先生の怖い話「廃屋」(11/11)

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投稿者投稿者ななっしーいいね1お気に入り登録
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問題文

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(おもいかえしてみれば、あのやかたになにかがいたとしてそのなにかはそれほどわるいものでは)

思い返してみれば、あの館に何かがいたとしてその何かはそれほど悪いものでは

(なかったのかもしれない・・・。ぼくがみたおことのゆめにしろ、みやしたについてきた)

なかったのかもしれない・・・。僕が見たお琴の夢にしろ、宮下についてきた

(いちまつにんぎょうにしろ、わるいのはやかたをあらしたぼくらのほうで、もうこないでくれ、という)

市松人形にしろ、悪いのは館を荒らした僕らの方で、もう来ないでくれ、という

(ただのめっせーじだったのではないかといまではかんじるのだ。そのしょうこに、)

ただのメッセージだったのではないかと今では感じるのだ。その証拠に、

(おことにしろ、いちまつにんぎょうにしろ、あやまればそれいじょうおいうちをかけることなく)

お琴にしろ、市松人形にしろ、謝ればそれ以上追い打ちをかける事なく

(ゆるしてくれたではないか・・・。またぼくはもうひとつおもうことがある。しもだとさいごに)

許してくれたではないか・・・。また僕はもう一つ思う事がある。下田と最後に

(はいったひ、にかいからきこえたゆっくりとはいずるおと、あれはいまおもいかえしても)

入った日、二階から聞こえたゆっくりと這いずる音、あれは今思い返しても

(にどとききたくないふきつなもので、なにかじゃあくなかんじのするおとだった。あれは)

二度と聞きたくない不吉なもので、何か邪悪な感じのする音だった。あれは

(おことではなく、おことがあくやくをえんじてぼくらがこれいじょうあのやかたにいかないように、)

お琴ではなく、お琴が悪役を演じて僕らがこれ以上あの館に行かないように、

(つまりそのじゃあくななにかにであわないように、けっきょくはまもってもらったような)

つまりその邪悪な何かに出遭わないように、結局は守ってもらったような

(きがしてならない。もしすべてのうわさがほんとうであり、あのはいずるおとのしょうたいがれいの)

気がしてならない。もし全ての噂が本当であり、あの這いずる音の正体が例の

(ふらんすにんぎょうだったならば、けっかろんだがぼくのみたあのおそろしいおことのゆめにたすけて)

フランス人形だったならば、結果論だが僕の見たあの恐ろしいお琴の夢に助けて

(もらったとかんがえていっぽんすじがとおるのである。いまおもえばあのいちまいのふうけいがのなかを)

もらったと考えて一本筋が通るのである。今思えばあの一枚の風景画の中を

(ひっしでいそいでいたときに、ぼくのくびのうしろにそえられたても、らんぼうでもなくむしろ)

必死で急いでいた時に、僕の首の後ろに添えられた手も、乱暴でもなくむしろ

(やさしく、じゃあくなふんいきではなかった。だからこそぼくはおことはあのやかたのやさしい)

優しく、邪悪な雰囲気ではなかった。だからこそ僕はお琴はあの館の優しい

(まもりがみで、けっきょくはぼくらのみかただったのだとしんじたいのかもしれない。ただ、ぼくが)

守り神で、結局は僕らの味方だったのだと信じたいのかもしれない。ただ、僕が

(どうかってにかいしゃくして、こうていてきになっとくしようとしても、あのやかたにはげんじつてきに)

どう勝手に解釈して、肯定的に納得しようとしても、あの館には現実的に

(のこっているなぞがおおすぎる。あのころよりもずっとちしきもふえ、よりげんじつてきなはんだんが)

残っている謎が多すぎる。あの頃よりもずっと知識も増え、より現実的な判断が

(できるようになったいまのぼくにも、じぶんのもつきょうふしんがぼくらにみせたげんかくとして)

できるようになった今の僕にも、自分の持つ恐怖心が僕らに見せた幻覚として

(かたづけられないぶつりてきで、かつげせないなぞがかずおおくのこっている。きかいなかいだん。)

片づけられない物理的で、かつ解せない謎が数多く残っている。奇怪な階段。

など

(まどをちゅうしんとしてほうしゃじょうにおかれたぶつぞうぐん。ちいさなはんいのゆかにだけささった)

窓を中心として放射状に置かれた仏像群。小さな範囲の床にだけ刺さった

(ほうちょうのたば。へやごとにちがうかれんだー。むぞうさにのこされたよきんつうちょうとはんこ。)

包丁の束。部屋ごとに違うカレンダー。無造作に残された預金通帳と判子。

(かんしょうようとはおもえないすみずみまでおかれたにほんにんぎょうたち・・・。こういったものが)

観賞用とは思えない隅々まで置かれた日本人形達・・・。こういった物が

(げんそうをよび、いまのげんだいのこどもたちにはひさしくなった、ゆめやしんぴをそうぞうさせる)

幻想を呼び、今の現代の子供達には久しくなった、夢や神秘を想像させる

(よいかっせいざいとして、じだいをこえていまもぼくからげんざいのぼくのせいとたちにつたわっていき、)

良い活性剤として、時代を超えて今も僕から現在の僕の生徒達に伝わっていき、

(またかれらもみぶるいしながらもはなしにききいってくれる。げんそうはようちであり、)

また彼らも身震いしながらも話に聞き入ってくれる。幻想は幼稚であり、

(げんじつてきなもののかんがえかたこそこうどなおとなのかんがえかたであるといういまのよのなか、いわゆる)

現実的な物の考え方こそ高度な大人の考え方であるという今の世の中、いわゆる

(おとなたちはげんじつてきなあきらめしそうのもと、こうとうむけいなそうぞうからこそかのうせいが)

大人達は現実的なあきらめ思想のもと、荒唐無稽な想像からこそ可能性が

(うまれるということをわすれてしまったのではあるまいか?いま、げんだいのこどもたちに)

生まれるという事を忘れてしまったのではあるまいか?今、現代の子供達に

(とって、いっけんむだにおもえるこのようなはなしをするじかんこそ、じっさいにはべんきょうを)

とって、一見無駄に思えるこのような話をする時間こそ、実際には勉強を

(おしえることよりもはるかにたいせつな、かれらのそうぞうりょくというかのうせいをやしなうための、)

教える事よりも遥かに大切な、彼らの想像力という可能性を養う為の、

(いわゆる「じゅぎょう」なのであるとぼくはおもう。)

いわゆる『授業』なのであると僕は思う。

(がいでん)

外伝

(せんじゅつの「はいおく」のはなし、これをせいとにするとよくみょうなことがおこる。)

先述の『廃屋』の話、これを生徒にするとよく妙な事が起こる。

(いまはそうでもないが、むかしは7わりほどのかくりつでおこっていたのでなかなかのかくりつだ。)

今はそうでもないが、昔は7割程の確率で起こっていたのでなかなかの確率だ。

(はなしているさいちゅうにでんきがきえたり、きがわれるようななぞのおと、けいたいでんわの)

話している最中に電気が消えたり、木が割れるような謎の音、携帯電話の

(あらーむがきゅうになったり、あしおとなど、かぞえればきりがないが、いちばんいんしょうに)

アラームが急に鳴ったり、足音など、数えればキリがないが、一番印象に

(のこっているのは、せいとにたのまれてじゅぎょうがおわってからこのはなしをしたときだ。)

残っているのは、生徒に頼まれて授業が終わってからこの話をした時だ。

(じゅぎょうおわり、だれもいないじゅくでせっかくなのででんきをけし、すたんどを)

授業終わり、誰もいない塾でせっかくなので電気を消し、スタンドを

(ひとつだけつけてはなしをしていた。そのときは4にん、ぼくとたいめんにすわるかたちではなしていた。)

一つだけつけて話をしていた。その時は4人、僕と対面に座る形で話していた。

(はなしもかきょう、じてんしゃのあたりをはなしていたときに、きゅうにそのたいめんの4にんがはでに)

話も佳境、自転車の辺りを話していた時に、急にその対面の4人が派手に

(ぼくのほうに、まえのめりにたおれてきた。あまりにとつぜんでびっくりしたぼくをしりめに、)

僕の方に、前のめりに倒れてきた。あまりに突然でびっくりした僕を尻目に、

(かれらがぼくにまさにひっしなひょうじょうで、「なんですかいまの!?じしんですか!?」)

彼らが僕にまさに必死な表情で、「なんですか今の!?地震ですか!?」

(ときいてきた。ぼくはなにもかんじていない。たかなるしんぞうをおさえながら、)

と聞いてきた。僕は何も感じていない。高鳴る心臓を抑えながら、

(「でかいとらっくでもとおったんじゃない?」といったが、かれらはかんぜんひていした。)

「でかいトラックでも通ったんじゃない?」と言ったが、彼らは完全否定した。

(ひとはほんきでおびえたときにはがんめんがそうはくになる。これはひゆではない。)

人は本気で怯えた時には顔面が蒼白になる。これは比喩ではない。

(そのなかでもとくにまっしろなかおをしていたひとりがこういった。)

その中でも特に真っ白な顔をしていた一人がこう言った。

(「だれかにいすのあしをもってゆらされた・・・」と。)

「誰かに椅子の脚を持って揺らされた・・・」と。

(もうひとつある。じつはこのはなし、ゆめに「おこと」がけっこうなかくりつであらわれる・・・。)

もう一つある。実はこの話、夢に『お琴』が結構な確率で現れる・・・。

(といってもむかしのはなしで、いまはもうそんなほうこくはきかないからあんしんしてほしい。)

と言っても昔の話で、今はもうそんな報告は聞かないから安心してほしい。

(むかしから、ぼくもふくめてこどもたちというのはだんじょともにかいだんばなしがすきなこがおおく、)

昔から、僕も含めて子供達というのは男女共に怪談話が好きな子が多く、

(ぼくにとってせいととなかよくなるほうほうとしてはいちばんてっとりばやいほうほうでもあった。)

僕にとって生徒と仲良くなる方法としては一番手っ取り早い方法でもあった。

(このはなしはなかなかこうひょうで、みなしっかりこわがってくれる。そしてごじつ、)

この話はなかなか好評で、皆しっかり怖がってくれる。そして後日、

(ゆめに「おこと」がでてきた・・・というほうこくをよくうけた。)

夢に『お琴』が出てきた・・・という報告をよく受けた。

(ぼくはとうしょ、こわかったからゆめにみるという、ありきたりなことだとわらっていたが、)

僕は当初、怖かったから夢に見るという、ありきたりな事だと笑っていたが、

(そのせいとたちのなかで、そのときまでぼくすらわすれていた「おこと」のとくちょうをびょうしゃする)

その生徒たちの中で、その時まで僕すら忘れていた『お琴』の特徴を描写する

(せいとがあらわれた。ぼくはわらえなくなった。)

生徒が現れた。僕は笑えなくなった。

(いままできのせいだといってわらいとばしていたせいとにもういちどかくにんすると、)

今まで気のせいだと言って笑い飛ばしていた生徒にもう一度確認すると、

(げに10にんちゅう7にんほどぼくすらわすれていた・・・つまりぼくがはなしていない)

げに10人中7人ほど僕すら忘れていた・・・つまり僕が話していない

(「おこと」のとくちょうをのべた。きみょうだがそのとくちょうは、のべたぜんいんがおなじことをいった。)

『お琴』の特徴を述べた。奇妙だがその特徴は、述べた全員が同じ事を言った。

(だがかれらのゆめにあらわれた「おこと」はべつだんなにをするわけでもなく、ただでるだけで、)

だが彼らの夢に現れた『お琴』は別段何をするわけでもなく、ただ出るだけで、

(がいはないようだ。ちなみに10にんちゅう3にんのゆめにでた「おこと」は)

害はないようだ。ちなみに10人中3人の夢に出た『お琴』は

(ほうちょうをもっていたり、おいかけてきたりするいわゆるおそろしいものであり、)

包丁を持っていたり、追いかけて来たりするいわゆる恐ろしいものであり、

(ただのこわいゆめとおもわれるものだった。)

ただの怖い夢と思われるものだった。

(それいらい、ぼくはこのはなしをするときにはわなをしかけてはなすことにした。)

それ以来、僕はこの話をする時には罠を仕掛けて話すことにした。

(あえて「おこと」のあるとくちょうをかくしてはなすというわなだ。)

あえて『お琴』のある特徴を隠して話すという罠だ。

(こうすることであなたのゆめにでた「おこと」があなたのそうぞうのさんぶつか、)

こうする事であなたの夢に出た『お琴』があなたの想像の産物か、

(それともなにか、じょうしきではせつめいのつかないものなのか、はんだんのざいりょうになる。)

それとも何か、常識では説明の付かないものなのか、判断の材料になる。

(ただあんしんしていただきたいのは、それはきけんなものではないはずだ。)

ただ安心して頂きたいのは、それは危険なものではないはずだ。

(あれだけあのいえをあらし、しつれいなことをしたぼくらにすら、)

あれだけあの家を荒らし、失礼な事をした僕らにすら、

(なにもおきていないのだから。)

何も起きていないのだから。

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