恋桜

(こころのなかのはなにきづいたひはあまりにもおそすぎた)

心の中の花に気づいた日はあまりにも遅すぎた

(ことしのはるにこのまちをたびだつあなたはむねをはった)

今年の春にこの街を旅立つあなたは胸をはった

(そのひとみにはかぞえきれぬほどみらいがつまっていた)

その瞳には数えきれぬほど未来がつまっていた

(おもいでをひろいあつめるわたしとはちがっていた)

思い出を拾い集める私とは違っていた

(さいごだからとおもいをつたえるのはわたしのためで)

最後だからと想いを伝えるのは私のためで

(あなたのためじゃないから)

あなたのためじゃないから

(なみだとひとひらのはなびらがしずけさとやさしさとおちていく)

涙とひとひらの花びらが静けさと優しさと落ちていく

(わたしのなきがおにきづかぬふりをしてたあなたにきづいていた)

私の泣き顔に気づかぬふりをしてたあなたに気づいていた

(このきもちにのこされたじかんはあまりにもすくなすぎた)

この気持ちに残された時間はあまりにも少なすぎた

(きょねんのはるにきづいていたならなにかかわっていたかな)

去年の春に気づいていたなら何か変わっていたかな

(かがやくせなかをすなおにおせないのはわたしのせいで)

輝く背中を素直に押せないのは私のせいで

(あなたのせいじゃないから)

あなたのせいじゃないから

(えがおひとつぶのこいつぼみがさわぎだしたむねにはなひらく)

笑顔一粒の恋蕾が騒ぎだした胸に花開く

(わたしのきもちにきづかぬようにしてたあなたにきづかぬまま)

私の気持ちに気づかぬようにしてたあなたに気づかぬまま

(できることならあなたのなまえをよんで)

できることならあなたの名前を呼んで

(いまふりむかせて「すき」とさけびたい)

今振り向かせて「好き」と叫びたい

(ちりゆくさくらのはなびらとわたしのこいのはなはよくにていた)

散りゆく桜の花びらと私の恋の花はよく似ていた

(あまりにうつくしいおもいでをまだながめていたいのに)

あまりに美しい思い出をまだ眺めていたいのに

(なみだとひとひらのはなびらがしずけさとやさしさとおちていく)

涙とひとひらの花びらが静けさと優しさと落ちていく

(たびだつあなたのせなかとこのおもいをともにみおくった)

旅立つあなたの背中とこの想いを共に見送った