蝶

(めをとじたままそっとくちびるちかづけて)

目を閉じたままそっと唇近づけて

(ふれそうなきょりのまま「きみをたべてしまいたい」)

触れそうな距離のまま「君を食べてしまいたい」

(きれいなこえをもっときかせてくれないか？)

きれいな声をもっと聞かせてくれないか？

(どくばりはいとをひき「どこにさしてほしいかいって」)

毒針は糸を引き「どこに刺して欲しいか言って」

(あいのわなにかかったわたしはちょう)

愛の罠にかかった私は蝶

(むすくのかおりがつよくていやなかんじ)

ムスクの香りが強くてイヤな感じ

(からみつくやさしさがくものいとみたい)

絡みつく優しさが蜘蛛の糸みたい

(あいじゃないけどなぜかあなたにいちどいだかれてみたかった)

愛じゃないけどなぜかあなたに一度抱かれてみたかった

(あいのわなにかかったわたしはちょう)

愛の罠にかかった私は蝶

(きょうはたんじょうびちょっとばらなんてずるいわ)

今日は誕生日ちょっとバラなんてずるいわ

(どんなちょうだってはなにはとまるじゃない)

どんな蝶だって花にはとまるじゃない

(あいじゃないけどなぜかあなたをうそでもしんじてみたかった)

愛じゃないけどなぜかあなたを嘘でも信じてみたかった

(いのちかげろううたかたのこいいまさらうしなうものなどない)

命かげろう泡沫の恋今さら失うものなどない

(いけないってわかっていながらいとをあやとり)

いけないってわかっていながら糸を愛夜盗り

(「またむじゃきにわらいかけてわたしをむだによろこばせないで」)

「また無邪気に笑いかけて私を無駄に喜ばせないで」

(なんていえないまままたこんやも)

なんて言えないまままた今夜も

(あなたにだかれたあしたもまたあさっても)

あなたに抱かれた明日もまた明後日も

(あなたにだかれていたい)

あなたに抱かれていたい

(あいのわなにかかったわたしはちょう)

愛の罠にかかった私は蝶

(ほかのおんなのこのぬけがらみないふり)

ほかの女の子の抜け殻見ないふり

(あえなくたってあそびだってよかった)

会えなくたって遊びだってよかった

(あいじゃないけどなぜかあなたに)

愛じゃないけどなぜかあなたに

(わたしすてられつらかった)

私捨てられ辛かった

(あいのわなにかかったわたしはちょう)

愛の罠にかかった私は蝶

(どんなにもがいたってうごけないままで)

どんなにもがいたって動けないままで

(こえがでちゃうくらいもてあそばれて)

声が出ちゃうくらい玩ばれて

(あいじゃないけどあいじゃないけどわたしあなたがすきだった)

愛じゃないけど愛じゃないけど私あなたが好きだった

(いたみだったらきらいじゃない)

痛みだったら嫌いじゃない

(でも「いたい」と「つらい」とはちがうの)

でも『痛い』と『辛い』とは違うの

(いけないってわかっていながらいとをつなわたり)

いけないってわかっていながら糸を綱渡り

(ここでおちたってわたりきったって)

ここで落ちたって渡りきったって

(どちらにせよまつのはじごくでしょう)

どちらにせよ待つのは地獄でしょう

(これでいいのひとりよりはまし)

これでいいの一人よりはマシ

(あなたおいかけてどこまでもおちていくあなたのかおりをおって)

あなた追いかけてどこまでも落ちていくあなたの香りを追って