はじまりのワイゲルト

(かくてわれをすてたまふなり。)

「かくて我を捨て玉ふなり。」

(かくてわれをあざむきたまふなり。)

「かくて我を欺き玉ふなり。」

(ひびきわたるききょのこえ)

響き渡る欷歔の声

(こがねのひとみにひかりはうつろ)

こがねの瞳に光は虚ろ

(されどきみにはよもあだしなを。)

「されどきみにはよもあだし名を。」

(くろきとうこひとみをやもちたらんきみには。)

「黒き瞳子ひとみをや持ちたらん君には。」

(そのみひとりふるはして)

その身独りふるはして

(こころはもはやげんにはあらず)

心は最早現には在らず

(いきたえたものがたりのむこうがわで)

息絶えた物語の向こう側で

(たいどうするあらたなものがたりが)

胎動する新たな物語が

(ゆめちがえどうしてわたしをとといかけ)

夢違え　ーーーー　どうして私をと問いかけ

(うつしよはすごしたひびをただおもいながら)

現し世は　ーーーー　過ごした日々をただ思いながら

(そらゆめのいつかあなたがくちずさんだことば)

空夢の　ーーーー　いつか貴方が口ずさんだ言葉

(はくじつはただうつろにつぶやきつづける)

白日は　ーーーー　ただ虚ろに呟き続ける

(くろきとうこひとみのこ)

黒き瞳子ひとみの子

(うまれていたのならば)

産まれていたのならば

(げんそうゆめをおっていつかどこかとおくへ)

幻想ゆめを追っていつか何処か遠くへ

(くろきとうこひとみのこ)

黒き瞳子ひとみの子

(げんにあいたならば)

現に飽いたならば

(げんそうゆめをあんでいつかどこかとおくへ)

幻想ゆめを編んでいつか何処か遠くへ

(よわいいつつにして)

齢 五つにして

(ははのすがたももはや)

母の姿ももはや

(おぼろげにもかいまみたようなきで)

おぼろげにも垣間見たような気で

(そのすがただけを)

その姿だけを

(そのなまえだけをただ)

その名前だけをただ

(むねのおくにきざんでいきていた)

胸の奥に刻んで生きていた

(はじまりのことばたるのは)

はじまりの言葉たるのは

(とおいおとぎばなしか)

遠い御伽噺か

(あるいはむねのうちずっととおいきおくか)

或いは胸の内ずっと遠い記憶か

(きみがなまえきみがおもかげ)

君が名前 君が面影

(いつかいつかいまいちど)

いつかいつか今一度

(ありすとおどれ)

アリスと踊れ

(そのことばこそ)

その言葉こそ

(ゆめのとのあいことばたれ)

夢の都の合言葉たれ

(ゆめとげんとこうさするとき)

夢と現と交叉するとき

(げんそうをつかみとって)

幻想を掴みとって

(ありすとおどれ)

アリスと踊れ

(そのことばこそ)

その言葉こそ

(げんそうきょうゆめのみやこのあいことばたれ)

幻想郷ゆめのみやこの合言葉たれ

(たといそれがげんにみた)

たといそれが現に見た

(はかないまぼろしでも)

儚い幻でも

(ゆめにいきて)

夢に生きて

(ありつづければ)

在り続ければ

(ゆめのとびらはひらかれん)

夢の扉は開かれん

(よるはながく)

夜は長く

(とおいよあけをのぞんで)

遠い夜明けを望んで

(ありすとおどれ)

アリスと踊れ

(いまはまだけがれいくまちをひとりあるきつづけて)

今はまだ穢れ行く街を独り歩き続けて