虚構性プロローグ／棗いつき

(とじられたほんがおちる)

閉じられた本が落ちる

(とたんにきえるげんしょうのあと)

途端に消える現象の跡

(おわりにはなにがのこる？)

終わりには何が残る？

(きろくきおくきそくうわさだけ)

記録 記憶 規則 噂だけ

(くらべたらきりがない)

比べたらキリが無い

(ぱたんととじるすうびょうごに)

パタンと閉じる 数秒後に

(わたしにはだれがきづく？)

私には誰が気付く？

(むろんすじょうかたりつがれたい)

無論 素性 語り継がれたい

(かなたのものたちに)

彼方の者たちに

(おったきずだけがわたしをしらせてた)

負った傷だけが 私を知らせてた

(うつろであることこそわたしなんだって)

ウツロである事こそ 私なんだって

(はらったてをつかんだのは・・・？)

払った手を 掴んだのは…？

(もういやんなったっていったって)

もう嫌んなったって言ったって

(もとめたがりで)

求めたがりで

(かくればなしひそめて)

隠れ話潜めて

(だれだろう？こたえない)

誰だろう？答えない

(きょうかいせんれっしょうさんけんとうに)

境界線裂傷散見 とうに

(いたんだりょうのてはたがいにべつのおもさだった)

傷んだ両の手は 互いに別の重さだった

(（それでも）「いいよ」。)

（それでも）「いいよ」。

(きょうもまたぺんをおとす)

今日もまたペンを落とす

(わかってはいるしょうそうだと)

分かってはいる 焦燥だと

(いらなくてつまらない)

いらなくてつまらない

(こどくしめいむじょうえらべない)

孤独 使命 無常 選べない

(くらべてもいみがない)

比べても意味がない

(あさってもまたすうびょうごに)

明後日もまた 数秒後に

(ぼくのことみてくれよ)

僕の事見てくれよ

(むろんすじょうかたりつがれたい)

無論 素性 語り継がれたい

(だれがここにあって)

誰がここに在って

(ぼくのことだけがおきざりになる)

僕の事だけが 置き去りになる

(うつろであることなんてきらいなんだって)

ウツロである事なんて 嫌いなんだって

(にげだすてでつかんだのは・・・？)

逃げ出す手で 掴んだのは…？

(もうちょうじょうせんこういっちゃって)

もう超常先攻行っちゃって

(はかられぬきっこう)

測られぬ拮抗

(まるでこれじゃだれかの)

まるでこれじゃ誰かの

(えんぎでこっけいで)

演技で 滑稽で

(はずれってひいてわらっちゃったって)

ハズレって引いて笑っちゃったって

(きみとてをつないだ)

君と手を繋いだ

(これはぼくのまほうだった)

これは 僕の魔法だった

(（きみのこと）「みえるよ」。)

（君の事）「見えるよ」。

(もうみつかったっていったって)

もう見つかったって言ったって

(すりぬけるじつぞう)

すり抜ける実像

(かくればなしまぎれて)

隠れ話紛れて

(どうだろう？わからない)

どうだろう？分からない

(もういやんなったっていったって)

もう嫌んなったって言ったって

(おとぎをまねた)

御伽を真似た

(えにぐまたちのかげで)

エニグマ達の影で

(おどろうはなしたい)

踊ろう 話したい

(さしひきもうりょうばっこしたって)

差し引き魍魎跋扈したって

(きみのてをつかんだこれはにせものじゃなさそうだ。)

君の手を掴んだ これは偽物じゃなさそうだ。

(（ここに）「いるよ」。)

（ここに）「居るよ」。

(（きみのこと）「わかりたい」。)

（君の事）「分かりたい」。

(（ぼくが）「まもるよ」。)

（僕が）「守るよ」。

(（ここから）「かたろう」。)

（ここから）「語ろう」。