先生の怖い話「廃屋」(6/11)

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投稿者投稿者ななっしーいいね1お気に入り登録
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(かれのゆびさすほうこうには、はいってきたほうこうとむかいがわにいちするひろいかべがある。)

彼の指さす方向には、入ってきた方向と向かい側に位置する広い壁がある。

(そのときはろうそくのあかりはそこまでとどかずに、はっきりとみえなかったかべだ。かんぜんに)

その時は蝋燭の灯りはそこまで届かずに、はっきりと見えなかった壁だ。完全に

(ふいをつかれたぼくは、かたまったままゆっくりとそのほうこうをむき、そのときにやっと)

不意を突かれた僕は、固まったままゆっくりとその方向を向き、その時にやっと

(そのかべをはっきりみることができた。そのかべにはえんがわへとつづくおおきながらすどが)

その壁をはっきり見る事ができた。その壁には縁側へと続く大きなガラス戸が

(いちめんにあり、いまはそとのあまどによってそのやくわりははたしていなかった。)

一面にあり、今は外の雨戸によってその役割は果たしていなかった。

(そのがらすどとてんじょうのあいだのかべ、そこに50せんちしほうほどもあるおおきな)

そのガラス戸と天井の間の壁、そこに50センチ四方ほどもある大きな

(しろくろのかおがうつったしゃしんがずっとむこうのやみのおくまでたてかけられていた。)

白黒の顔が写った写真がずっとむこうの闇の奥まで立て掛けられていた。

(そしてひかりのかげんなのかもしれないが、それらのきょだいなかおはあきらかにそのすべてが)

そして光の加減なのかもしれないが、それらの巨大な顔は明らかにその全てが

(ぼくらをぎょうししているようにみえるのだ。いまでもおぼえている・・・そのしゃしんは)

僕らを凝視しているように見えるのだ。今でも覚えている・・・その写真は

(しょうめんからとられているはずなのに、すべてがななめに、つまりぼくらのほうをむくように)

正面から撮られているはずなのに、全てが斜めに、つまり僕らの方を向くように

(とられていた。ぼくがおぼえているいちばんてまえにたてかけられていたきょだいなかおは、)

撮られていた。僕が覚えている一番手前に立て掛けられていた巨大な顔は、

(いかりのひょうじょうなどではなく、むしろあせがうかんでいるようなひっしなぎょうそうでこちらを)

怒りの表情などではなく、むしろ汗が浮かんでいるような必死な形相でこちらを

(みつめていた。ぶつだんにたいしてのきょうふはなかったが、こちらのかべはじゅうぶんすぎるほどの)

見つめていた。仏壇に対しての恐怖は無かったが、こちらの壁は十分すぎる程の

(きょうふだった。きゅうげきなおんどへんかや、たんすにのこるいようなし、ふしぜんなほど)

恐怖だった。急激な温度変化や、タンスに残る異様な詩、不自然な程

(あれていないそのへや、かべからこちらをにらみつけるきょだいなかおたち、それらすべてが)

荒れていないその部屋、壁からこちらを睨みつける巨大な顔達、それら全てが

(じんちをこえたなにかがそのへやにいるというあっとうてきなけはいすらかんじさせた。)

人知を超えた何かがその部屋にいるという圧倒的な気配すら感じさせた。

(さすがにぼくらはそのへやにはそれいじょういることができなかった。だからその)

さすがに僕らはその部屋にはそれ以上居る事ができなかった。だからその

(ひろいへやのあかりがとどかなかったおくのほうまではめにしていない。そのときはとにかく)

広い部屋の灯りが届かなかった奥の方までは目にしていない。その時はとにかく

(そとにでたかった。ぼくらはあの「おこと」のへやのそとにつづくでいりぐちにいそいだ。)

外に出たかった。僕らはあの『お琴』の部屋の外に続く出入口に急いだ。

(いそいでいるさいちゅうに、ろうそくだけはしたにおとさないように・・・、ときをつけたのは)

急いでいる最中に、蝋燭だけは下に落とさないように・・・、と気を付けたのは

など

(おぼえている。もうくらくなりはじめたていえんをぬけ、やかたのそとのさびたそともんのまえまで)

覚えている。もう暗くなり始めた庭園を抜け、館の外の錆びた外門の前まで

(たどりつくことにせいこうした。やかたからでてしまうとそのきょうふはうすれ、ついせんこくのことを)

たどり着く事に成功した。館から出てしまうとその恐怖は薄れ、つい先刻の事を

(まるでたにんごとのようにかたりあい、そのひはなにごともなかったかのようにいえじに)

まるで他人事のように語り合い、その日は何事もなかったかのように家路に

(ついた。つぎのひ、がっこうでしもだとあのやかたのことではなしをした。あのいえにはなにかある。)

ついた。次の日、学校で下田とあの館の事で話をした。あの家には何かある。

(せいらいのみちへのこうきしんと、やっとであえたあのぼうけんのばはぼくらをみりょうしつづけた。)

生来の未知への好奇心と、やっと出会えたあの冒険の場は僕らを魅了し続けた。

(そしてそのご、しょうこりもなくなんどもぼくらはあのやかたをおとずれた。にどめ、さんどめと、)

そしてその後、性懲りもなく何度も僕らはあの館を訪れた。二度目、三度目と、

(くりかえしてそのやかたをおとずれるうちにしだいにきょうふもうすれてゆき、ふたりがべつべつにここで)

繰り返してその館を訪れる内に次第に恐怖も薄れてゆき、二人が別々に個々で

(こうどうできるようにすらなっていた。ただここにこうどうできるといっても、かんぜんに)

行動できるようにすらなっていた。ただ個々に行動できると言っても、完全に

(はなれてしまうわけではなく、おたがいがめでかくにんできて、おおきくないこえがとどく)

離れてしまうわけではなく、お互いが目で確認出来て、大きくない声が届く

(はんいでのはなしだが。ぼくがあのやかたのことをことこまかにおぼえているのも、そのおかげに)

範囲での話だが。僕があの館の事を事細かに覚えているのも、そのおかげに

(ほかならない。しかしあのぶつだんのへやだけははいらなかった。いや、はいれなかった。)

他ならない。しかしあの仏壇の部屋だけは入らなかった。いや、入れなかった。

(それほどはじめてはいったときのきょうふはおおきかった。おたがいにいつかたんさくしようと)

それほど初めて入った時の恐怖は大きかった。お互いにいつか探索しようと

(いいながらいつもさきのばしにして、けっきょくさいごまでまともにはいることはなかった。)

言いながらいつも先延ばしにして、結局最後までまともに入る事は無かった。

(がっこうはなつやすみにはいり、いそがしいとあたまでおもうだけのたいくつなにちじょうがつづいていた。)

学校は夏休みに入り、忙しいと頭で思うだけの退屈な日常が続いていた。

(そのひはなつやすみさいごのにちようびだった。そのひ、そらはくもっていた。せけんではたいぼうの)

その日は夏休み最後の日曜日だった。その日、空は曇っていた。世間では待望の

(きゅうじつだったのだが、まいにちがきゅうじつのぼくらにとってそれはあまりいみがなかった。)

休日だったのだが、毎日が休日の僕らにとってそれはあまり意味がなかった。

(そしてそのひが、ぼくがあのやかたをいとてきにおとずれたさいごのひとなった・・・。)

そしてその日が、僕があの館を意図的に訪れた最後の日となった・・・。

(そのひ、ぼくらはいつものようにげんかんのとなりのおうせつまからやかたのなかにはいった。)

その日、僕らはいつものように玄関の隣の応接間から館の中に入った。

(そのひはきょうみしんしんでやかたについてたずねてくるがっこうのゆうじんたちにいろいろみせるために、)

その日は興味津々で館について尋ねてくる学校の友人達に色々見せる為に、

(ふらっしゅつきのかめらをもってきていた。とりあえずすべてのへやをかめらに)

フラッシュ付のカメラを持ってきていた。とりあえず全ての部屋をカメラに

(おさめたかった。もうなれてしまったくらやみのなか、じさんしたかいちゅうでんとうをつけ、)

収めたかった。もう慣れてしまった暗闇の中、持参した懐中電灯をつけ、

(とりあえずさいしょのおうせつまをとった。そしてきかいなかいだんや、ほうちょうのささったゆか、)

とりあえず最初の応接間を撮った。そして奇怪な階段や、包丁の刺さった床、

(おことなどをとり、さいごにあのぶつだんのへやをとろうとそちらにむかっている)

お琴などを撮り、最後にあの仏壇の部屋を撮ろうとそちらに向かっている

(ところだった。もうなれたはずのこのいえなのだが、ぶつだんのへやにむかうとちゅうに、)

所だった。もう慣れたはずのこの家なのだが、仏壇の部屋に向かう途中に、

(ぼくはなにかにあしをとられ、まえにつんのめってろうかにてをついてしまった。)

僕は何かに足を取られ、前につんのめって廊下に手をついてしまった。

(ただでさえあついのに、そのせいでひやあせがでてぽたぽたとあごからながれおち、)

ただでさえ暑いのに、そのせいで冷や汗が出てポタポタと顎から流れ落ち、

(むいしきにそれをてでぬぐってしまったらしい。「かおがまっくろやぞ。」しもだがわらって)

無意識にそれを手で拭ってしまったらしい。「顔が真っ黒やぞ。」下田が笑って

(ぼくにそういった。ぼくらはおとこどうしだったので、じょうびひんのなかにかがみはなかったので)

僕にそう言った。僕らは男同士だったので、常備品の中に鏡は無かったので

(やかたのなかでかがみをさがすことにした。げんかんやおうせつま、そのとき、ぼくらがいたばしょにちかい)

館の中で鏡を探す事にした。玄関や応接間、その時、僕らがいた場所に近い

(へやからさがしはじめたが、そのあたりにはてかがみさえみつからなかった。とりあえず)

部屋から探し始めたが、その辺りには手鏡さえ見つからなかった。とりあえず

(ふろばかといれにいけばあるかとおもい、しもだをさそいそちらにむかうことにした。)

風呂場かトイレに行けばあるかと思い、下田を誘いそちらに向かう事にした。

(ふろばのだついじょにはいりなかをみまわすと、すみのほうにうすよごれたしろいせんめんだいがみえた。)

風呂場の脱衣所に入り中を見回すと、隅の方に薄汚れた白い洗面台が見えた。

(とうぜんせんめんだいのしょうめんにかがみがあるとかんがえたのだが、そこにかがみはなく、かわりにかべに)

当然洗面台の正面に鏡があると考えたのだが、そこに鏡は無く、代わりに壁に

(ちゃいろくなったちょうほうけいのあとがあった。おそらくかこ、かがみはながいあいだそこにあったの)

茶色くなった長方形の跡があった。恐らく過去、鏡は長い間そこにあったの

(だろうが、なにかのりゆうでとりはずされたのだろう。そのばしょでかがみをみつけることを)

だろうが、何かの理由で取り外されたのだろう。その場所で鏡を見つける事を

(あきらめて、こんどはふろばにはいってみた。そのふろはいっぱんかていのふろとくらべて)

あきらめて、今度は風呂場に入ってみた。その風呂は一般家庭の風呂と比べて

(かなりひろく、さながらりょかんのよくじょうやせんとうをちいさくしたようなかんじだったので、)

かなり広く、さながら旅館の浴場や銭湯を小さくしたような感じだったので、

(あらいばにかがみがあるかとおもったのだ。しかしそこのじゃぐちのうえにもかがみはなかった。)

洗い場に鏡があるかと思ったのだ。しかしそこの蛇口の上にも鏡は無かった。

(かわりにたいるでできたよくそうのなかに、くろいみずたまりができているのをはっけんした。)

代わりにタイルでできた浴槽の中に、黒い水溜りができているのを発見した。

(・・・さいきんあめでもふったかな・・・、とおもったのだが、あめがふるたびにそこに)

・・・最近雨でも降ったかな・・・、と思ったのだが、雨が降るたびにそこに

(みずたまりができていたようなけいせきはなかった。たしかにまいかいこのやかたをおとずれるたびに、)

水溜りができていたような形跡は無かった。確かに毎回この館を訪れるたびに、

(それをかくにんしていたわけではなかったが、それでも、いぜんにそこにみずが)

それを確認していたわけではなかったが、それでも、以前にそこに水が

(たまっていたり、じめじめしたこんせきをみつけたことはなかった。このやかたのなかで)

溜まっていたり、ジメジメした痕跡を見つけた事はなかった。この館の中で

(みずをみたのはこれがさいしょでさいごだった。けっきょく、ふろばでかがみをみつけることが)

水を見たのはこれが最初で最後だった。結局、風呂場で鏡を見つける事が

(できなかったぼくらは、つぎにといれにむかってみることにした。やかたのといれには)

できなかった僕らは、次にトイレに向かってみる事にした。館のトイレには

(だんせいようのしょうべんきがふたつとへやにくぎられたわしきのべんきがひとつ、うすよごれたみずいろの)

男性用の小便器が二つと部屋に区切られた和式の便器が一つ、薄汚れた水色の

(たいるばりのゆかで、いまだちゃいろのごむのすりっぱがなんそくかおかれたままに)

タイル張りの床で、いまだ茶色のゴムのスリッパが何足か置かれたままに

(なっていた。そこのてあらいだいのうえにもかがみはない。しかしちゅういしてみると、またも)

なっていた。そこの手洗台の上にも鏡は無い。しかし注意して見ると、またも

(そこにかがみがあったこんせきがみうけられた。それまできにもとめたことがなかった)

そこに鏡があった痕跡が見受けられた。それまで気にも留めた事が無かった

(かがみのそんざいであるが、かこにそれがあったこんせきはところどころにみうけられたのだが、)

鏡の存在であるが、過去にそれがあった痕跡は所々に見受けられたのだが、

(きみょうなことに、さまざまなかぐやそうしょくひんがのこるこのひろいやかたのなかに、けっきょくひとつもかがみの)

奇妙な事に、様々な家具や装飾品が残るこの広い館の中に、結局一つも鏡の

(そんざいをかくにんできなかった。ときのけいかとともにしょうじる「なれ」というかんかくによって)

存在を確認できなかった。時の経過とともに生じる『慣れ』という感覚によって

(わすれていたいわかんとともに、そのやかたでかおをぬぐうことをあきらめ、けっきょくそのかおのまま、)

忘れていた違和感と共に、その館で顔を拭う事をあきらめ、結局その顔のまま、

(あのぶつだんのへやにむかうことにした。そのとき、はじめてはいったときにきいたとおい)

あの仏壇の部屋に向かう事にした。その時、初めて入った時に聞いた遠い

(ふえのおとのようなおとがきこえた。きぎのゆれるふあんなさーっというおととともに、)

笛の音のような音が聞こえた。木々の揺れる不安なサーッという音と共に、

(かすかにふかいなにおいがただよってきた。しもだはそんなものかんじないといったので、)

微かに不快な臭いが漂ってきた。下田はそんなもの感じないと言ったので、

(ただのきのせいか、とおもった。そのときはしもだがかめらをもっていて、ちょうど)

ただの気のせいか、と思った。その時は下田がカメラを持っていて、ちょうど

(そのへやのまえのろうかのはめこみがたのたなにあるにんぎょうをとろうとしているところだった。)

その部屋の前の廊下のはめ込み型の棚にある人形を撮ろうとしている所だった。

(そしてしゃったーをおし、かいちゅうでんとうよりすうだんつよいひかりがあたりをいっしゅんてらしだした。)

そしてシャッターを押し、懐中電灯より数段強い光が辺りを一瞬照らし出した。

(いちてきにぼくはしもだのこうほうにいて、しもだはぼくにひだりはんしんをみせながらたなのにんぎょうを)

位置的に僕は下田の後方にいて、下田は僕に左半身を見せながら棚の人形を

(とっていたのだが、ぼくからみてしもだのこうほうにあのまっくらなぶつだんのへやがあった。)

撮っていたのだが、僕から見て下田の後方にあの真っ暗な仏壇の部屋があった。

(ふらっしゅのひかりにいっしゅんてらされ、ぼくはそのぶつだんのへやのおくのほうまでみることが)

フラッシュの光に一瞬照らされ、僕はその仏壇の部屋の奥の方まで見る事が

(できた。そのおくのかべにはえんがわにつづくおおきながらすどがあり、そのおもてがわにはきの)

できた。その奥の壁には縁側に続く大きなガラス戸があり、その表側には木の

(あまどがうちつけられている。ふらっしゅのひかりはそのがらすにあたってはんしゃした。)

雨戸が打ち付けられている。フラッシュの光はそのガラスに当たって反射した。

(そのいっしゅんのち、ふたたびやみがそのへやをおおいかくした。そのときはしもだがしゃしんを)

その一瞬後、再び闇がその部屋を覆い隠した。その時は下田が写真を

(とっていたので、ぼくはかいちゅうでんとうをふたつもっていたが、そのえんけいのひかりはあしもとに)

撮っていたので、僕は懐中電灯を二つ持っていたが、その円形の光は足元に

(むけられていた。いちだんとはのすれるおとがおおきくなったようなきがした。そのとき、)

向けられていた。一段と葉の擦れる音が大きくなったような気がした。その時、

(ぼくはあるいわかんをおぼえた。しもだのむこうがわ、がらすにかいちゅうでんとうのひかりがちらちらと)

僕はある違和感を覚えた。下田の向こう側、ガラスに懐中電灯の光がチラチラと

(よわよわしくはんしゃしているのがみえたのだが、いわかんとは、そのひかりをはんしゃしている)

弱々しく反射しているのが見えたのだが、違和感とは、その光を反射している

(へやのおくのがらすどと、ぼくらのいたろうかとのあいだのくうかん。りったいてきなやみ、とでも)

部屋の奥のガラス戸と、僕らのいた廊下との間の空間。立体的な闇、とでも

(ひょうげんできるだろうか?やみはやみなのだがそのやみのいちぶぶん、ほそながいつりがねがたでひとほどの)

表現できるだろうか?闇は闇なのだがその闇の一部分、細長い釣鐘型で人ほどの

(おおきさのいちぶぶんが、ほかのくうかんをしめるやみよりもなおくろくみえた。せんこくの)

大きさの一部分が、他の空間を占める闇よりもなお黒く見えた。先刻の

(ふらっしゅでそのくうかんにはなにもなかったのはかくじつだったのだが、むこうがわのかべと)

フラッシュでその空間には何も無かったのは確実だったのだが、向こう側の壁と

(ぼくらのあいだになにかがたっているようなぶきみないわかんをかんじた。はんしゃてきに)

僕らの間に何かが立っているような不気味な違和感を感じた。反射的に

(かいちゅうでんとうのひかりをそこにむけたのだが、もちろんそこにはなにもいない。しもだがぼくの)

懐中電灯の光をそこに向けたのだが、もちろんそこには何もいない。下田が僕の

(はんしゃてきなこうどうになにがあったのか、とたずねてきた。ぼくはそのときにかんじたことを)

反射的な行動に何があったのか、と尋ねてきた。僕はその時に感じたことを

(しもだにせつめいした。しもだにばかにされるかとおもったが、いがいにもかれはそれをせず、)

下田に説明した。下田に馬鹿にされるかと思ったが、意外にも彼はそれをせず、

(へやのほうをむいてなかにははいらずに、あえてかいちゅうでんとうでなかをてらしもせず、)

部屋の方を向いて中には入らずに、あえて懐中電灯で中を照らしもせず、

(じっとそのなかのやみをみつめていた。そしてかれはきゅうにのけぞってみじかいこえをあげた。)

じっとその中の闇を見つめていた。そして彼は急にのけぞって短い声を上げた。

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