怖い話《七夕の願い事》
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問題文
(だいがくをそつぎょうしてねんがんのほいくしになったわたしは、)
大学を卒業して念願の保育士になった私は、
(はじめてきんむするそのとし、4さいじのたんとうになりました。)
初めて勤務するその年、4歳児の担当になりました。
(そのほいくえんにはきょういくねっしんなりじちょうがいて、よみかきそろばんはできるだけ)
その保育園には教育熱心な理事長がいて、読み書きそろばんは出来るだけ
(はやくおぼえたほうがいいというほうしんで、4さいじくらすになると、)
早く覚えた方がいいという方針で、4歳児クラスになると、
(ほぼぜんいんがかんたんなけいさんをしたり、ひらがなをかいたりすることができました。)
ほぼ全員が簡単な計算をしたり、ひらがなを書いたりする事が出来ました。
(いそがしくもじゅうじつしたまいにちをすごすなか、ほぼまいつき、なんらかのいべんとが)
忙しくも充実した毎日を過ごす中、ほぼ毎月、何らかのイベントが
(かいさいされるので、しょくいんはそのじゅんびなどでおおいそがしです。)
開催されるので、職員はその準備等で大忙しです。
(6がつのてるてるぼうずづくりがおわると、つぎのいべんとはたなばたのたんざくづくりです。)
6月のてるてる坊主作りが終わると、次のイベントは七夕の短冊作りです。
(4さいじくらすははさみをつかってかみをきることもできますから、)
4歳児クラスはハサミを使って紙を切る事も出来ますから、
(じぶんですきないろのおりかみをきってたんざくをつくり、)
自分で好きな色の折り紙を切って短冊を作り、
(あなをあけてひもをとおして、なまえとねがいごとをかきます。)
穴を開けて紐を通して、名前と願い事を書きます。
(いっしんふらんにねがいごとをかくこもいれば、まわりのこのねがいごとをみてから)
一心不乱に願い事を書く子もいれば、周りの子の願い事を見てから
(かきはじめるこや、じっとちゅうをみつめてじっくりかんがえてからかきはじめるこなど、)
書き始める子や、じっと宙を見つめてじっくり考えてから書き始める子など、
(それぞれこせいてきで、みているだけでいやされます。)
それぞれ個性的で、見ているだけで癒されます。
(なかにはつたないもじで「くじらになりたい」とか「びーるのあわになりたい」など、)
中には拙い文字で「くじらになりたい」とか「ビールの泡になりたい」など、
(ついわらってしまうようなねがいごともあれば、)
つい笑ってしまうような願い事もあれば、
(「せんたいひーろーになりたい」とか「およめさんになれますように」など、)
「戦隊ヒーローになりたい」とか「お嫁さんになれますように」など、
(いかにもこどもらしいねがいごともあります。)
いかにも子供らしい願い事もあります。
(かんじで「とうだいにいれますように」とかくきょうしゃもいましたが、)
漢字で「東大に入れますように」と書く強者もいましたが、
(おそらくほごしゃのほうから、まいにちのようにいいきかされているのでしょう。)
恐らく保護者の方から、毎日の様に言い聞かされているのでしょう。
(えんのげんかんにかざられたおおきなささは、そのえだがしなるほど、)
園の玄関に飾られた大きな笹は、その枝がしなる程、
(いろとりどりのたんざくにかかれたこどもたちのねがいごとであふれていました。)
色とりどりの短冊に書かれた子供達の願い事で溢れていました。
(それからにしゅうかんほどげんかんにかざられたたんざくは、えんでのこどもたちのようすについて)
それから二週間程玄関に飾られた短冊は、園での子供達の様子について
(ほごしゃのほうとやりとりする「れんらくのーと」のあいだにはさんで、)
保護者の方とやり取りする「連絡ノート」の間に挟んで、
(おやごさんにかえすことになっています。)
親御さんに返す事になっています。
(こどもたちにおしまれつつはずされたたんざくは、ゆうがた、みんながおひるねをしているあいだに)
子供たちに惜しまれつつ外された短冊は、夕方、みんながお昼寝をしている間に
(ひとつひとつなまえをかくにんして、「れんらくのーと」にはさんでいきました。)
一つ一つ名前を確認して、「連絡ノート」に挟んでいきました。
(すると、なまえのかかれていないたんざくが、いちまいあまってしまいました。)
すると、名前の書かれていない短冊が、一枚余ってしまいました。
(こどものもじですから、4さいじくらすか、5さいじくらすのものにまちがいないのですが)
子供の文字ですから、4歳児クラスか、5歳児クラスの物に間違いないのですが
(わたしのくらすのたんざくはぜんいんぶん「れんらくのーと」にはさみましたし、)
私のクラスの短冊は全員分「連絡ノート」に挟みましたし、
(5さいじくらすのたんとうにかくにんしても、たんざくのもちぬしがふめいなままです。)
5歳児クラスの担当に確認しても、短冊の持ち主が不明なままです。
(それに、どちらのくらすにも、きょうけっせきのこはいなかったので、)
それに、どちらのクラスにも、今日欠席の子はいなかったので、
(どうすればいいか、えんちょうせんせいにそうだんしてみることにしました。)
どうすればいいか、園長先生に相談してみる事にしました。
(「えんちょうせんせい、だれのかわからないたんざくがいちまいあまったんですけどどうしましょう?」)
「園長先生、誰のか分からない短冊が一枚余ったんですけどどうしましょう?」
(かがみもじなどもあり、くらすのなかでいちばんなんかいなしょたいでかかれたそのたんざくは、)
鏡文字などもあり、クラスの中で一番難解な書体で書かれたその短冊は、
(それまでどうしてもよめなかったのですが、えんちょうせんせいにみせるときに)
それまでどうしても読めなかったのですが、園長先生に見せる時に
(あらためてよんでみると、こうかかれているようにおもえました。)
改めて読んでみると、こう書かれている様に思えました。
(「みんなに ぼくが みえますように」)
「みんなに ぼくが みえますように」
(それをみたえんちょうせんせいは、すかさずそのたんざくをてにとると、)
それを見た園長先生は、すかさずその短冊を手に取ると、
(むごんでじぶんのつくえのひきだしのなかにある、ちいさなはこにしまいこみました。)
無言で自分の机の引き出しの中にある、小さな箱にしまい込みました。
(えんちょうせんせいがそのはこをあけたしゅんかん、からふるなたんざくがなんまいかはいっているのが)
園長先生がその箱を開けた瞬間、カラフルな短冊が何枚か入っているのが
(みえましたが、そのことについてわたしはあえて、ふかくついきゅうしませんでした。)
見えましたが、その事について私はあえて、深く追及しませんでした。