心霊写真 -55-

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師匠シリーズ
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(「やくざがきらいだろう」) 「ヤクザが嫌いだろう」 (たむらにはそういわれたのだったか。) 田村にはそう言われたのだったか。 (しかしししょうは、まつうらにむかってへいぜんとしていった。) しかし師匠は、松浦に向かって平然として言った。 (「このしゃしんにはひみつがある」) 「この写真には秘密がある」 (「なに?」) 「なに?」 (まつうらがまゆねをよせた。) 松浦が眉根を寄せた。 (「あんたにだけはなしたい」) 「あんたにだけ話したい」 (ししょうはまっこうからまつうらをみている。) 師匠は真っ向から松浦を見ている。 (「いらいのこともある」) 「依頼のこともある」 (そうつづけたししょうに、ようやくまつうらはうなずいた。) そう続けた師匠に、ようやく松浦は頷いた。 (「したでまて」) 「下で待て」 (おとこたちはそのしじをうけて、せいぜんとどあからさっていく。) 男たちはその指示を受けて、整然とドアから去って行く。 (あらかじめこころえていたようだった。) あらかじめ心得ていたようだった。 (ばけものとよばれたおとこも、まったくひょうじょうをかえず、どあのむこうへきえた。) 化け物と呼ばれた男も、全く表情を変えず、ドアの向こうへ消えた。 (「そちらは」) 「そちらは」 (まつうらはぼくをみた。) 松浦は僕を見た。 (いやだ。ぜったいにここにいる。) 嫌だ。絶対にここにいる。 (てこでもうごかないきだったが、ししょうが「けがにんだ。いいだろう?」というと、) テコでも動かない気だったが、師匠が「怪我人だ。いいだろう?」と言うと、 (ふ、とくうきがぬけるようなわらいをうかべ、まつうらはなにもいわずそふぁにこしかけた。) ふ、と空気が抜けるような笑いを浮かべ、松浦は何も言わずソファに腰掛けた。 (「あのはのぬけたちゃぱつのおとこはどうなった?」) 「あの歯の抜けた茶髪の男はどうなった?」
など
(ししょうがですくからいすをそふぁのほうへまわして、そうきいた。) 師匠がデスクから椅子をソファの方へ回して、そう訊いた。 (「あなたがたにはかんけいがない」) 「あなた方には関係がない」 (まつうらはそのことについてはなすきはない、というようにそっけなくいった。) 松浦はそのことについて話す気はない、というようにそっけなく言った。 (ぼくはそのようすから、ちゃぱつのどくぜんてきこうどうがまつうらのげきりんにふれたのではないかと) 僕はその様子から、茶髪の独善的行動が松浦の逆鱗に触れたのではないかと (そうぞうした。おそらくあたっているだろう。) 想像した。恐らく当たっているだろう。 (だとするならば、いまここにいないあのおとこが、なつおにやられたいじょうのじゅうしょうを、) だとするならば、今ここにいないあの男が、夏雄にやられた以上の重傷を、 (なかまからのせいさいによっておっているかのうせいさえあった。) 仲間からの制裁によって負っている可能性さえあった。 (「かんけいないのだったが、そいつのけがについてもふもんだな」) 「関係ないのだったが、そいつの怪我についても不問だな」 (ししょうはなつおのぼうこうについてふみこんだが、) 師匠は夏雄の暴行について踏み込んだが、 (まつうらはそれについてもそっけなかった。) 松浦はそれについてもそっけなかった。 (「かんけいがないといったはずです」) 「関係がないと言ったはずです」 (そうしてむねのうちぽけっとからくろかわのさいふをとりだして、) そうして胸の内ポケットから黒革の財布を取り出して、 (すうまいのいちまんえんさつをぼくにつきつけた。) 数枚の一万円札を僕に突きつけた。 (いっしゅんなんのことかわからなかったが、じぶんのほおにあてられたほうたいをてでさわり、) 一瞬なんのことかわからなかったが、自分の頬に当てられた包帯を手で触り、 (そういうことかときづく。) そういうことかと気づく。 (「やめろ」) 「やめろ」 (ししょうはつよいくちょうでいった。) 師匠は強い口調で言った。 (いわれなくてもうけとるきがどなかった。) 言われなくても受け取る気がどなかった。 (なにしろぼくはあのしんりょうしょでおかねをはらっていない。) なにしろ僕はあの診療所でお金を払っていない。 (どこにつけられたのかわからないが。) どこにツケられたのか分からないが。 (「きらわれたものだ」) 「嫌われたものだ」 (まつうらはひとりごちてさいふをしまう。) 松浦は一人ごちて財布を仕舞う。 (「では、きかせてもらいましょう」) 「では、聞かせてもらいましょう」 (ぎしり、とそふぁがきしんだ。) ギシリ、とソファがきしんだ。 (「まず、いらいのほうからだ」) 「まず、依頼の方からだ」 (ししょうはそういってから、つくえのうえにおいてあった) 師匠はそう言ってから、机の上に置いてあった (じぶんのりゅっくさっくをもってきて、なかからふうとうをとりだした。) 自分のリュックサックを持って来て、中から封筒を取り出した。 (それからぼくにめくばせをして、らいきゃくようのてーぶるをもってこさせる。) それから僕に目配せをして、来客用のテーブルを持って来させる。 (そふぁとつくえのあいだにおかれたてーぶるに、ごまいのしゃしんがならべられた。) ソファと机の間に置かれたテーブルに、五枚の写真が並べられた。 (いや、うちいちまいはそのふくしゃだ。) いや、うち一枚はその複写だ。 (あえてししょうは、げんぶつのほうではなく、ふくしゃのほうではなしをすすめた。) あえて師匠は、現物の方ではなく、複写の方で話を進めた。 (「そちらのいらいは、このよこはまにあるすなみけのべっていでとられた、) 「そちらの依頼は、この横浜にある角南家の別邸で撮られた、 (1938ねんか39ねんのしゃしんにうつっている、) 1938年か39年の写真に写っている、 (しんだはずのまさおかたいいのしょうたいをしらべろ、というものだった」) 死んだはずの正岡大尉の正体を調べろ、というものだった」 (「そうです」) 「そうです」 (「しんれいしゃしんなのか、それともほかのなにかなのか・・・・・」) 「心霊写真なのか、それとも他のなにかなのか・・・・・」 (ししょうはゆっくりとしゃしんのこぴーをゆびのはらでなでた。) 師匠はゆっくりと写真のコピーを指の腹で撫でた。 (「ここにうつっている、このまさおかたいいによくにたじんぶつは、いまげんざいもしんでいない」) 「ここに写っている、この正岡大尉に良く似た人物は、今現在も死んでいない」 (まつうらは、ほう、というかおをした。) 松浦は、ほう、という顔をした。
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