童話になったらいいのに

(ねえしらないことはなそうよ)

ねえ知らないこと話そうよ

(やさしいふたりうそつきはじかんだよ)

やさしい二人　うそつきは時間だよ

(こんなにこんなににくむのにおんなじくらいにすきだから)

こんなにこんなに憎むのに　おんなじくらいに好きだから

(なるべくしろいゆきばかりをあなたのくちにつめこんだ)

なるべく白い雪ばかりを　あなたの口に詰め込んだ

(やさしいひとになれないままふたりであめをまちつづける)

やさしいひとになれないまま　ふたりで雨を待ち続ける

(からだもへらしてしまえたらぼくらはすこしわらうのに)

からだも減らしてしまえたら　僕らはすこし笑うのに

(ひかりがどんどんあたまにまわってぼくらのびょうきはわるくなる)

光がどんどん頭に回って　僕らの病気は悪くなる

(から)

から

(ねえしらないことはなそうよ)

ねえ知らないこと話そうよ

(やさしいふたりうそつきはじかんだよ)

やさしい二人　うそつきは時間だよ

(ちいさくなったぼくのこえにかさなってうたうこえは)

小さくなった僕の声に重なって歌う声は

(もうどうわになったらいいのにね)

もう童話になったらいいのにね

(ってわらってまたつれだってねむるだけさ)

って笑って　また連れだって眠るだけさ

(つたないことばでいいよやさしいのはいらないよ)

つたない言葉でいいよ、やさしいのはいらないよ。

(つめたくめぐるきせつにただぼくたちはむくわれるのだと)

冷たく巡る季節にただ　僕たちは報われるのだと

(ことばにばかりゆめをみてる)

言葉にばかり夢をみてる

(ふたりはさらになくすんだ)

ふたりはさらに失くすんだ

(なんにもできないくるしみのはては)

何にもできない苦しみの果ては

(やさしいこえでどなるくせに)

やさしい声で怒鳴るくせに！

(ぼくたちびたみんもたりなかったんだろうね)

僕たちビタミンも足りなかったんだろうね。

(くるしいはなたばくるしいなら)

くるしい？はなたば苦しいなら

(こんどはぞうかをかざろうかかぐわしさもいらないよ)

今度は造花を飾ろうか　かぐわしさもいらないよ

(こんなことになってしまってごめんね)

「こんなことになってしまってごめんね」

(とかってまた)

とかって、また！

(かさなったぼくたちのこんなにちいさないさかいが)

重なった僕たちのこんなに小さないさかいが

(ぼくたちをじゃまするんだ)

僕たちをじゃまするんだ！

(あのねしらないことはなそうよ)

あのね、知らないこと話そうよ

(やさしいふたりうそつきのじかんをしよう)

やさしい二人　うそつきの時間をしよう

(ひえきったきみのこえにかさなってうたうこえは)

冷え切ったきみの声に重なって歌う声は

(ああどうわになってしまったらいいのにね)

ああ、童話になってしまったらいいのにね…！

(ってまたなきそうにわらうだけさ)

ってまた　泣きそうに笑うだけさ

(くるしんでいてもいいよ)

苦しんでいてもいいよ

(そういうことばがいいよ)

そういう言葉がいいよ

(いつだってぼくたちはながいよるかなしみがまたよりそってねむるまえに)

いつだって僕たちは長い夜　かなしみがまた寄り添って眠る前に

(しらないことはなそうよ)

知らないこと話そうよ

(やさしいのはいらないよ)

やさしいのはいらないよ