「擬死」

(ねぇ、ちゃんといって。)

ねぇ、ちゃんと言って。

(もう、ぼくはいらないかな？)

もう、僕はいらないかな?

(ねぇ、もっといって。)

ねぇ、もっと言って。

(ぼくはなにをきたいしている？)

僕は何を期待している？

(くるしそうにあまえたこえであなたはぼくになにをもとめる？)

苦しそうに甘えた声で貴方は僕に何を求める？

(くるしいのはあなただけじゃないから)

苦しいのは貴方だけじゃないから

(つくられたせいじゃくがやけにここちよくてまぶたをとじた)

作られた静寂がやけに心地よくて瞼を閉じた

(きえることすらいまはさほどこわくないから)

消えることすら今はさほど怖くないから

(えいじょくではうじょうしゃはいな)

栄辱で這う盛者は否

(えいじょくでなくひっすいもぼうかんしゃだろう？)

栄辱で泣く必衰も傍観者だろう？

(あいされるためにあしたをうりにだしたぼく)

愛される為に明日を売りに出した僕

(きおくのなかにはちりばめられたせかいのうみがしみてゆく)

記憶の中には散りばめられた世界の膿が染みてゆく

(ほらきこえたよ「おわり」がちかづくおと)

ほら聞こえたよ「終わり」が近づく音

(ねぇ、ちゃんといって)

ねぇ、ちゃんといって

(めのまえがもうみえないから)

目の前がもう見えないから

(せまいよくそうにひとりきりひびくおとがぼくにといかける)

せまい浴槽に一人きり　響く音が僕に問いかける

(「もうおわりにしよう」たぶんそれもわるくないから)

「もう終わりにしよう」多分それも悪くないから

(くるしそうにあまえたこえであなたはぼくになにをもとめる？)

苦しそうに甘えた声で貴方は僕に何を求める？

(くるしいのはあなただけじゃないから)

苦しいのは貴方だけじゃないから

(つくられたせいじゃくがやけにここちよくてまぶたをとじた)

作られた静寂がやけに心地よくて瞼を閉じた

(いま、きえることがしぬことよりもこわいから)

今、消えることが死ぬことよりも怖いから

(えいじょくではうじょうしゃはいな)

栄辱で這う盛者は否

(えいじょくでなくひっすいもぼうかんしゃだろう？)

栄辱で泣く必衰も傍観者だろう？

(あいされるためにあしたをうりだしたぼく)

愛される為に明日を売り出した僕

(あいされるためにきのうにつばをはいたぼく)

愛される為に昨日に唾を吐いた僕

(きおくのなかにはとじこめられたせかいのあくい)

記憶の中には閉じ込められた世界の悪意

(きこえたよまだなりやまぬ「おわり」がむすんでとけた)

聞こえたよ　まだ鳴り止まぬ「終わり」が結んで溶けた

(すすむことにおくびょうなぼくはがらくたのうそでうそをぬりつぶす)

進むことに臆病な僕はガラクタの嘘で嘘を塗りつぶす

(せまいよくそうにひとりきり)

せまい浴槽に一人きり

(しんだふりをつづけるぼくは)

死んだふりを続ける僕は…