伝統の歌

(やねのうえのヴぁいおりんひき)

屋根の上のヴァイオリン弾き

(いったいなんだとおもいます)

一体なんだと思います？

(おれたちあなてふかのゆだやじんは)

俺たちアナテフカのユダヤ人は

(みんな やねのうえのヴぁいおりんひきみたいなもんだ)

みんな 屋根の上のヴァイオリン弾きみたいなもんだ

(おっこちてくびのほねをおらないように きをつけながら)

おっこちて首の骨を折らないように 気を付けながら

(ゆかいでそぼくなしらべを かきならそうとしてる)

愉快で素朴な調べを かき鳴らそうとしてる

(こりゃあたやすいことじゃない)

こりゃあ容易いことじゃない

(じゃあなぜそんな あぶなっかしいところにすんでるか)

じゃあなぜそんな 危なっかしいところに住んでるか

(それはここあなてふかが おれたちのうまれこきょうだからだ)

それはここアナテフカが 俺たちの生まれ故郷だからだ

(ではどうやって ばらんすをたもっているか)

ではどうやって バランスを保っているか

(そいつはこのことばしかない)

そいつはこの言葉しかない

(しきたり)

しきたり！

(しきたりしきたりしきたり)

しきたり　しきたり　しきたり

(しきたりしきたりしきたり)

しきたり　しきたり　しきたり

(このあなてふかにゃあ むかしからなにごとにもしきたりがある)

このアナテフカにゃあ 昔から何事にもしきたりがある

(ねむりかためしのくいかたふくのきかた)

眠り方　飯の食い方　服の着方

(たとえばおれたちはいつもこうやって ぼうしをかぶってる)

例えば俺たちはいつもこうやって 帽子をかぶってる

(これはひごろのしんじんのしるしだ)

これは日頃の信心の印だ

(いつしきたりがはじまったか)

いつしきたりが始まったか？

(それはわからない)

それは分からない

(でもこのしきたりのおかげで)

でもこのしきたりのおかげで

(みのほどをわきまえて かみさまのみこころにそえるというもんだ)

身の程をわきまえて 神様の御心に添えるというもんだ！

(せいかつをいってにひきうけ あせをながしはたらいて)

生活を一手に引き受け 汗を流し働いて

(にょうぼうせがれむすめたちを やしなうのはだれ)

女房　せがれ　娘たちを 養うのは誰

(それはぱぱしきたり)

それはパパ　しきたり

(それはぱぱしきたり)

それはパパ　しきたり

(みんながやすめるように きれいでしずかな)

みんなが休めるように 綺麗で静かな

(かていをこしらえるのは だれでしょうだれでしょう)

家庭をこしらえるのは 誰でしょう　誰でしょう

(それはまましきたり)

それはママ　しきたり

(それはまましきたり)

それはママ　しきたり

(みっつでじをよんでじゅっさいでしょうばい)

三つで字を読んで十歳で商売

(はなよめがきれいならいいな)

花嫁がきれいならいいな

(それはむすこしきたり)

それは息子　しきたり

(それはむすこしきたり)

それは息子　しきたり

(はりしごとはおかあさんに おむこさんならおとうさんに)

針仕事はお母さんに お婿さんならお父さんに

(それはむすめしきたり)

それは娘　しきたり

(それはむすめしきたり)

それは娘　しきたり

(せいかつをいってにひきうけ あせをながしはたらいて)

生活を一手に引き受け 汗を流し働いて

(にょうぼうせがれむすめたちを やしなうのはだれ)

女房　せがれ　娘たちを 養うのは誰

(ぱぱだ)

パパだ

(ままよ)

ママよ

(むすこ)

息子

(むすめ)

娘

(しきたり)

しきたり

(それはぱぱしきたり)

それはパパ　しきたり

(こんなちいさなむらにもとくべつなにんげんがいる)

こんな小さな村にも特別な人間がいる

(なこうどをなりわいにしているいえんて)

仲人を生業にしているイエンテ

(あぶらむあんたのむすこに すばらしいむすめをせわするよ)

アブラム！　あんたの息子に 素晴らしい娘を世話するよ

(だれだね)

誰だね？

(るーちぇるさくつやのむすめの)

ルーチェルさ　靴屋の娘の

(るーちぇるだがあのこはぐずでぐーたら なにもしごとはできませんよ)

ルーチェル　だがあの子はグズでグータラ 何も仕事はできませんよ

(あそれじゃおにあいだよ)

あ　それじゃお似合いだよ

(あんたのむすこだってぐーたらだ)

あんたの息子だってグータラだ

(それからこじきのなふむ)

それから乞食のナフム

(あわれなこじきにほどこしを あわれなこじきにおめぐみを)

哀れな乞食に施しを 哀れな乞食にお恵みを

(さあなふむいちこぺーかやるぞ)

さあナフム　１コペーカやるぞ

(いちこぺーか せんしゅうはにこぺーかくれたぜ)

１コペーカ？ 先週は２コペーカくれたぜ

(こんしゅうはかせぎがわるかったんでな)

今週は稼ぎが悪かったんでな

(だんなのかせぎがわるかったからって)

旦那の稼ぎが悪かったからって

(おれがそんするってはねえや)

俺が損するってはねえや！

(それからわれらがもっともけいあいするしさいさま)

それから我らが最も敬愛する司祭様

(しさいさま)

司祭様

(なんだいむすこ)

なんだい息子

(ひとつしつもんがあるのですが)

ひとつ質問があるのですが

(はい)

はい

(ろしあのこうていにもかみのしゅくふくはあるのですか)

ロシアの皇帝にも神の祝福はあるのですか

(もちろんです)

もちろんです

(かみさまこうていへいかがいつまでも われらゆだやのたみのことをきにかけてください)

神様　皇帝陛下がいつまでも 我らユダヤの民のことを気にかけてください

(ませんように)

ませんように

(らららいらいらららいらい)

ララライライ　ララライライ

(らららいらいらららららい)

ララライライ　ララララライ

(らららいらいらららいらい)

ララライライ　ララライライ

(らららいらいらららららい)

ララライライ　ララララライ

(それからこのむらにすむろしあじん やつらはおおきなちからをもつ)

それからこの村に住むロシア人 奴らは大きな力を持つ

(じゅんさぶちょうのだんな ぎりしゃせいきょうのおぼうさま)

巡査部長の旦那 ギリシャ正教のお坊様

(そのほかおえらがた)

その他お偉方

(おれたちとろしあじんはおたがいにめいわくはかけませんし けっこううまくやってますよ)

俺達とロシア人はお互いに迷惑はかけませんし 結構うまくやってますよ

(でもときにはこのおとこがこのおとこにうまをうったら)

でも時にはこの男がこの男に馬を売ったら

(おいこりゃどっからどうみても らばじゃねえか)

おい　こりゃどっからどう見ても ラバじゃねえか！

(なんてもめたこともあったが いまじゃすっかりかたがつき)

なんて揉めたこともあったが 今じゃすっかりカタが付き

(へいわとちょうわのなかでくらしをたてている)

平和と調和の中で暮らしを立てている

(ありゃうまだったな)

ありゃ馬だったな

(ありゃたしからばだったね)

ありゃ確かラバだったね

(ありゃうまだったよ)

ありゃ馬だったよ

(いやらばですよ)

いやラバですよ

(うまだ)

馬だ！

(らばだ)

ラバだ！

(うまだ)

馬だ！

(らばだ)

ラバだ！

(うまだ)

馬だ！

(らばだ)

ラバだ！

(うまだ)

馬だ！

(らばだ)

ラバだ！

(うまだ)

馬だ！

(らば)

ラバ！

(しきたりしきたりしきたり)

しきたり　しきたり　しきたり

(しきたりしきたりしきたり)

しきたり　しきたり　しきたり

(それがなければ おれたちのくらしはあぶなっかしい)

それがなければ 俺たちの暮らしは危なっかしい

(そう)

そう！

(やねのうえのヴぁいおりんひきみたいなもんだ)

屋根の上のヴァイオリン弾きみたいなもんだ！