心霊写真 -35-
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文
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(それよりも、なにかひとのしせんのようなものをかんじて、ぼくはしゅういをみまわした。)
それよりも、なにか人の視線のようなものを感じて、僕は周囲を見まわした。
(うんちくにきぶんがのってきたところでそっけなくさえぎられ、ぶぜんとしたししょうは、)
薀蓄に気分が乗って来たところでそっけなく遮られ、憮然とした師匠は、
(「ここ、ほんとうはしんごんしゅうのてらだよ。それもぶんぱもぶんぱ。)
「ここ、本当は真言宗の寺だよ。それも分派も分派。
(かくやまかい、じゅうはっぽんやまにもかすってない、なんとかはだ。・・・・・ぺろぺろは」)
各山会、十八本山にもかすってない、なんとか派だ。・・・・・ペロペロ派」
(てきとうなことをいってあくびをした。)
適当なことを言って欠伸をした。
(ぼくは、はっとしてたちどまる。)
僕は、ハッとして立ち止まる。
(みぎてがわにこやまのようなたかくなっているばしょがあり、)
右手側に小山のような高くなっている場所があり、
(そのしゃめんのうえにこちらをうかがっているひとかげがあった。)
その斜面の上にこちらを伺っている人影があった。
(おんなのこ?)
女の子?
(あおいわんぴーすをきた、ちいさなおんなのこがそこにいた。)
青いワンピースを着た、小さな女の子がそこにいた。
(すぐそばのひのきのみきのうしろにかくれて、そしてまたそろそろとかおをだしてくる。)
すぐそばのヒノキの幹の後ろに隠れて、そしてまたそろそろと顔を出してくる。
(「あきちゃんやあい。おくすりのじかんだよう。あきちゃんやあい」)
「アキちゃんやあい。おくすりの時間だよう。アキちゃんやあい」
(ほんどうをはさんでとおくはんたいのほうこうから、そんなよびごえがきこえてきた。)
本堂を挟んで遠く反対の方向から、そんな呼び声が聞こえて来た。
(みょうにまのぬけたちょうしの、ねんぱいのだんせいのこえだった。)
妙に間の抜けた調子の、年配の男性の声だった。
(おんなのこはそのこえにきょうみをしめさず、じっとぼくらをみている。)
女の子はその声に興味を示さず、じっと僕らを見ている。
(いや。みているのはししょうだ。)
いや。見ているのは師匠だ。
(ししょうはしゃめんにとりつくと、きのねをつたってこやまのうえにのぼった。おもわずぼくもつづく。)
師匠は斜面に取り付くと、木の根を伝って小山の上に登った。思わず僕も続く。
(のぼってきたぼくらをけいかいするように、おんなのこはひのきのうしろにかくれた。)
登ってきた僕らを警戒するように、女の子はヒノキの後ろに隠れた。
(そしてまた、ちらりとかおだけをのぞかせる。)
そしてまた、ちらりと顔だけを覗かせる。
(なんさいくらいだろう。しょうがっこうせいなのはまちがいなさそうだ。じゅっさいくらいだろうか。)
何歳くらいだろう。小学校生なのは間違いなさそうだ。十歳くらいだろうか。
など
(いろじろで、てあしなどおれそうなほどほっそりしている。)
色白で、手足など折れそうなほどほっそりしている。
(すとれーとのかみのけをかたぐちできりそろえていて、)
ストレートの髪の毛を肩口で切り揃えていて、
(かしこそうなくろめがちのひとみがいんしょうてきだった。)
賢そうな黒目がちの瞳が印象的だった。
(「またきた」)
「またきた」
(おんなのこはそういった。かわいらしいこえだった。)
女の子はそう言った。可愛らしい声だった。
(ししょうは、わたしのこと?とばかりにおどけてじぶんをゆびさす。)
師匠は、わたしのこと?とばかりにおどけて自分を指さす。
(「またきたね」)
「またきたね」
(おんなのこは、ひそひそとしたこえでまよこをむいてささやいた。)
女の子は、ひそひそとした声で真横を向いて囁いた。
(そうしてうんうんとうなずいている。)
そうしてうんうんと頷いている。
(なんだかへんだった。そのこがむいているばしょには、だれもいない。)
なんだか変だった。その子が向いている場所には、誰もいない。
(「そうだよ。またこたよ。きょうはとってもだいじなようがあるんだ。)
「そうだよ。また来たよ。今日はとっても大事な用があるんだ。
(おにいちゃんはいる?」)
お兄ちゃんはいる?」
(ししょうはねこなでごえでそうたずねながら、ひのきのむこうから)
師匠は猫なで声でそう訪ねながら、ヒノキの向こうから
(こちらにちかづいてくるひとかげにきづいてかおをあげた。)
こちらに近づいてくる人影に気づいて顔を上げた。
(ぼくもそちらをみて、おどろいた。ちょうしんのがっしりしたたいかくのおとこがあるいてくる。)
僕もそちらを見て、驚いた。長身のガッシリした体格の男が歩いて来る。
(くろたになつおだ。)
黒谷夏雄だ。
(わがおがわちょうさじむしょのおがわしょちょうのおいで、かつてはししょうとくんで)
我が小川調査事務所の小川所長の甥で、かつては師匠と組んで
(「おばけ」からみのいらいをうけおっていたというおとこ。)
「オバケ」絡みの依頼を請負っていたという男。
(ぼくやししょうとおなじだいがくのはずだが、ほとんどきゃんぱすにはすがたをみせず、)
僕や師匠と同じ大学のはずだが、ほとんどキャンパスには姿を見せず、
(「m.c.d」というはーどなぱんくばんどをくんでいたとおもうと、)
「M.C.D」というハードなパンクバンドを組んでいたと思うと、
(ふらりとちゅうごくへたびだってそのままなんかげつもかえってこないというような、)
ふらりと中国へ旅立ってそのまま何ヶ月も帰って来ないというような、
(むきどうなおとこだった。)
無軌道な男だった。
(なぜやつがここに。)
なぜやつがここに。
(みがまえるぼくにめもくれず、くろたにはおんなのこのよこでたちどまると、)
身構える僕に目もくれず、黒谷は女の子の横で立ち止まると、
(ししょうにむかって「はやかったな」といった。)
師匠に向かって「早かったな」と言った。
(「ああ。なつおがいてくれてよかったよ。おやじのほうだとはなしがややこしくなる」)
「ああ。夏雄がいてくれて良かったよ。親父の方だと話がややこしくなる」
(しゃしんやのまんしょんをでたあと、でんわをしていたのはこいつだったのか。)
写真屋のマンションを出た後、電話をしていたのはこいつだったのか。
(あきちゃんやあい。)
アキちゃんやあい。
(あきちゃんやあい。)
アキちゃんやあい。
(とおくでまださがしているこえがつづいている。)
遠くでまだ探している声が続いている。
(ぼくはじょうきょうをそれなりにのみこんだ。あれがおやじのほうか。)
僕は状況をそれなりに飲み込んだ。あれが親父の方か。
(つまり、なつおはこのてらのあくとくじゅうしょくのむすこというわけだ。)
つまり、夏雄はこの寺の悪徳住職の息子というわけだ。
(「じゃあ、このこは」)
「じゃあ、この子は」
(おそるおそる、ぼくがそうたずねると、ししょうはうなずいた。)
恐る恐る、僕がそう訊ねると、師匠は頷いた。
(「いまよばれてる、そのあきちゃん。なつおのいもうと」)
「今呼ばれてる、そのアキちゃん。夏雄の妹」
(ひのきのみきのそばでふたりならんでいるのをみくらべ、)
ヒノキの幹のそばで二人並んでいるのを見比べ、
(そのあまりのちがいにぼくはあぜんとする。)
そのあまりの違いに僕は唖然とする。