先生 後編 -6-

・スマホ向けフリック入力タイピングはこちら
※アプリのインストールが必要です。
・PC向けタイピングはこちら
タブレット+BlueToothキーボードのプレイもこちらがオススメです!
Webアプリでプレイ
投稿者投稿者蛍☆いいね0お気に入り登録
プレイ回数15難易度(4.4) 3097打 長文 長文モードのみ
師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
cicciさんのアカウント
https://typing.twi1.me/profile/userId/130158
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 berry 8104 8.2 98.5% 370.3 3047 46 62 2025/05/09

関連タイピング

問題文

ふりがな非表示 ふりがな表示

(こん、こん。)

コン、コン。

(せきがきこえた。)

咳が聞こえた。

(どこかとおくからきこえたきがした。)

どこか遠くから聞こえた気がした。

(でもめのまえでせんせいがくちをおさえている。とてもおちついたかおをしていた。)

でも目の前で先生が口を押さえている。とても落ち着いた顔をしていた。

(「わたしも」)

「私も」

(ただのせきばらいではなかった。すこしおいて、せんせいはまたこん、こん、とせきをした。)

ただの咳払いではなかった。少しおいて、先生はまたコン、コン、と咳をした。

(そしてゆっくりとかおをあげる。)

そしてゆっくりと顔を上げる。

(「ごめん。わたしもかぜをひいたみたい。)

「ゴメン。私も風邪を引いたみたい。

(うつるといけないから、あしたからおやすみにしましょう」)

うつるといけないから、明日からお休みにしましょう」

(そんな。そんなのはいやだ。かぜなんかへっちゃらだ。)

そんな。そんなのはいやだ。風邪なんかへっちゃらだ。

(だからやすみなんていわないで。)

だから休みなんて言わないで。

(そんなことをくちばしるぼくをおしとどめ、せんせいはめをほそめていう。)

そんなことを口走る僕を押しとどめ、先生は目を細めて言う。

(「だめ。わるいかぜなのよ。)

「駄目。悪い風邪なのよ。

(なおったら、きっとせかいしのつづきをおしえてあげるから」)

治ったら、きっと世界史の続きを教えてあげるから」

(だだをこねるぼくにせんせいはさとすようにかたにてをおく。)

だだをこねる僕に先生は諭すように肩に手を置く。

(「きょうはあなたもかおいろがわるいわ。あなたもすこしやすんだほうがいいみたい」)

「今日はあなたも顔色が悪いわ。あなたも少し休んだ方がいいみたい」

(そんなことない、そういってとびはねようとして、ぐらっとひざがおちる。)

そんなことない、そう言って飛び跳ねようとして、グラッと膝が落ちる。

(だめだ。やっぱりあさからちょうしわるい。かぜなんかじゃないのに。)

だめだ。やっぱり朝から調子悪い。風邪なんかじゃないのに。

(くやしかった。もうにどとせんせいとあえないようなきがした。)

悔しかった。もう二度と先生と会えないような気がした。

(かおをそむけ、またこんこんといってからせんせいはぼくのめをみる。)

顔を背け、またコンコンと言ってから先生は僕の目を見る。

など

(「あなたがはじめにどうくつにはいったとき、ふしぎなまぼろしをみたわね。)

「あなたが始めに洞窟に入った時、不思議な幻を見たわね。

(あかいきものがひらひらしてるのを」)

赤い着物がヒラヒラしてるのを」

(おわってしまったはずのじけんのことをきゅうにいわれてとまどったけれど、)

終わってしまったはずの事件のことを急に言われて戸惑ったけれど、

(なんとかうなずく。)

なんとか頷く。

(「こわいこわいとおもうこころがうんだはずのまぼろしなのに、まったくかんけいがない)

「怖い怖いと思う心が生んだはずの幻なのに、まったく関係がない

(あかいきもののまぼろしなんてどうしてみたんだろうと、あなたはおもった」)

赤い着物の幻なんてどうして見たんだろうと、あなたは思った」

(そうだった。どうしてあかいきものなんだろうと。でも、けっきょくどうくつのおくには)

そうだった。どうして赤い着物なんだろうと。でも、結局洞窟の奥には

(かくれられるばしょもなく、だれもいなかったのだから、ただのまぼろしにはちがいない。)

隠れられる場所もなく、誰もいなかったのだから、ただの幻には違いない。

(そんなぼくに、せんせいはゆっくりとくびをふる。)

そんな僕に、先生はゆっくりと首を振る。

(「このむらではね、わかくしてしんだおんなのこにはしろいきょうかたびらではなくて、)

「この村ではね、若くして死んだ女の子には白い経帷子ではなくて、

(あかいきものをきせてとむらうのよ。そのこのよめいりのためにためていたおかねで、)

赤い着物を着せて弔うのよ。その子の嫁入りのために貯めていたお金で、

(のこされたおやがさいごのおいわいをしてあげるの。)

残された親が最後のお祝いをしてあげるの。

(はれのないけなんて、あんまりかわいそうだもの。)

晴れのない袈なんて、あんまり可哀想だもの。

(もっともいまはもうしていない。おおむかしのしゅうかんだけれど。)

もっとも今はもうしていない。大昔の習慣だけれど。

(そしてあのどうくつのあるやまはししゃがたましいがまどうばしょとしておそれられていたところなの。)

そしてあの洞窟のある山は死者が魂が惑う場所として恐れられていた所なの。

(そくみほとけになったおぼうさんは)

即身仏になったお坊さんは

(それをしずめるためににゅうざんしたとつたえられているそうよ」)

それを鎮めるために入山したと伝えられているそうよ」

(なんだかへんなきぶんだ。ぼくがみたものはただのまぼろしではなかったのだろうか。)

なんだか変な気分だ。僕が見たものはただの幻ではなかったのだろうか。

(「いいえ。まぼろしよ。もうこのよにはいない。でも、あなたはそれをみる」)

「いいえ。幻よ。もうこの世にはいない。でも、あなたはそれを見る」

(せんせいのめが、すいこまれそうにふかくしずんだようなかがやきでぼくのめをとらえる。)

先生の目が、吸い込まれそうに深く沈んだような輝きで僕の目を捉える。

(「あなたは、だれにもみえないふしぎなものをみるのよ。これからもずっと。)

「あなたは、誰にも見えない不思議なものを見るのよ。これからもずっと。

(それはきっとあなたのじんせいをまどわせる」)

それはきっとあなたの人生を惑わせる」

(くちびるがゆっくりとうごく。なめらかに、あやしく。)

唇がゆっくりと動く。滑らかに、妖しく。

(「それでもどうかめをとじないで。はれのきものをみてもらえてうれしかった。)

「それでもどうか目を閉じないで。晴れの着物を見てもらえて嬉しかった。

(そんなささやかなおもいが、)

そんなささやかな思いが、

(すくわれないはずのたましいをすくうことがあるのかもしれない」)

救われないはずの魂を救うことがあるのかも知れない」

(ぼくはごくりとつばをのんだ。それからにかいうなずいた。なぜかなみだがあふれでてきた。)

僕はゴクリと唾を飲んだ。それから二回頷いた。何故か涙があふれ出てきた。

(せんせいは「さようなら」といった。)

先生は「さようなら」と言った。

(ぼくも「さようなら」といった。)

僕も「さようなら」と言った。

(ふらふらとしながらきょうしつをでて、ろうかをぬけ、かいだんをおり、)

ふらふらとしながら教室を出て、廊下を抜け、階段を下り、

(げたばこでくつをはく。そしてこうていにでて、すこしあるいてからふりかえる。)

下駄箱で靴を履く。そして校庭に出て、少し歩いてから振り返る。

(にかいのきょうしつのまどにはせんせいがいる。であったころのままのえがおで。)

二階の教室の窓には先生がいる。出会ったころのままの笑顔で。

(そのとなりにはせんばづるがゆれている。せんばにはきっとたりないけれど、)

その隣には千羽鶴が揺れている。千羽にはきっと足りないけれど、

(たくさん、たくさんゆれている。)

たくさん、たくさん揺れている。

(せんせいがてをふる。ぼくもてをふる。)

先生が手を振る。僕も手を振る。

(そして、であってからいちどもせんせいががっこうのそとにでていないことをおもいだす。)

そして、出会ってから一度も先生が学校の外に出ていないことを思い出す。

(かんかんとたいようはてりつけているのに、こうしゃのふるぼけたかわらやねが)

カンカンと太陽は照りつけているのに、後者の古ぼけた瓦屋根が

(やけにいろあせてみえた。さかをくだりていくと、だんだんがっこうがみえなくなる。)

やけに色あせて見えた。坂を下りて行くと、だんだん学校が見えなくなる。

(ぼくはてをおろし、あぜみちをとおり、もりへむかう。)

僕は手を下ろし、畦道を通り、森へ向かう。

(ちんじゅのもりはいつになくくらくしめっている。まっくらでよるそのもののような)

鎮守の森はいつになく暗く湿っている。真っ暗で夜そのもののような

(きのあーちをぬけ、くろいつちのみちをふみしめる。)

木のアーチを抜け、黒い土の道を踏みしめる。

(あたまがぼうっとしてくる。きぶんがわるい。)

頭がぼうっとしてくる。気分が悪い。

問題文を全て表示 一部のみ表示 誤字・脱字等の報告

蛍☆のタイピング

オススメの新着タイピング

タイピング練習講座 ローマ字入力表 アプリケーションの使い方 よくある質問

人気ランキング

注目キーワード