先生の怖い話「狐狗狸」(1/2)

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投稿者投稿者ななっしーいいね2お気に入り登録
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問題文

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(きんようびのごごよじごろ。まだじゅぎょうじたいははじまっていなかったが、)

金曜日の午後4時ごろ。まだ授業自体は始まっていなかったが、

(ぼくはいつものようにじゅくでひとりじゅんびやないぶてきなしごとをしていた。)

僕はいつものように塾で1人準備や内部的な仕事をしていた。

(しずかなごごだった。しかしそれはふいにいきおいよくひらいたどあによっておわった。)

静かな午後だった。しかしそれは不意に勢いよく開いたドアによって終わった。

(「せんせい!」)

「先生!」

(けっそうをかえたふたりのじょしせいとがはしりよってきた。むっとするけもののにおい・・・)

血相を変えた2人の女子生徒が走り寄ってきた。ムッとする獣の臭い・・・

(「なんやなんや!どうしてん!」)

「なんやなんや!どうしてん!」

(いきおいよくひらかれたどあのおとに、しょうじきぼくはかなりおどろいて、ぼくまでいきがきれていた。)

勢いよく開かれたドアの音に、正直僕はかなり驚いて、僕まで息が切れていた。

(「きいて!」)

「聞いて!」

(ふたりのうちいつもくーるなみほのほうがきょうはよゆうのないかおをしていた。)

2人の内いつもクールな美穂の方が今日は余裕の無い顔をしていた。

(かのじょたちのはなしとは・・・)

彼女達の話とは・・・

(がっこうのひるやすみに、あまりつかわれていないきゅうこうしゃで)

学校の昼休みに、あまり使われていない旧校舎で

(なんにんかでこっくりさんをしたらしい・・・)

何人かでコックリさんをしたらしい・・・

(さいしょはなんのへんてつもなくじゅうえんだまがうごくこともなかった。)

最初はなんの変哲もなく十円玉が動く事もなかった。

(しかしとおまきでそれをみながらさんかしていなかったみほが、)

しかし遠巻きでそれを見ながら参加していなかった美穂が、

(じゅうえんだまにゆびをおくとどうじにきゅうこうしゃにひじょうべるがなりひびいた。)

十円玉に指を置くと同時に旧校舎に非常ベルが鳴り響いた。

(ふいになったひじょうべるにおどろいて、とっさにみなゆびをはなしたが、)

不意に鳴った非常ベルに驚いて、とっさに皆指を離したが、

(ただのぐうぜんということでこっくりさんはさいかいした。)

ただの偶然という事でコックリさんは再開した。

(ただみほはおどろかされたよいんのせいか、さんかはせずに)

ただ美穂は驚かされた余韻のせいか、参加はせずに

(またとおまきにかんらんすることにしていた。じゅうえんだまはうごかない。)

また遠巻きに観覧する事にしていた。十円玉は動かない。

(みながあきてきたころにまたみほがさんかした。)

皆が飽きてきた頃にまた美穂が参加した。

など

(そしてかのじょがゆびをおいたしゅんかん、ふたたびひじょうべるがなった。)

そして彼女が指を置いた瞬間、再び非常ベルが鳴った。

(かのじょはかんぜんにぱにっくにおちいった。かのじょだけでなくそこにいたみながろうばいした。)

彼女は完全にパニックに陥った。彼女だけでなくそこに居た皆が狼狽した。

(そのときいたもうひとりのじゅくせい、しゅりが)

その時いたもう一人の塾生、珠理が

(こっくりさんのかみをやぶいてまどからばらまいた。)

コックリさんの紙を破いて窓からばらまいた。

(そのしゅんかん、そらはくもひとつないほどのかいせいなのに、あめがふった・・・)

その瞬間、空は雲一つない程の快晴なのに、雨が降った・・・

(ほんのごふんほどだが、たしかにあめがふった。きゅうこうしゃとこうていだけをかこむように・・・。)

ほんの5分程だが、確かに雨が降った。旧校舎と校庭だけを囲むように・・・

(そのご、ふあんさをかかえたこどもたちはしょくいんしつへいき、ひじょうべるについてたずねると、)

その後、不安さを抱えた子供達は職員室へ行き、非常ベルについて尋ねると、

(いがいな・・・、そしてききたくないようなかいとうがかえってきた。)

意外な・・・、そして聞きたくないような回答が返って来た。

(ふいににかいもなったひじょうべる、せんせいがたがきばんをしらべたところ、)

不意に二回も鳴った非常ベル、先生方が基盤を調べたところ、

(なったけいせきすらのこっていなかった・・・。つまりなっていない・・・という。)

鳴った形跡すら残っていなかった・・・。つまり鳴っていない・・・という。

(しかしせんせいがたもこうていであそんでいたものたちもぜんいんたしかにおとをきいていた。)

しかし先生方も校庭で遊んでいた者達も全員確かに音を聞いていた。

(「きかいのちょうしがわるいんだろうな・・・)

「機械の調子が悪いんだろうな・・・

(けいせきがないってことはいたずらでもないしな・・・。」)

形跡が無いって事はイタズラでも無いしな・・・。」

(とかるくいってあいそわらいするせんせい。)

と軽く言って愛想笑いする先生。

(しかしかのじょたちはわらえなかった。たいみんぐがよすぎて・・・)

しかし彼女たちは笑えなかった。タイミングが良すぎて・・・

(まるでじぶんたちが、いや、みほがなにかをよんでしまったようで・・・)

まるで自分達が、いや、美穂が何かを呼んでしまったようで・・・

(ほうかごになってもみほのぱにっくはおさまらず、)

放課後になっても美穂のパニックは治まらず、

(じゅくでこわいはなしばかりするぼくにたすけをもとめてじゅくのとびらをたたいた、というわけだ。)

塾で怖い話ばかりする僕に助けを求めて塾の扉を叩いた、という訳だ。

(「なるほどな・・・。」)

「なるほどな・・・。」

(いつもならぼくはもっとあおっておどかすのだが、)

いつもなら僕はもっと煽って脅かすのだが、

(ふたりのひっしなぎょうそうをみるとできなかった。)

2人の必死な形相を見るとできなかった。

(なによりさっきいっしゅんかんじたけもののにおい・・・。なんだあれは・・・?)

何よりさっき一瞬感じた獣の臭い・・・。なんだあれは・・・?

(げんだいかがくではこっくりさんはきょうりょくなじこあんじであることがわかっている。)

現代科学ではコックリさんは強力な自己暗示である事がわかっている。

(じぶんでじぶんをころしてしまうほどに・・・。)

自分で自分を殺してしまう程に・・・。

(だからそれはさいみんじゅつみたいなもので、ただのぐうぜんがかさなっただけで)

だからそれは催眠術みたいなもので、ただの偶然が重なっただけで

(れいてきなものではないからあんしんするむねと、)

霊的なものではないから安心する旨と、

(じこあんじでしぬかのうせいがあるこっくりさんはしてはいけないとつたえ、)

自己暗示で死ぬ可能性があるコックリさんはしてはいけないと伝え、

(それでもふあんならぼくにそれをわたしなさい・・・、とつたえた。)

それでも不安なら僕にそれを渡しなさい・・・、と伝えた。

(ついているにんげんが「おゆずりします」)

憑いている人間が「お譲りします」

(そしてもらいうけるほうが「はい、いただきました」)

そして貰い受ける方が「はい、頂きました」

(このかんたんなぎしきでれいてきなものはうつるという。)

この簡単な儀式で霊的なものは移るという。

(とりあえずぼくはそのことばをかのじょたちにいわせ、もうだいじょうぶだからわすれるむねと、)

とりあえず僕はその言葉を彼女たちに言わせ、もう大丈夫だから忘れる旨と、

(そんなものよりもにしゅうかんごにひかえたきまつてすとのほうがこわいとつたえ、)

そんなモノよりも2週間後に控えた期末テストの方が怖いと伝え、

(かのじょたちにりんじのしゅくだいをもたせてかえらせた。)

彼女達に臨時の宿題を持たせて帰らせた。

(かのじょたちにはいわなかったが、こっくりさんは)

彼女達には言わなかったが、コックリさんは

(じこあんじとしてのきけんせいがたしかにたかい。)

自己暗示としての危険性が確かに高い。

(しかしこらいよりつづくこうれいほうでもある。)

しかし古来より続く降霊法でもある。

(せいしきなてじゅんをふんでおこなうのなら、のぞむものがくるらしいが、)

正式な手順を踏んで行うのなら、望むものが来るらしいが、

(じゅうえんだまをつかうようなかんいかされたものでは、きたとしてもかみのなをかたるような)

十円玉を使うような簡易化されたものでは、来たとしても神の名を語るような

(たちのわるいていきゅうれい、しかもぜったいにかえってくれないらしい・・・。)

質の悪い低級霊、しかも絶対に帰ってくれないらしい・・・。

(そういえばこっくりとはきつね、いぬ、たぬきとかくときいたことがある。)

そういえばコックリとは狐、狗、狸と書くと聞いた事がある。

(むかしからまりょくをもつけもの(ばけるといわれている)のれいをよぶわざなのか・・・?)

昔から魔力を持つ獣(化けると云われている)の霊を呼ぶ業なのか・・・?

(そういえばてんきあめはむかしのいいかたで「きつねのよめいり」という。)

そういえば天気雨は昔の言い方で「狐の嫁入り」と云う。

(かのじょたちがじゅくのとびらをあけたときかんじたけもののにおい・・・、)

彼女達が塾の扉を開けた時感じた獣の臭い・・・、

(かのじょたちにおこったことはほんとうにじこあんじなのか・・・?)

彼女達に起こった事は本当に自己暗示なのか・・・?

(いや、じこあんじならほんにんいがいにぶつりてきなじしょうはおこりえない。)

いや、自己暗示なら本人以外に物理的な事象は起こり得ない。

(ひじょうべる、てんきあめ、ほんとうにぐうぜんだろうか・・・?)

非常ベル、天気雨、本当に偶然だろうか・・・?

(そのよるからしばらく、ぼくのいえのねこがぼくにちかづかなくなった。)

その夜からしばらく、僕の家の猫が僕に近づかなくなった。

(そしてつぎのひおきると、ぼくのみぎてのくすりゆびがまがったままのびなくなった。)

そして次の日起きると、僕の右手の薬指が曲がったまま伸びなくなった。

(びょういんにいくと、つかいすぎがげんいんの「ばねゆび」としんだんされたが、)

病院に行くと、使い過ぎが原因の「バネ指」と診断されたが、

(ゆびをそれほどつかったきおくはなかった。)

指をそれほど使った記憶はなかった。

(びょういんにいったつぎのひ、こんどはひだりてのくすりゆびがはれてまたのびなくなった。)

病院に行った次の日、今度は左手の薬指が腫れてまた伸びなくなった。

(びょういんにいくひまもなかったのでほうっておいたら、こんどはみぎうでがあがらなくなった。)

病院に行く暇もなかったので放っておいたら、今度は右腕が上がらなくなった。

(かのじょたちのはなしをきいてからにしゅうかんご、けつべんがでた。)

彼女達の話を聞いてから2週間後、血便が出た。

(かなりのりょうでめんくらったぼくはすぐにびょういんへいったがげんいんふめいだった。)

かなりの量で面食らった僕はすぐに病院へ行ったが原因不明だった。

(そのとうじ、ぼくはまいにちかなりつかれていた。げんいんふめいのねつがまいにち37どこうはん、)

その当時、僕は毎日かなり疲れていた。原因不明の熱が毎日37℃後半、

(めまいがしたり、まっすぐあるくことがこんなんなほどだった。)

目眩がしたり、真っ直ぐ歩く事が困難な程だった。

(びょういんににゅういんするいきおいだったが、)

病院に入院する勢いだったが、

(ちょうどじゅけんまえなのでじゅくをやすむわけにはいかなかった。)

ちょうど受験前なので塾を休む訳にはいかなかった。

(しごとおわりのどようびのよる、ゆいいつやすめそうなにちようびのまえのひ、)

仕事終わりの土曜日の夜、唯一休めそうな日曜日の前の日、

(ぼくはしんだようにねていた。)

僕は死んだように寝ていた。

(ひさしぶりにねこがぼくのへやにきて、たんすからぼくのむねのうえにとびおりてきた。)

久しぶりに猫が僕の部屋に来て、タンスから僕の胸の上に飛び降りてきた。

(しょうげきといたみでぼくはめをさました。)

衝撃と痛みで僕は目を覚ました。

(むねのうえのねこがぼくをみている。そしてそのままぼくのかおをみてうなった。)

胸の上の猫が僕を見ている。そしてそのまま僕の顔を見て唸った。

(いやよくみると、ぼくのまくらのうえをみている。そのときにぼくはやっときづいた。)

いやよく見ると、僕の枕の上を見ている。その時に僕はやっと気づいた。

(・・・そうか、なんたついてんのか・・・。それならそれでかんがえがある・・・。)

・・・そうか、なんか憑いてんのか・・・。それならそれで考えがある・・・。

(いちにちじゅうねるよていだったあしたのやすみにすることがきまった。)

一日中寝る予定だった明日の休みにする事が決まった。

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