ヘドニストの幸福な食卓

(たいしてこのせかいにのぞみなどなくてあいして、そんなこえはうらぶたがうちおとした)

大してこの世界に望みなど無くて　愛して、そんな声は裏蓋が打ち落とした

(ふろいで、うすらいでくおもてもうらもそうしてこのおもいはうつろぎ、のぼっていく)

フロイデ、薄らいでく表も裏も　そうしてこの想いは移ろぎ、昇っていく

(あしのうらはてーぶるからはなれてくあらたなせかいへと)

足の裏はテーブルから離れてく　新たな世界へと

(おちたかいらくのはてかいまくよあけたかまるしんぱくきゅうこうか)

堕ちた　快楽の果て　開幕　夜明け　高まる心拍　急降下

(めいめつのめでけいべつをみつめうすらえみうかべたよ)

明滅の眼で軽蔑を見つめ　薄ら笑み浮かべたよ

(こんだくのなか、しょうだくをへてさなぎはかえる)

混濁の中、承諾を経て蛹は孵る

(ぎきょくはいま、さんざめくみたされぬ)

戯曲は今、さんざめく　満たされぬ

(なんで、このせかいでいしきがあるのかかいしたこのこころはふねにのったはずなのに)

なんで、この世界で意識があるのか　解した　この心は舟に乗ったはずなのに

(ふろいと、こころはまだここにありますよはいしたけいかくたちはてからみつめていた)

フロイト、心はまだ此処にありますよ　廃した計画たち　果てから見つめていた

(ひえたあさはみずたまりをさらしてすべてをあばきだす)

冷えた朝は水溜りを晒して　全てを暴き出す

(さめたほうまつなゆめほうらくはいごでりあるがにひりずむをかたる)

醒めた　泡沫な夢　崩落　背後で　リアルがニヒリズムを語る

(せんれつなえとぜんにんはきっとぶべつをこめていうよ)

鮮烈な絵と善人はきっと 侮蔑を込めて言うよ

(もうまいなめともうもくなめにはねをひろげる)

蒙昧な眼と盲目な眼に　羽を広げる

(からすはただ、なきわめき、なきわめくわずらわしいな)

烏はただ、泣き喚き、哭き喚く 煩わしいな

(まんざらでもないひょうじょうでかんそくをつづけていた)

満更でもない表情で観測を続けていた

(やまないちゃいむ、はなたれたとばりとたべきれずにのこしたぱんけーき)

止まないチャイム、放たれた帳と 食べきれずに残したパンケーキ

(くもんにゆがむしょうぞうがかがみをみてるようだった)

苦悶に歪む肖像画 鏡を見てるようだった

(だのに、なのに、どうしてくちのはしはつりあがるのだろう？)

だのに、なのに、どうして 口の端は釣り上がるのだろう？

(せつな、ざわめいた)

刹那、ざわめいた

(のぞまれないせいはがいをくらってたあいされないせいはといをつづけた)

望まれない生は骸を喰らってた 愛されない生は問いを続けた

(つうかくさえも、じゅうりんさえも、せいばつさえも、しゅうあくさえも、いとおしくて)

痛覚さえも、蹂躙さえも、性罰さえも、醜悪さえも、愛おしくて

(かいらくのはてかいらくをえてはじめてわたしはひととなる)

快楽の果て　快楽を得て　初めて私は人となる

(かいらくのはてかいらくをもってみなさまをむかえるよ)

快楽の果て　快楽を以って 皆さまを迎えるよ

(かいらくのはてかいらくの、はて？なぜないてるの？)

快楽の果て　快楽の、はて？何故泣いてるの？

(のぞみはいま、かなえられ、かみしめてみたされたのに)

望みは今、叶えられ、噛み締めて 満たされたのに