降りてきて

(そんなにこわがらないで)

「そんなに怖がらないで」、

(あなたがわらうたびわたしのむねをしめてきづいたあめがあがる)

あなたが笑う度、私の胸を締めて気づいた、雨が上がる。

(かえしたぎこちなさとはうらはらてらされるせなかが)

返した牙骨無さとは、裏腹照らされる背中が、

(あたたかくてよかった)

暖かくて良かった。

(つちをふんでつかぬはずのあしあとがうえをかいていた)

土を踏んで、付かぬ筈の足跡が上を、書いていた。

(さみしくなってもいつかまよわぬように)

寂しくなっても、何時か迷わぬように、

(ひきかえしここにもどれるように)

引き返しここに戻れるように！

(あのかげはとおくこくどこまでもながくみえていた)

あの景は遠く濃く、どこまでも長く見えていた、

(おいかけてもおいかけてもにげていく)

追いかけても追いかけても、逃げていく。

(まぼろしすらもつかめたはず)

幻すらも掴めた筈…

(あのかげはとおくこくいつのまにわたしのうしろへ)

あの景は遠く濃く、何時の間に私の後ろへ、

(ふりかえれどふりかえれどかくれる)

振り返れど振り返れど、隠れる。

(こいねがうほどみえなくなった)

希う程見えなくなった。

(かなしいかおをしないで)

「悲しい顔をしないで」、

(あなたはそういうけれどわたしのめはとらえてしまったきずのすべて)

あなたはそう言うけれど、わたしの目は捉えてしまった、傷の全て。

(じかんがないとさとってかけよる)

時間がないと悟って、駆け寄る。

(とられたてうつったあかいみずにそまって)

取られた手、映った赤い水に、染まって。

(いくどめかのさくらがちりゆくさまをみとどけおもいだす)

幾度目かの桜が散りゆく様を、見届け思い出す。

(あなたがこのんだのもここだと)

あなたが好んだのもここだと。

(おりてきてよ)

「降りてきてよ」、

(むじゃきにきにのぼってうたってくれたなつかしいひびきをまたきかせてよ)

無邪気に木に登って、歌ってくれた、懐かしい響きをまた聞かせてよ。

(さびたからだをそいで)

錆びた躰を削いで。

(あしたつけたはずのあしあとがきえてきたみちわからなくても)

明日付けたはずの足跡が消えて、来た道分からなくても、

(かわりつぶしたこえですこしずつみちびいてあげるから)

代わり潰した声で、少しずつ導いてあげるから！

(あのかげはとおくこくどこまでもながくみえていた)

あの景は遠く濃く、どこまでも長く見えていた、

(おいかけてもおいかけてもにげていく)

追いかけても追いかけても、逃げていく。

(まぼろしすらもつかめたはず)

幻でさえ掴めた筈…

(あのかげはとおくこくいつのまにわたしのうしろへ)

あの景は遠く濃く、何時の間に私の後ろへ、

(ふりかえれどふりかえれどかくれる)

振り返れど振り返れど、隠れる。

(こいねがうほどみえなくなってわすれるほどつよくやきついた)

希う程見えなくなって、忘れる程強く焼きついた。