薄ら氷心中
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歌詞(問題文)
(ねえどうしてめをあわそうともしないの)
ねえ,如何して目を合わさうともしないの。
(なぜ)
何故。
(きっとちょくしにたえないとでもいうのでしょう)
屹度「直視に耐へない。」とでも云ふのでせう。
(どうせ)
だうせ。
(じゃあいったいだれよこんなおんなにしたのはだれ)
ぢゃあ一体誰よ。こんな女にしたのは誰。
(ねえまっていたんだよおってきてくれるのを)
ねえ,待つてゐたんだよ追つて来てくれるのを
(ずっと)
ずつと。
(やっとあえたってのにだいてもくれないのか)
やつと会へたつてのに抱いてもくれないのか。
(ちょっと)
一寸。
(ああじんせいごはさんおまえさんあんたのせいだって)
あゝ人生ご破算。お前さんあんたの所為だつて。
(わかんないのしあわせってなに)
分かんないの。仕合せつて何。
(どれがそれだってのよ)
何れが其れだつてのよ。
(めんどうくさいわのうみそもわたもばらまいてみせようか)
面倒臭いわ。脳味噌も腸もばら撒いて見せやうか。
(ほねのずいまでそめぬかれたおんなをごらんなさい)
骨の髄まで染め抜かれた女をご覧なさい。
(すきよだいすきみんなあんたにあげる)
好きよ大好き,皆あんたに上げる。
(いいえ)
いゝえ。
(きらいだいきらいよやっぱりかえしていますぐ)
嫌ひ大嫌ひよ,矢つ張り返して今直ぐ。
(なんて)
なんて。
(もうおそいわなむさんおまえさんでできてんだぜんぶ)
まう遅いわ南無三。お前さんで出来てんだ,全部。
(わかってんのしあわせもふこうも)
分かつてんの。仕合せも,不幸も,
(こくいっこくきえうせる)
刻一刻消え失せる。
(ひやこいようであったかいこのてがあじわいつくしたわ)
冷やこいようで温かいこの手が,味わひ尽くしたわ。
(これいじょうはなんにもないとおもうの)
これ以上は何にも無いと思ふの。
(にくくかわいいひとよ)
憎く可愛い人よ。
(いたいようできもちいいおわかれよすぎさったあのひび)
痛いやうで気持ち良いお別れよ。過ぎ去つたあの日々
(とどめているままのいのちごとおわらせてしまいたい)
留めてゐるまゝの生命ごと終はらせて仕舞ひたい。
(うすらいでいくわわたしはひとりぼっち)
薄らいで行くわ。私は独り法師。