ジ・アノニマス

(こえもださずに。)

声も出さずに。

(だれかをねらっている。)

誰かを狙っている。

(けしてあれらにきをゆるしてはならない。)

けしてあれらに気を許してはならない。

(それはこんなよるのように・・・)

それはこんな夜のように…

(えがおをかわしたせつな、)

笑顔を交わした刹那、

(とつぜんおそいくる。)

突然襲い来る。

(せいじゃくのうちに。)

静寂の内に。

(ちからのないものゆえ)

力のないものゆえ

(むれあつまりながらも)

群れ集まりながらも

(それをしきするものなどけしてもたない)

それを指揮するものなどけして持たない

(はどめのきかぬがゆえ)

歯止めの利かぬがゆえ

(はつろするぼうりょくは)

発露する暴力は

(むめいのあつまりをもってしてわりなく)

無名の集まりを以てして理なく

(なにものにもなれないままに)

何者にもなれないままに

(むれているだけのものこそ)

群れているだけのものこそ

(よわいようでそのしんじつ)

弱いようでその真実

(あなどってはならない)

侮ってはならない

(そのむじゃきなえがおのおくに)

その無邪気な笑顔の奥に

(なにをひそませているのか)

何を潜ませているのか

(けしてしれたものではない)

けして知れたものではない

(みみをすませたなら・・・)

耳を澄ませたなら…

(そのうらがわで、あれがひよわなにんげんだ、)

その裏側で、「あれがひ弱な人間だ、」

(ねらっているのか。あれがわれらのえものだ。と。)

狙っているのか。「あれが我らの獲物だ。」

(きこえるだろう、こよいはあれをかどわかそう、)

聞えるだろう、「今宵はあれを拐かそう、」

(ささやくだろう。にどとひのめをみさせはしない。と。)

囁くだろう。「二度と日の目を見させはしない。」と。

(むらがりくるのは)

群がり来るのは

(まるでだれかを)

まるで誰かを

(そのなかまとしてひきいれようとするかのように)

その仲間として引き入れようとするかのように

(なまえをもたない)

名前を持たない

(あるかさえしれない)

有るかさえ知れない

(えがおをはりつけたむめいのしゅうだんをけいせいして)

笑顔を貼り付けた無名の集団を形成して

(ざんこくなしぜんのごんげは)

残酷な自然の権化は

(そのおさないすがたかたちは)

その幼い姿かたちは

(まびかれたおさなきこの)

間引かれた幼き子の

(いきうつしかとさえ)

生き写しかとさえ

(ぼっこせいてきあのまにすなえがおのうらに)

没個性的アノマニスな笑顔の裏に

(きょうあくぐろてすくなきばをもち)

凶悪グロテスクな牙を持ち

(たぜいにぶぜい)

多勢に無勢

(むらがりくれば)

群がり来れば

(あらがいようもなく)

抗いようも無く

(うらむこと)

恨むこと

(このみをなげいては)

この身を嘆いては

(なみだながらにくむこと)

涙ながら憎むこと

(このかんじょうおもい)

この感情おもい

(うすれはしても)

薄れはしても

(けさせはしないだろう)

消させはしないだろう

(なかまじゃない。)

仲間じゃない。

(そのてをはなせ！と。さけぶわたしに。)

その手を離せ！と。叫ぶ私に。

(そのえみ、ついぞくずさず。ただみくだすように・・・)

その笑み、終ぞ崩さず。ただ見下すように…

(じゅんすいなままに。)

純粋なままに。

(へんしゅうてきなまでぱらのいあっくに。)

偏執的なまでパラノイアックに。

(ただざんこくに。わたしをみつめて。ああ。)

ただ残酷に。私を見つめて。嗚呼。