先生の怖い話「廃屋」(1/11)

背景
投稿者投稿者ななっしーいいね1お気に入り登録
プレイ回数2477難易度(5.0) 6264打 長文

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(あれは17さいのなつ、きんじょでむかしからゆうめいだったゆうれいやしきのうわさ、)

あれは17歳の夏、近所で昔から有名だった幽霊屋敷の噂、

(そのばしょがせいかくにわかったひのことだった。そのひはなつやすみのすこしまえで、)

その場所が正確にわかった日のことだった。その日は夏休みの少し前で、

(がっこうがえりになかのよかったゆうじんしもだといっしょにそこをおとずれることにした。)

学校帰りに仲の良かった友人下田と一緒にそこを訪れることにした。

(そのやかたはやはりながいあいだつかわれていなかったようで、)

その館はやはり長い間使われていなかったようで、

(そとのみちからみえたそのしきちないにはざっそうやかんぼくがはんもし、そともんにむかって)

外の道から見えたその敷地内には雑草や灌木が繁茂し、外門に向かって

(みぎがわのていえんのたけやぶがそらのはんぶんをおおいかくしていて、)

右側の庭園の竹藪が空の半分を覆い隠していて、

(ひるまでもうすぐらくそともんのまえのじてんでもうすでにうすきみわるいふんいきがただよっていた。)

昼間でも薄暗く外門の前の時点でもう既に薄気味悪い雰囲気が漂っていた。

(そのやかたはかなりおおきなものだった。ていえんもいれたしきちだけをみるならば、)

その館はかなり大きなものだった。庭園も入れた敷地だけを見るならば、

(いっぱんてきなしょうがっこうのぐらうんどほどはゆうにあっただろう。)

一般的な小学校のグラウンド程はゆうにあっただろう。

(そのそともんのまえには、ふるくぶひんだけになってしまった)

その外門の前には、古く部品だけになってしまった

(げんどうきつきじてんしゃのざんがいがわすれさられたようにちらかっていた。)

原動機付自転車の残骸が忘れ去られたように散らかっていた。

(ながいあいだほうっておかれたとはいえ、あかくさびまがったこうしじょうのそともんには)

長い間放っておかれたとはいえ、赤く錆び曲がった格子状の外門には

(かぎがかかっており、かんたんにはあけられそうもない。)

鍵がかかっており、簡単には開けられそうもない。

(しかしそのそともんのせはそれほどたかくはなく、)

しかしその外門の背はそれほど高くはなく、

(それをのりこえてのしきちないへのしんにゅうはぼくらにとってむずかしいことではなかった。)

それを乗り越えての敷地内への侵入は僕らにとって難しい事ではなかった。

(そのそともんからげんかんまではだいたい10めーとるほどで)

その外門から玄関までは大体10メートル程で

(いしづくりのかいだんをのぼるかたちになっていた。)

石造りの階段を上る形になっていた。

(みぎにゆるやかにかーぶをえがくそのかいだんには、おれたたけやおちばがつもっていて)

右に緩やかにカーブを描くその階段には、折れた竹や落ち葉が積もっていて

(すすむことはよういではなかった。それらにあしをとられながらあゆみをすすめ、)

進むことは容易ではなかった。それらに足を取られながら歩みを進め、

(やっとげんかんのまえにつくときみょうなものがあることにきがついた。)

やっと玄関の前に着くと奇妙なものがある事に気が付いた。

など

(そのきでつくられたげんかんのとびらはかなりおおきなもので)

その木で作られた玄関の扉はかなり大きなもので

(たて2めーとるほど、よこ2.5めーとるほどのちょうほうけいのかたちで、)

縦2メートル程、横2.5メートル程の長方形の形で、

(りょうびらきのよくあるかたちのとびらだった。)

両開きのよくある形の扉だった。

(きみょうなものとは・・・、そのとびらはそのたいかくせんをむすぶように、)

奇妙な物とは・・・、その扉はその対角線を結ぶように、

(ひとつがひとのこぶしほどもあるおおきさのくさりでばつじるしにふういんがされていた。)

一つが人の拳ほどもある大きさの鎖で×印に封印がされていた。

(わかいぼくらはあまりかんがえもせずに、)

若い僕らはあまり考えもせずに、

(「ああ、おれらみたいなしんにゅうしゃがほかにもいんねんな・・・。)

「ああ、俺らみたいな侵入者が他にもいんねんな・・・。

(そのしんにゅうしゃよけにでっかいくさりであかへんようにしてんねんな・・・。」)

その侵入者除けにでっかい鎖で開かへんようにしてんねんな・・・。」

(というようなことをいいあって、それいじょうはかんがえることをしなかった。)

というような事を言い合って、それ以上は考えることをしなかった。

(ひび、ぶっしつてきなげんじつのなかにいきているぼくらには、そのくさりのいみとして、)

日々、物質的な現実の中に生きている僕らには、その鎖の意味として、

(「なかにいるものをださないために・・・」というかんがえは)

「中にいるものを出さないために・・・」という考えは

(まったくおもいうかばなかったのだ。)

全く思い浮かばなかったのだ。

(とりあえずげんかんからははいることはできなかったので、)

とりあえず玄関からは入ることはできなかったので、

(いえのがいへきにそってにしがわのていえんにむかってあるくことにした。)

家の外壁に沿って西側の庭園に向かって歩く事にした。

(そのいえのがいかんは、きほんてきにはじだいげきのだいかんやしきとひょうげんすることがぴったりな)

その家の外観は、基本的には時代劇の代官屋敷と表現することがぴったりな

(わふうやしきであったが、ひがしがわのいちぶがかいちくされてようふうにかいだてとなっている。)

和風屋敷であったが、東側の一部が改築されて洋風二階建てとなっている。

(いまはにしがわのだいかんやしきのほうにむかってあるいていたわけだが、)

今は西側の代官屋敷の方に向かって歩いていたわけだが、

(なかをかくにんしたいとおもっても、すべてのまどにふるいきづくりのあまどがしめられていて)

中を確認したいと思っても、全ての窓に古い木造りの雨戸が閉められていて

(かくにんできなかった。そのあまどははずそうとしてもはずれない。)

確認できなかった。その雨戸は外そうとしても外れない。

(ふしんにおもい、よくよくみるとそのいっかくすべてのあまどのうえがわとしたがわに)

不審に思い、よくよく見るとその一角全ての雨戸の上側と下側に

(ふるくあかさびたくぎがうちつけられていた。そのときはぼくらにきょうふはなく、)

古く赤錆びた釘が打ちつけられていた。その時は僕らに恐怖はなく、

(「たいそうなようじんぶかさやな・・・」とはなでわらってさきにすすんだ。)

「たいそうな用心深さやな・・・」と鼻で笑って先に進んだ。

(ふるくひびわれたきづくりのあまどにかこまれたやかたのそくめんをひだりがわに、)

古くひび割れた木造りの雨戸に囲まれた館の側面を左側に、

(そのみぎがわにひろがるふうけいはきぎがうっそうとしげり、ひるまでもなおうすぐらいていえんだった。)

その右側に広がる風景は木々が鬱蒼と茂り、昼間でもなお薄暗い庭園だった。

(そのみつりんをおもわせるていえんはかなりひろめにつくられており、)

その密林を思わせる庭園はかなり広めに造られており、

(いまはかれはてていてかれはやえだによってうめつくされていたが、)

今は枯れ果てていて枯葉や枝によって埋め尽くされていたが、

(かわがながれていたあとがあった。そのかわはじゅうらいのにほんていえんにはみられないような)

川が流れていた跡があった。その川は従来の日本庭園には見られないような

(おおきなつくりであり、はばは3めーとるほどもあっただろう。)

大きな造りであり、幅は3メートル程もあっただろう。

(ぼくらは、かこはみごとであったであろうそのかわのあとをみにいくことにした。)

僕らは、過去は見事であったであろうその川の跡を見に行くことにした。

(そのちゅうふくにいしばしがいまもなおけんざいではあったが、)

その中腹に石橋が今もなお健在ではあったが、

(ふりつもったかれはや、うすちゃいろのおれたたけなどでわたりにくいものだった。)

降り積もった枯葉や、薄茶色の折れた竹などで渡り難いものだった。

(そのおくにちいさなたてものがみえた。よこ10めーとる、たて3めーとるくらいの)

その奥に小さな建物が見えた。横10メートル、縦3メートルくらいの

(ちょうほうけいでなんのかざりけもなく、がっこうのうんどうじょうのかたすみにある)

長方形で何の飾り気もなく、学校の運動場の片隅にある

(たいいくそうことひょうげんするのがまさにてきかくであろうそのたてものは、)

体育倉庫と表現するのがまさに的確であろうその建物は、

(わふうのこのていえんにはまったくにつかわしくないものだった。)

和風のこの庭園には全く似つかわしくないものだった。

(ぼくらがそのたてものにちかづいてみてみると、そのそうこにはあーちがたでりょうびらきの)

僕らがその建物に近づいて見てみると、その倉庫にはアーチ型で両開きの

(あおちゃいろいてつのとびらがちゅうおうにあり、そのたてもののそくめんには)

青茶色い鉄の扉が中央にあり、その建物の側面には

(しかくくひらかれたまどがとりつけてあった。がんじょうなてつのとびらはびくともせず、)

四角く開かれた窓が取り付けてあった。頑丈な鉄の扉はびくともせず、

(しかたがないのでぼくらはそくめんにあるまどからなかをみようとした。)

仕方がないので僕らは側面にある窓から中を見ようとした。

(なかはまっくらでほとんどなにもみえない。そのまどにはがらすはなく、)

中は真っ暗でほとんど何も見えない。その窓にはガラスは無く、

(かわりにろうごくにつかわれるようないかにもがんじょうそうなてつごうしがはめこんであった。)

代わりに牢獄に使われるようないかにも頑丈そうな鉄格子がはめ込んであった。

(ねこのようなしょうどうぶつならそのてつごうしのあいだからでもするりとはいれただろうが、)

猫のような小動物ならその鉄格子の間からでもするりと入れただろうが、

(にんげんならこどもでもすりぬけることはふかのうだろう。)

人間なら子供でもすり抜けることは不可能だろう。

(かぜがふきぬけるような、ちいさなはむしもはいりほうだいのそのたてものが)

風が吹き抜けるような、小さな羽虫も入り放題のその建物が

(いったいなににつかわれたのかは、とぼしいぼくらのそうぞうりょくではまったくおもいつかなかった。)

一体何に使われたのかは、乏しい僕らの想像力では全く思いつかなかった。

(あのてつごうしのまどをみてたんじゅんにろうごくかともおもったが、)

あの鉄格子の窓を見て単純に牢獄かとも思ったが、

(あまりにひげんじつてきすぎるとおもい、くちにはださなかった。)

あまりに非現実的すぎると思い、口には出さなかった。

(ぼくらはそれいじょうそのふきさらしのそうこのたんさくはあきらめて、)

僕らはそれ以上その吹きさらしの倉庫の探索はあきらめて、

(さいど、やかたのがいしゅうにそってあるきはじめた。)

再度、館の外周に沿って歩き始めた。

(きのあまどぞいにやかたのがいしゅうをひだりにまがり、そのうらてにいちするところに)

木の雨戸沿いに館の外周を左に曲がり、その裏手に位置する所に

(くずれかけのちいさなやねにまもられたあれたふるいどがあった。これをみたときぼくらは)

崩れかけの小さな屋根に守られた荒れた古井戸があった。これを見た時僕らは

(「なるほど、ありがちやな~。これもあってのゆうれいやしきか・・・。」)

「なるほど、ありがちやな~。これもあっての幽霊屋敷か・・・。」

(といってわらったことをおぼえている。ふるいどにはまだみずがわいているらしく、)

と言って笑ったことを覚えている。古井戸にはまだ水が湧いているらしく、

(いしをおとしてみるとみずのはねるおとがかえってきた。)

石を落としてみると水の跳ねる音が返ってきた。

(ぼくにとってはそのふるいどよりも、それをまもっている)

僕にとってはその古井戸よりも、それを守っている

(ふるくくちはてたきづくりでしみだらけのやねのほうがぶきみにかんじた。)

古く朽ち果てた木造りで染みだらけの屋根の方が不気味に感じた。

(またそのふるいどのてまえにはやかたのなかにつづくきのろうかがあった。)

またその古井戸の手前には館の中に続く木の廊下があった。

(やかたのそととなかをわけるきょうかいにはとびらのたぐいはみあたらず、)

館の外と中を分ける境界には扉の類は見当たらず、

(もともとそのようにせっけいされたろうかであるらしかった。)

もともとそのように設計された廊下であるらしかった。

(そのろうかはたった2めーとるほどでつきあたり、)

その廊下はたった2メートルほどで突き当り、

(そのつきあたりのかべにむかってひだりがわに、とびらもなにもないきどこのへやにつづくいりぐちが、)

その突き当りの壁に向かって左側に、扉も何も無い木床の部屋に続く入口が、

(みぎがわにはやかたのほんかんないにつづくきでできたうすいひきどがあった。)

右側には館の本館内に続く木でできた薄い引戸があった。

(みぎがわのひきどにはまたくぎがなんぼんもうちつけてあり、)

右側の引戸にはまた釘が何本も打ち付けてあり、

(がたがたとゆらしてはみたものの、いちおうなかからもかぎがかかっていたようで、)

ガタガタと揺らしてはみたものの、一応中からも鍵がかかっていたようで、

(ひらくけはいはなかった。むかってひだりがわのへやは、)

開く気配はなかった。向かって左側の部屋は、

(やかたのほんかんからどくりつしたひとへやだけで、ひどくあれていた。)

館の本館から独立した一部屋だけで、ひどく荒れていた。

(すぷれーのらくがきがあり、くさったゆかはところどころかんぼつしていた。)

スプレーの落書きがあり、腐った床はところどころ陥没していた。

(またそのゆかにはだんぼーるやしんぶんし、ようとふめいのぬののきれはしなどがさんらんしていて、)

またその床には段ボールや新聞紙、用途不明の布の切れ端などが散乱していて、

(そのまわりにしげるたけやそのほかのきぎによってなつのごごだというのにうすぐらかった。)

その周りに茂る竹やその他の木々によって夏の午後だというのに薄暗かった。

(いすひとつみあたらないそのへやだったが、うすぐらいへやのおくに)

椅子一つ見当たらないその部屋だったが、薄暗い部屋の奥に

(ちいさなたんすのようなものがあった。たかさ1めーとるほどで、)

小さなタンスのようなものがあった。高さ1メートルほどで、

(はばはその1.5ばいほどのきづくりのそのちょくほうたいにはひきだしなどはなく、)

幅はその1.5倍ほどの木造りのその直方体には引き出しなどはなく、

(したがわにはそれをささえる4ほんのあしがあった。そのうえにはたて30せんち、)

下側にはそれを支える4本の脚があった。その上には縦30センチ、

(よこ20せんちほどのがらすけーすにはいった、)

横20センチほどのガラスケースに入った、

(かいだんばなしでおなじみのいちまつにんぎょうがぽつんとひとつだけかざられていた。)

怪談話でお馴染みの市松人形がぽつんと一つだけ飾られていた。

(ぼくらはうすぐらくあれはてたへやでそれにであったわけだが、ふしぎときょうふはなく、)

僕らは薄暗く荒れ果てた部屋でそれに出会ったわけだが、不思議と恐怖はなく、

(ぎゃくにこれだけあれたへやでよくぶじにのこっていたものだとかんしんした。)

逆にこれだけ荒れた部屋でよく無事に残っていたものだと感心した。

(しかしそのやかたのうわさとはにんぎょうやしき、ふるいどやちいさないちまつにんぎょうなどではなく、)

しかしその館の噂とは人形屋敷、古井戸や小さな市松人形などではなく、

(とうしんだいのにほんにんぎょうがあるといううわさであり、またそれをみつけることこそが)

等身大の日本人形があるという噂であり、またそれを見つけることこそが

(ぼくらのもくてきだったので、そのばしょをあとにしてぼくらはまたさきにすすみはじめた。)

僕らの目的だったので、その場所を後にして僕らはまた先に進み始めた。

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告

◆コメントを投稿

※誹謗中傷、公序良俗に反するコメント、個人情報の投稿、歌詞の投稿、出会い目的の投稿、無関係な宣伝行為は禁止です。削除対象となります。

※このゲームにコメントするにはログインが必要です。

※コメントは日本語で投稿してください。