心霊写真 -34-

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師匠シリーズ
以前cicciさんが更新してくださっていましたが、更新が止まってしまってしまったので、続きを代わりにアップさせていただきます。
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問題文

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(「よのなかにはな。せつめいのつかないことってやつは、たしかにあるんだ」) 「世の中にはな。説明のつかないことってやつは、確かにあるんだ」 (せつめいのつかないこと?) 説明のつかないこと? (それとあくとくぼうずとなにのかんけいがあるのか。) それと悪徳坊主と何の関係があるのか。 (「まあ、いけばわかる」) 「まあ、行けば分かる」 (ししょうはくちぶえをふきながら、あけはなったくるまのまどからはいってくるかぜを) 師匠は口笛を吹きながら、開け放った車の窓から入ってくる風を (きもちよさそうにかおにうけている。) 気持ちよさそうに顔にうけている。 (くるまはだこうしながらやまにのぼりはじめ、ぼくはじょしゅせきでくるまよいしそうになったころ、) 車は蛇行しながら山に登り始め、僕は助手席で車酔いしそうになったころ、 (ようやくそれらしいさんもんがみえてきた。) ようやくそれらしい山門が見えてきた。 (しゅういにはやまのしゃめんにもかかわらず、はたけがたくさんあった。だんだんばたけというやつか。) 周囲には山の斜面にもかかわらず、畑がたくさんあった。段々畑というやつか。 (ほそうもされていないちゅうしゃすぺーすがあったので、そこにくるまをとめる。) 舗装もされていない駐車スペースがあったので、そこに車を停める。 (ざりざりざりというたいやがすなをかむおとがひびいた。) ザリザリザリというタイヤが砂を噛む音が響いた。 (さんもんのさゆうにはいたかべがついているが、それももうしわけていどで、) 山門の左右には板壁がついているが、それも申し訳程度で、 (そのそとがわはおおきなきがおいしげっている。) その外側は大きな木が生い茂っている。 (そのいたかべのはしのあたりにいしはしらがたっていて、) その板壁の端のあたりに石柱が立っていて、 (「 」というもじがたてにほられていた。) 「不許葷酒入山門」という文字が縦に彫られていた。 (それをみながら「ぜんしゅうのてらですか」ときくと、「ちがう」というこたえ。) それをみながら「禅宗の寺ですか」と訊くと、「違う」という答え。 (「ほんらいはぜんしゅうのいましめだがな。わりとせっそうなくほかのしゅうはでもみるよ。) 「本来は禅宗の戒めだがな。割と節操なく他の宗派でも見るよ。 (ただ、ここんはちょっとしゅしがちがうんだ」) ただ、ここんはちょっと趣旨が違うんだ」 (「なんですか、それ」) 「なんですか、それ」 (ししょうはせきちゅうのもじをゆびさしながら、「なんてよむとおもう」ときく。) 師匠は石柱の文字を指さしながら、「なんて読むと思う」と訊く。
など
(「くんしゅ、さんもんにいるをゆるさず、でしょう」) 「葷酒(くんしゅ)、山門に入(い)るを許さず、でしょう」 (くんしゅ、つまりにんにくやねぎなどのにおいのつよいやさいやさけのるいは) 葷酒、つまりニンニクやネギなどの匂いの強い野菜や酒の類は (そうりょのしゅぎょうのさまたげになるので、もちこんではいけない、といういましめのことばだ。) 僧侶の修行の妨げになるので、持ち込んでは行けない、という戒めの言葉だ。 (げんだいなら、ぎょうざにびーるというところか。) 現代なら、餃子にビールというところか。 (しかしししょうは「ちがうなあ」とにやにやわらう。) しかし師匠は「違うなあ」とニヤニヤ笑う。 (「くんしゅ、ゆるされざるもさんもんにはいる、だ」) 「葷酒、許されざるも山門に入る、だ」 (みえないかえりてんのいちをゆびでしめしながらそういった。) 見えない返り点の位置を指で示しながらそう言った。 (はいっちゃうんだ・・・・・) 入っちゃうんだ・・・・・ (ぼくのあたまのなかでじゅうしょくがどういうじんぶつか、さらにほきょうされた。) 僕の頭の中で住職がどういう人物か、さらに補強された。 (やまもんをくぐると、すぎこだちのなかにさんどうがあり、) 山門をくぐると、杉木立の中に参道があり、 (さしこんでくるようこうにてらされてしんりょくがめにはえた。) 射し込んで来る陽光に照らされて新緑が目に映えた。 (じしょはひろい。さんどうはあまりながくなく、むこうにほんどうのやねはみえているが、) 地所は広い。参道はあまり長くなく、向こうに本堂の屋根は見えているが、 (そのしゅういにもていえんやいけがひろがっている。) その周囲にも庭園や池が広がっている。 (「しんしゅうのてらだよ」とししょうはいった。) 「真宗の寺だよ」と師匠は言った。 (え?とおもってききかえす。) え?と思って訊き返す。 (「しんしゅうで、しんれいしゃしんのたきあげくようですか」) 「真宗で、心霊写真の焚き上げ供養ですか」 (それはおかしい。) それはおかしい。 (ほかのしゅうはならいざしらず、じょうどしんしゅうはそのあたりてっていしているはずだ。) 他の宗派ならいざ知らず、浄土真宗はそのあたり徹底しているはずだ。 (こうでんのごれいぜんのもじをつかわせず、ごぶつぜんとすることにこだわっているくらいだ。) 香典の御霊前の文字を使わせず、御仏前とすることにこだわっているくらいだ。 (「お、さすがにてらにことはたしょうしってるな」とししょうはいやらしいえみをうかべた。) 「お、さすがに寺にことは多少知ってるな」と師匠は嫌らしい笑みを浮かべた。 (「そうだ。れいこんふせつってやつだ。) 「そうだ。霊魂不説ってやつだ。 (しゃくそんがれいこんとにくたいのどうことについてかたっていないのだから、) 釈尊が霊魂と肉体の同異について語っていないのだから、 (ほろびるにくたいと、ふめつのじっていたるれいこんなんていうにげんろんは、) 滅びる肉体と、不滅の実体たる霊魂なんていう二元論は、 (ほんらいありえないっていうかんがえだな。) 本来ありえないっていう考えだな。 (あくまでもすべてはむじしょうであり、くうだ。) あくまでもすべては無自性であり、空(くう)だ。 (とくにりんじゅうそくおうじょう、おうじょうそくじょうぶつのしんしゅうにおいては、) 特に臨終即往生、往生即成仏の真宗においては、 (とうぜんにんげんがしんだあとはすぐにほとけになるのだから、) 当然人間が死んだ後はすぐに仏になるのだから、 (れいなんてものになってよにまよってるひまはない」) 霊なんてものになって世に迷ってる暇はない」 (さんどうのこけむしたいしだたみのうえをあるきながら、) 山道の苔むした石畳の上を歩きながら、 (ししょうはみぎてをひろげてからだのまえでぐるりとかざした。) 師匠は右手を広げて身体の前でぐるりとかざした。 (「しかし、このにほんではしんぶつしゅうごうや、こらいよりのさんがくしんこう、) 「しかし、この日本では神仏習合や、古来よりの山岳信仰、 (それいすうはいなどとむすびつくことで、ぶっきょうのしそうもさまざまにわかれ、へんかする。) 祖霊崇拝などと結びつくことで、仏教の思想も様々に分かれ、変化する。 (しゅうはのなかでも、ぶんぱやいちじいん、) 宗派の中でも、分派や一寺院、 (あるいはそうりょいちこじんとしてれいのそんざいをみとめるばあいもある。) あるいは僧侶一個人として霊の存在を認める場合もある。 (だいたい、ぶっきょうどくとくのせつであるりんねてんせいってやつをかんがえたとき、) だいたい、仏教独特の説である輪廻転生ってやつを考えた時、 (てんせいするしゅたい、つまりふめつのじったいをそうていせざるをえないんだから、) 転生する主体、つまり不滅の実態を想定せざるを得ないんだから、 (それをぶっしょうととこうが、どうしたって・・・・・」) それを仏性と説こうが、どうしたって・・・・・」 (「わかってますよ」) 「分かってますよ」 (ながくなりそうだったので、さえぎった。) 長くなりそうだったので、遮った。
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