ゆめ

(ゆめをみたんだこわいゆめ)

ゆめを見たんだ　こわいゆめ

(どこかしらないじゃんぐるの)

どこかしらない　ジャングルの

(こくじんばかりのとおいくに)

黒人ばかりの　とおい国

(こくじんのこになっていた)

黒人の子に　なっていた

(まいにちひとがしんでって)

まい日　ひとが死んでって

(つぎからつぎへとしんでって)

次から次へと　死んでって

(みんなぺこぺこおなかがぺこぺこ)

みんなペコペコ　おなかがペコペコ

(おへそばかりとびだして)

おへそばかり　とび出して

(つぎつぎうえじにしていって)

つぎつぎ　うえ死に　して行って

(きのみもくさもたべちゃって)

木の実も草も　たべちゃって

(へびもとかげもたべちゃって)

ヘビもトカゲも　たべちゃって

(たべものなんかもうなくて)

たべものなんか　もうなくて

(ぺこぺこふらふら)

ペコペコ　ふらふら

(あさからばんまでしゃがんで)

朝から晩まで　しゃがんで

(ほねとかわとのぺこぺこ)

骨と皮とのペコペコ

(そんなあるあさすぐそばで)

そんなある朝　すぐそばで

(だれかがふいにたおれたんだ)

だれかが　ふいに　たおれたんだ

(たおれたとたんに)

たおれたとたんに

(しんでたんだ)

死んでたんだ

(それはかあさんぼくのかあさん)

それは　かあさん　ぼくのかあさん

(だけどぼく)

だけど　ぼく

(しゃがんだまま)

しゃがんだまま

(だまったまま)

だまったまま

(なみだもでないぼく)

なみだも出ない　ぼく

(あんまりながいせんそうで)

あんまり　ながい戦争で

(あんまりおなかがぺこぺこ)

あんまり　おなかがペコペコ

(あんまりひとがしんでって)

あんまり　ひとが死んでって

(だからなみだもでないんだ)

だから　なみだも出ないんだ

(だれもがみんなしらんかお)

だれもがみんな　しらん顔

(ふつうのできごとしらんかお)

ふつうのできごと　しらん顔

(おめんみたいなしらんかお)

お面みたいな　しらん顔

(かあさん)

……かあさん！

(かあさん)

……かあさん！

(かあさんみつめてひるがきて)

かあさん見つめて　ひるが来て

(かあさん)

……かあさん！

(かあさん)

……かあさん！

(ほしもでないでよがふけて)

星もでないで　夜がふけて

(たいほうのおとでよがあけて)

大砲の音で　夜があけて

(そしたらそしたら)

そしたら　そしたら

(いないんだだれもいないんだ)

いないんだ　だれもいないんだ

(いきてるものは)

生きてるものは

(いないんだ)

いないんだ

(だれも)

だれも

(うえじにしてたんだ)

うえ死にしてたんだ……

(しがいがいっぱい)

死がいがいっぱい

(たいようぎらぎら)

太陽　ギラギラ

(ぼくだけいきてて)

ぼくだけ　生きてて

(こわいよおこわいよお)

こわいよオ！　こわいよオ！

(おーいおーい)

おーい！　おーい！

(よぼうとしても)

呼ぼうとしても

(なこうとしても)

泣こうとしても

(なけない)

泣けない

(よべない)

呼べない

(しがいがいっぱいこわいよお)

死がいが　いっぱい　こわいよオ！

(ぼくだけいきててこわいよお)

ぼくだけ　生きてて　こわいよオ！

(こわいよおこわいよお)

こわいよオ！　こわいよオ！

(こわいよおこわいよお)

こわいよオ！　こわいよオ！！

(ゆめだったんだ)

ゆめ　だったんだ……