返して

(あしたぼくらはきっとふたりだけ)

明日僕らはきっとふたりだけ

(せめてあわになってきえるまで)

せめて泡になって消えるまで

(しょうせつのやまにそっとひをつけ)

小説の山にそっと火をつけ

(たきびをしてあそぼうよ)

たき火をして遊ぼうよ

(いっそひがしのみさきから)

いっそ東の岬から

(おとなたちのさめためをぬすんで)

大人たちの冷めた目を盗んで

(つぎのふねでにげてしまおうか)

次の船で逃げてしまおうか

(いまみえたんだ)

いま見えたんだ

(よるとあさのつなぎめが)

夜と朝のつなぎ目が

(ただひたすらに)

ただひたすらに

(それだけさがしつづけたら)

それだけ探し続けたら

(ほらみえたんだ)

ほら見えたんだ

(あけはなったまどのむこう)

開け放った窓の向こう

(しらじらとひはのぼる)

白々と陽は登る

(まだわかるかな)

まだ分かるかな

(きらめくなみのすきまには)

きらめく波の隙間には

(ふときづくんだ)

ふと気づくんだ

(ふざけたかおのきみがいて)

ふざけた顔のきみがいて

(すぐきえるんだ)

すぐ消えるんだ

(ゆめとげんじつのなかばで)

夢と現実の半ばで

(ゆらゆらとめがさめる)

ゆらゆらと目が覚める

(ちいさくいきるこのまちには)

小さく生きるこの街には

(ぶきやろじっくはいらないのに)

武器やロジックはいらないのに

(あしたぼくらはきっとふたりだけ)

明日僕らはきっとふたりだけ

(せめてあめになってとけるまで)

せめて雨になって溶けるまで

(もるたるのかべにそっておおきな)

モルタルの壁に沿って大きな

(えすおーえすをえがこうよ)

S.O.S.を描こうよ

(ぎょうぎよくあしをそろえた)

行儀よく足を揃えた

(へいたいたちのおとしたぼうしを)

兵隊達の落とした帽子を

(かぶったままどこでおよごうか)

被ったままどこで泳ごうか

(いまつくるんだ)

いま作るんだ

(ふかくにつめたよくぼうと)

深く煮詰めた欲望と

(すぐまぜるんだ)

すぐ混ぜるんだ

(こねくりまわすかつぼうで)

こねくり回す渇望で

(ほらみたすんだ)

ほら満たすんだ

(あけはなったまどのむこうにつなげて)

開け放った窓の向こうに繋げて

(あばかれたこころを)

暴かれたこころを

(つかまえてさあさあさあ)

捕まえてさあ　さあ　さあ！

(ぼくらはずっとひとりだけ)

僕らはずっとひとりだけ

(せめてうえのまぶたがおちるまで)

せめて上のまぶたが落ちるまで

(はなのおくがつんとするような)

鼻の奥がツンとするような

(えいがのはなしをしていたい)

映画の話をしていたい

(きみはこきゅうをととのえて)

君は呼吸を整えて

(ながいかみをおもいきりきったら)

長い髪を思い切り切ったら

(みたことのないかおをした)

見たことのない顔をした

(あしたはきっとふたりだけ)

明日はきっとふたりだけ

(せめてあわになってきえるまで)

せめて泡になって消えるまで

(しょうせつのやまにそっとひをつけ)

小説の山にそっと火をつけ

(たきびをしてあそぼうよ)

たき火をして遊ぼうよ

(いっそひがしのみさきから)

いっそ東の岬から

(おとなたちのさめためをぬすんで)

大人たちの冷めた目を盗んで

(つぎのふねでにげてあのくにまでいきたいな)

次の船で逃げてあの国まで行きたいな

(ゆるぎないいとしみを)

ゆるぎないいとしみを

(かわらないあのひびを)

かわらないあの日々を

(またとないあいまいな)

またとないあいまいな

(ことばを)

ことばを

(かえして)

返して