長文50

(わらったそのかおを、ずっとおぼえてる。)

笑ったその顔を、ずっと覚えてる。

(かぜにゆれたしゃつが、なつのにおいをはこんだ。)

風に揺れたシャツが、夏の匂いを運んだ。

(とけいのはりだけが、おもいでをきざみつづける。)

時計の針だけが、思い出を刻み続ける。

(なにもいわなくても、きもちはつうじてた。)

なにも言わなくても、気持ちは通じてた。

(せなかにかんじるちんもくが、すこしくるしかった。)

背中に感じる沈黙が、少し苦しかった。

(なまえをよばれるたび、こころがはねた。)

名前を呼ばれるたび、心が跳ねた。

(しらないふりをしたのは、やさしさだった。)

知らないふりをしたのは、優しさだった。

(わらいごえがきえて、そらがやけにひろくなった。)

笑い声が消えて、空がやけに広くなった。

(てがみをよんだあのひが、いまもつづいてる。)

手紙を読んだあの日が、今も続いてる。

(やさしいうそが、ほんとのやさしさになるときがある。)

やさしい嘘が、ほんとの優しさになる時がある。

(あのばしょへもどれないことに、なみだした。)

あの場所へ戻れないことに、涙した。

(すきだったきょくが、いまはいたみにかわった。)

好きだった曲が、今は痛みに変わった。

(ずっといえなかったことばが、ゆめでこぼれた。)

ずっと言えなかった言葉が、夢でこぼれた。

(おなじけしきでも、きみとだとちがってみえた。)

同じ景色でも、君とだと違って見えた。

(あさやけが、きのうのふあんをとかしてくれた。)

朝焼けが、昨日の不安を溶かしてくれた。

(いっしょにあるくはやさが、きもちのきょりだった。)

一緒に歩く速さが、気持ちの距離だった。

(そばにいてほしいとおもうしゅんかんがある。)

側にいてほしいと思う瞬間がある。

(あのときのせんたくが、いまのじぶんをつくった。)

あの時の選択が、今の自分を作った。

(こころがふるえたのは、ほんとうにつたえたかったから。)

心が震えたのは、ほんとうに伝えたかったから。

(えがおのうらにかくしたなみだが、すこしおもかった。)

笑顔の裏に隠した涙が、少し重かった。

(こころにささることばは、しずかにのこる。)

心に刺さる言葉は、静かに残る。

(みえないきずなが、たしかにぼくらをつないでいる。)

見えない絆が、確かに僕らを繋いでいる。

(やさしさがおくれてとどくこともある。)

優しさが遅れて届くこともある。

(わすれたいひほど、よくおもいだす。)

忘れたい日ほど、よく思い出す。

(めをとじたときのひかりがいちばんうつくしい。)

目を閉じたときの光がいちばん美しい。

(まちがえたみちで、たいせつなひとにであった。)

間違えた道で、大切な人に出会った。

(わらったかおが、ほんとうのつよさにみえた。)

笑った顔が、ほんとうの強さに見えた。

(いまのちんもくが、かこよりゆうべんだった。)

いまの沈黙が、過去より雄弁だった。

(あのひのことばが、まだみちしるべになってる。)

あの日の言葉が、まだ道しるべになってる。

(みらいはふたしかだけど、きぼうはかくじつにある。こころにささることばは、しずかにのこる。)

未来は不確かだけど、希望は確実にある。心に刺さる言葉は、静かに残る。