i ／日食なつこ

(かぜとおしのいいひびだうすらさむいふところふたつ)

風通しのいい日々だ　うすら寒い懐ふたつ

(ぼくとおまえゆびさしあいわらってもかいけつしないことだらけ)

僕とお前　指差し合い　笑っても解決しないことだらけ

(きずをなめあうよりほかなくさいぜんなどとれるわけなく)

傷を舐め合う　より他なく　最善など　取れるわけなく

(だきょうにだきょうをかさねていたあのひびはとおくにがくまぶしい)

妥協に妥協を重ねていた　あの日々は遠く苦く眩しい

(みとおしのわるいひびにうすらさむいやくそくひとつ)

見通しの悪い日々に　うすら寒い約束ひとつ

(ぼくとおまえだけにつうじるあんごうはふえてもかねにはならず)

僕とお前だけに通じる　暗号は増えても金にはならず

(いつのひかがいつなのかむすんだちかいはいきているか)

いつの日かが　いつなのか　結んだ誓いは　生きているか

(ざせつにざせつをかさねていたあのひびはとおくにがくまぶしい)

挫折に挫折を重ねていた　あの日々は遠く苦く眩しい

(あのさぼくはさ)

あのさ、僕はさ、

(かたづいてないちらかりたおしたおまえのほうがよかったのに)

片付いてない散らかり倒したお前のほうがよかったのに

(ずいぶんすっきりとしちゃってまぁよのなかめいてかっこいいな)

随分すっきりとしちゃってまぁ世の中めいてかっこいいな

(そうゆいたいゆえないままぼくのめのまえをすぎさってゆく)

そう言いたい言えないまま僕の目の前を過ぎ去ってゆく

(きょうのえいゆうかつてのおまえにあびせたしょうさんおもかげはかいむ)

今日の英雄　かつてのお前に浴びせた賞賛　面影は皆無

(きれあじのわるいひびにやたらとじょうぶなからだふたつ)

切れ味の悪い日々に　やたらと丈夫な身体ふたつ

(いぶくろにはいりゃおなじだときざんでいためたきげんぎれのみらい)

胃袋に入りゃ同じだと　刻んで炒めた期限切れの未来

(ところがおまえはいつのまになんだかとおいところにいて)

ところがお前はいつのまに　なんだか遠いところにいて

(たべかたもいきかたもととのえてつうじないことばがふえてゆき)

食べ方も生き方も整えて　通じない言葉が増えてゆき

(きれいじゃないつぎはぎだらけのおまえのほうがよかったのに)

綺麗じゃないつぎはぎだらけのお前のほうがよかったのに

(ずいぶんとぎすまされちゃってまぁあこがれめいてかっこいいな)

随分研ぎ澄まされちゃってまぁ憧れめいてかっこいいな

(そうゆいたいゆえないままぼくだけがおもいでになってゆく)

そう言いたい言えないまま僕だけが思い出になってゆく

(とおいえいゆうおいかぜそのせにあびてはしょうさんぼくはまだぎゃくふう)

遠い英雄　追い風その背に浴びては賞賛　僕はまだ逆風

(はなのなひとつおしえておけまいとしさけばおもいだす)

”花の名ひとつ教えておけ　毎年咲けば思い出す”

(ぼくはおまえにそれをなせないままいまさらのこうかいのひとつさ)

僕はお前にそれを為せないまま　今更の後悔の一つさ

(ああきょうはなにをわすれてゆくあああすはなにをわすれてゆく)

ああ今日は何を忘れてゆく？　ああ明日は何を忘れてゆく？

(さいごにはなにをおぼえているあのさぼくはさ)

最後には何を覚えている？　あのさ、僕はさ、

(かたづいてないちらかりたおしたおまえのほうがよかったけど)

片付いてない散らかり倒したお前のほうがよかったけど

(でもさいしゅうてきにはみとめるけどくやしいけどかっこいいな)

でも最終的には認めるけど　悔しいけど　かっこいいな

(もうゆけないゆえないままぼくはことばなくたちさってゆこう)

もう行けない言えないまま僕は言葉なく立ち去ってゆこう

(きょうのえいゆうかつてのおまえにさよならしょうさんおもかげをいだいてゆこう)

今日の英雄　かつてのお前にさよなら賞賛　面影を抱いてゆこう