長文練習31!

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投稿者投稿者まりとっつぉ🎐いいね0お気に入り登録
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問題文

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(ちちは、あめのひになるときまってかさをわすれた。) 父は、雨の日になると決まって傘を忘れた。 (ほんとうにわすれているのか、それともわざとなのか、) 本当に忘れているのか、それともわざとなのか、 (わたしにはさいごまでわからなかった。) 私には最後までわからなかった。 (げんかんにはいつもくろいかさがたてかけてある。) 玄関にはいつも黒い傘が立てかけてある。 (なのにちちはあめがふるたび、「またわすれた」とこまったようにわらっていた。) なのに父は雨が振るたび、「また忘れた」と困ったように笑っていた。 (はははあきれながらも、けっきょくそのかさをもってえきまでとどけにいく。) 母は呆れながらも、結局その傘を持って駅まで届けに行く。 (わたしはこどものころ、そのやりとりがすこしきらいだった。) 私は子どものころ、そのやり取りが少し嫌いだった。 (どうしてまいかいおなじことをくりかえすのだろう。) どうして毎回同じことを繰り返すのだろう。 (わすれないようにすればいいだけなのに。) 忘れないようにすればいいだけなのに。 (こうこうせいになるころには、ははがかさをとどけにいくこともへっていた。) 高校生になるころには、母が傘を届けに行くことも減っていた。
(ちちもとしをとり、かえりがおそくなることがふえたからだ。) 父も年を取り、帰りが遅くなることが増えたからだ。 (あるあきのひ、めずらしくわたしはがっこうをはやくでた。) ある秋の日、珍しく私は学校を早く出た。 (そらはあさからくもっていた。) 空は朝から曇っていた。 (しめったかぜがふいていて、もうすぐあめがふることをだれもがしっていた。) 湿った風が吹いていて、もうすぐ雨が降ることを誰もが知っていた。 (きたくすると、げんかんにはれいのくろいかさがのこっていた。) 帰宅すると、玄関には例の黒い傘が残っていた。 (わたしはちいさくためいきをつく。) 私は小さくため息をつく。 (まただ。) まただ。 (ゆうがたになるころには、あんのじょうあめがふりはじめた。) 夕方になるころには、案の定雨が振り始めた。 (まどがらすをこまかいあまつぶがたたいている。) 窓ガラスを細かい雨粒が叩いている。 (はははだいどころでゆうはんをつくりながらいった。) 母は台所で夕飯を作りながら言った。
など
(「わるいけど、おとうさんにかさとどけてくれない?」) 「悪いけど、お父さんに傘届けてくれない?」 (わたしはめんどうだとおもった。) 私は面倒だと思った。 (けれどことわるりゆうもなく、しかたなくかさをもっていえをでた。) けれど断る理由もなく、仕方なく傘を持って家を出た。 (えきまでのみちはぬれていた。) 駅までの道は濡れていた。 (がいとうがあすふぁるとにぼんやりうつっている。) 街灯がアスファルトにぼんやり映っている。 (わたしはちちがよくたっているかいさつまえへむかった。) 私は父がよく立っている改札前へ向かった。 (しかし、そこにちちのすがたはなかった。) しかし、そこに父の姿はなかった。 (すこしまってみたが、こない。) 少し待ってみたが、来ない。 (わたしはぽけっとからすまほをとりだし、ちちにれんらくしようとした。) 私はポケットからスマホを取り出し、父に連絡しようとした。 (そのとき、ふとちかくのべんちがめにはいる。) そのとき、ふと近くのベンチが目に入る。 (ふるいもくせいのべんちだった。) 古い木製のベンチだった。 (そこに、ひとりのじょせいがすわっていた。) そこに、一人の女性が座っていた。 (しろいかーでぃがんをはおり、ちいさなかみぶくろをかかえている。) 白いカーディガンを羽織り、小さな紙袋を抱えている。 (どこかつかれたようなひょうじょうだった。) どこか疲れたような表情だった。 (じょせいはぬれたそらをみあげながら、ちいさくせきをした。) 女性は濡れた空を見上げながら、小さく咳をした。 (わたしはなんとなくきになったが、そのまましせんをそらした。) 私はなんとなく気になったが、そのまま視線を逸らした。 (しばらくして、はいごからこえがした。) しばらくして、背後から声がした。 (「またせたな」) 「待たせたな」 (ふりかえると、ちちがたっていた。) 振り返ると、父が立っていた。 (かみやかたがすこしぬれている。) 髪や肩が少し濡れている。 (わたしはむごんでかさをさしだした) 私は無言で傘を差し出した (ちちはうけとりながら、ふとべんちのじょせいをみた。) 父は受け取りながら、ふとベンチの女性を見た。 (そのしゅんかん、ちちのひょうじょうがほんのすこしかわったきがした。) その瞬間、父の表情がほんの少し変わった気がした。 (けれどちちはなにもいわず、ただしずかにあるきだした。) けれど父は何も言わず、ただ静かに歩き出した。 (かえりみち、わたしはきいた。) 帰り道、私は聞いた。 (「なんでまいかいかさわすれるの」) 「なんで毎回傘忘れるの」 (ちちはすこしだまったあと、ちいさくわらった。) 父は少し黙ったあと、小さく笑った。 (「わすれてるわけじゃない」) 「忘れてるわけじゃない」 (「じゃあなんで?」) 「じゃあなんで?」 (ちちはまえをむいたままこたえる。) 父は前を向いたまま答える。 (「むかし、あめのひに、おかあさんとえきでまちあわせしてたんだ」) 「昔、雨の日に、お母さんと駅で待ち合わせしてたんだ」 (わたしはだまってきいていた。) 私は黙って聞いていた。 (「しごとでどれだけおそくなっても、おかあさんはかさをもってまってた」) 「仕事でどれだけ遅くなっても、お母さんは傘を持って待ってた」 (あまおとだけがしずかにひびいていた。) 雨音だけが静かに響いていた。 (「だからいまでも、あめがふるとすこしきたいしてしまうんだよ」) 「だから今でも、雨が降ると少し期待してしまうんだよ」 (そのことばをきいたしゅんかん、わたしはきづいた。) その言葉を聞いた瞬間、私は気づいた。 (ちちはかさをわすれていたのではなかった。) 父は傘を忘れていたのではなかった。 (むかえにくるひとがいるということを、ずっとたいせつにしていたのだ。) 迎えに来る人がいるということを、ずっと大切にしていたのだ。 (いえにつくころには、あめはすこしよわくなっていた。) 家につくころには、雨は少し弱くなっていた。 (げんかんのまえで、ちちはふとふりかえる。) 玄関の前で、父はふと振り返る。 (「そういえば、えきにすわってたひといたろ」) 「そういえば、駅に座ってた人いたろ」 (わたしはうなずく。) 私は頷く。 (ちちはしずかにいった。) 父は静かに言った。 (「むかしのおかあさんによくにてた」) 「昔のお母さんによく似てた」 (わたしはおもわずいきをとめた。) 私は思わず息を止めた。 (ちちがさっき、あのじょせいをみていたりゆうがようやくわかった。) 父がさっき、あの女性を見ていた理由がようやくわかった。 (あめのひになるたび、ちちはきっとおもいだしていたのだ。) 雨の日になるたび、父はきっと思い出していたのだ。 (わかかったころのははを。) 若かったころの母を。 (えきでかさをもってまっていた、あのじかんを。) 駅で傘を持って待っていた、あの時間を。 (げんかんのとびらがひらく。) 玄関の扉が開く。 (なかから、ゆうはんのにおいがながれてきた。) 中から、夕飯の匂いが流れてきた。 (ちちはなにもいわず、しずかにかさをとじた。) 父は何も言わず、静かに傘を閉じた。
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