことや)

Kが養家と折合の悪かった事や、実家と離れてしまった事や、

(いろいろはなしてきかせました。)

色々話して聞かせました。

(わたくしはおぼれかかったひとをだいて、じぶんのねつをむこうにうつしてやるかくごで、)

私は溺れかかった人を抱いて、自分の熱を向うに移してやる覚悟で、

(けいをひきとるのだとつげました。)

Kを引き取るのだと告げました。

(そのつもりであたたかいめんどうをみてやってくれと、)

その積りであたたかい面倒を見て遣ってくれと、

(おくさんにもおじょうさんにもたのみました。)

奥さんにも御嬢さんにも頼みました。

(わたくしはここまできてようようおくさんをときふせたのです。)

私はここまで来て漸々奥さんを説き伏せたのです。

(しかしわたくしからなんにもきかないけいは、このてんまつをまるでしらずにいました。)

然し私から何にも聞かないKは、この顛末をまるで知らずにいました。

(わたくしもかえってそれをまんぞくにおもって、のっそりひきうつってきたけいを、)

私も却ってそれを満足に思って、のっそり引き移って来たKを、

(しらんかおでむかえました。)

知らん顔で迎えました。

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