ハイエースの車窓から

(おれはもうおいるをさしてもうごかないぶりきみたくみえる)

俺はもうオイルをさしても動かないブリキみたく見える？

(それともなまぬるいはくしゅをこうだけのかかしみたい)

それとも生温い拍手を乞うだけの案山子みたい？

(ひとりぜんもんどう)

一人禅問答

(うすよごれたまどのむこう)

薄汚れた窓の向こう

(なまえさえしらないまちのひがひとうかんかくでゆれる)

名前さえ知らない町の灯が非等間隔で揺れる

(むちをうつかわりにとうよ)

鞭を打つ代わりに投与

(かいぶつってなまえのいんりょう)

怪物って名前の飲料

(うたもはじもあせもかかずいきるみちをえらぶのかい)

唄も恥も汗もかかず生きる道をえらぶのかい？

(ひとりぜんもんどう)

一人禅問答

(かじとりはとなりであくびする)

舵取りは隣で欠伸する

(みちのりはへいじょう)

道のりは平常

(うたはいつもかぜのなか)

唄はいつも風の中

(とわもりんねもめいかいもゆめとおなじ)

永遠も輪廻も冥界も夢と同じ

(だれかのもうそう)

誰かの妄想

(じひもなくすぎさるときにきえてしまう)

慈悲もなく過ぎ去る時に消えてしまう

(おまえのきょうも)

お前の今日も

(まよなかすぎにとらっくのそうおんが)

真夜中過ぎにトラックの騒音が

(せいじゃくのりんかくをふちどっている)

静寂の輪郭を縁取っている

(そのせいでほらおとのないせかいよりずっと)

そのせいでほら、音のない世界よりずっと

(ふしぎなほどしずかなよる)

不思議なほど静かな夜

(あのとんねるをごらんよすれちがうひとにはおわりだけど)

あのトンネルをごらんよ擦れ違う人には終わりだけど

(おくびょうにたてがみなびかせるおれにとってはじまりさ)

臆病にタテガミなびかせる俺にとって始まりさ

(ただのげんこうようし)

ただの原稿用紙

(たねもしかけもないまっしろが)

種も仕掛けもない真っ白が

(ひとりでにしゃべりだしたようなうたはいつもかぜのなか)

独りでに喋りだした様な唄はいつも風の中

(まどにあさはふってきて)

窓に朝は降って来て

(あすをまたきょうせいきどう)

明日をまた強制起動

(ぜひもなくのむげんじつが)

是非もなく飲む現実が

(おれをふようとしまいにしょうきょ)

俺を「不要」と、終いに消去

(ならばおずのないたびでわめきならすきょうそうきょくの)

ならばオズのない旅で喚き鳴らす狂想曲の

(あうとろだくしょんのはてにきえてしまえ)

アウトロダクションの果てに消えてしまえ

(おまえのきょうも)

お前の凶も