2F.輝夜

(そのみめのうるわしきこと。)

『その見目の麗しきこと。

(てんよりちにふりしものよ。)

天より地に降りしものよ。

(つきなきあんやさえも。)

月無き闇夜さえも。

(あまねくかがやらすよう)

遍く輝らすよう』

(おぼろげにたゆたうきおくに)

おぼろげにたゆたう記憶に

(えいえんのときをかんじては)

永遠の時を感じては

(はるかとおくむかしむかしのものがたりのなかへ)

遙か遠く　むかしむかしの物語の中へ

(あなたはなにをかんじていた？)

私は何を感じていた？

(あなたはなにをおもっていた？)

私は何を思っていた？

(なにもない、けがれたばしょへとおとされて)

何もない、穢土へと落とされて

(そう)

そう

(みじめでむかちないほうじんは)

惨めで無価値な異邦人は

(そう)

そう

(あたえられたものをいまもまだ)

与えられたものを今もまだ

(なにもかもあきて)

何もかも飽きて

(なにもかもすぎて)

何もかも過ぎて

(それでもわすれられないもの)

それでも忘れられないもの

(ゆめのなかおもいだすほど)

夢の中　思い出すほど

(そのいみだけをうしなっても)

その意味だけを喪っても

(おもいかえすの)

思い返すの

(みなのかおとともにすごしたそのすがたを)

皆の顔と共に過ごしたその姿を

(つきのしたでおどろう)

月の下で踊ろう

(そうけがれたなはだれのもの)

そう『穢れた名』は誰のもの

(ちょうよはなよとそだてられて)

蝶よ花よと育てられて

(てにはいらぬものなどなく)

手に入らぬものなどなく

(なにもない。)

何もない。

(それゆえになにもたいせつでなく)

それゆえに何も大切でなく

(そう)

そう

(このなよなよたけよよるをてらせ)

この名よなよ竹よ夜を輝らせ

(そう)

そう

(そこにこめられたおもいだけが)

そこに込められた思いだけが

(なにもかもけして)

何もかも消して

(なにもかもすてて)

何もかも棄てて

(それでもてばなせないもの)

それでも手放せないもの

(ゆめのなかおもいだすまで)

夢の中　思い出すまで

(そのいみだけをなくしても)

その意味だけを失くしても

(おもいだしても)

思い出しても

(きっといつかはわすれてしまうさだめでも)

きっといつかは忘れてしまう定めでも

(つきのしたでわらおう)

月の下で笑おう

(そうけがれたなのいみをなして)

そう『穢れた名』の意味をなして

(よるにそっとかがやくように。)

夜にそっと輝くように。

(「そのみめのうるわしきこと。)

『その見目の麗しきこと。

(てんよりちにふりしものよ。)

天より地に降りしものよ。

(つきなきあんやさえも。)

月無き闇夜さえも。

(あまねくかがやらすよう)

遍く輝らすよう』

(なにもかもうれいいて)

何もかも愁いて

(なにもかもさびて)

何もかも寂びて

(それでもほろびずかがやくもの)

それでも滅びず輝くもの

(ゆめのなかおもいだすのに)

夢の中　思い出すのに

(そのいみだけをいだいている)

その意味だけを抱いている

(おもいだした)

思い出した

(なつかしきかおとつきのしたでともにうたおう)

懐かしき顔と月の下で共に歌おう

(けがれなきなではなく)

『カグヤ』ではなく

(そうけがれたなをなのるよう)

そう『穢れた名』を名乗るよう