影を食べる部屋

ニューウェーブ・ダークフィクション 1
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問題文
(そのへやにはいったしゅんかんから、いわかんがあった。)
その部屋に入った瞬間から、違和感があった。
(くうきはすんでいるのに、どこかにごってみえる。)
空気は澄んでいるのに、どこか濁って見える。
(まどはなく、でんきゅうもないのに、はいいろのひかりがみちている。)
窓はなく、電球もないのに、灰色の光が満ちている。
(かべにはなにもかけられていないのに、)
壁には何も掛けられていないのに、
(かげだけがいくつもかさなりあい、だれかがそこにたっているようにみえた。)
影だけがいくつも重なり合い、誰かがそこに立っているように見えた。
(よごとにかよううち、かげはふえていった。)
夜ごとに通ううち、影は増えていった。
(さいしょはひとかげのようだったが、しだいにかたちをくずし)
最初は人影のようだったが、次第に形を崩し
(ほそながいゆびのたばや、くちだけのりんかくにかわっていった。)
細長い指の束や、口だけの輪郭に変わっていった。
(こえはきこえない。)
声は聞こえない。
(ただ、かげがゆれるたびに、むねのおくでふるいきおくがざわつく。)
ただ、影が揺れるたびに、胸の奥で古い記憶がざわつく。
(おさないころにおきざりにしたこうかいや、ことばにできないこどくが、かげのなかからかおをだす。)
幼い頃に置き去りにした後悔や、言葉にできない孤独が、影の中から顔を出す。
(やがてしょくよくがうすれ、ねむけもきえ、へやをでてもほんちょうしがもどらなくなった。)
やがて食欲が薄れ、眠気も消え、部屋を出ても本調子が戻らなくなった。
(じぶんがかげをみにいっているのか、)
自分が影を見に行っているのか、
(それともかげがじぶんをよんでいるのかわからない。)
それとも影が自分を呼んでいるのか分からない。
(あるよる、かげのひとつがゆかをはい、あしもとにまとわりついた。)
ある夜、影のひとつが床を這い、足元にまとわりついた。
(つめたさではなくねつをおびたかんしょくがひふにくいこみ、たいおんとくべつがつかなくなる。)
冷たさではなく熱を帯びた感触が皮膚に食い込み、体温と区別がつかなくなる。
(ふりはらおうとしたしゅんかん、かげはくちをひらき、)
振り払おうとした瞬間、影は口を開き、
(ことばなきこえでなにかを「たべる」おとをたてた。)
言葉なき声で何かを「食べる」音を立てた。
(じぶんのかげがゆかからはがれ、くろいしたにからめとられていく。)
自分の影が床から剥がれ、黒い舌に絡め取られていく。
(つぎのあさ、かがみをみてもすがたがうつらなかった。)
次の朝、鏡を見ても姿が映らなかった。
(ただ、はいごのかべにだけ、みなれぬひとかげがたっていた。)
ただ、背後の壁にだけ、見慣れぬ人影が立っていた。
(そのかげはほほえんでいた。じぶんのかおで。)
その影は微笑んでいた。自分の顔で。