谷崎潤一郎 痴人の愛 30

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投稿者投稿者神楽@社長推しいいね0お気に入り登録
プレイ回数410難易度(4.5) 5078打 長文
谷崎潤一郎の中編小説です
私のお気に入りです
とうとう30まできてしまいました、、、
何処まで行ってしまうのでしょうか、、、。
順位 名前 スコア 称号 打鍵/秒 正誤率 時間(秒) 打鍵数 ミス 問題 日付
1 ヤス 6609 S+ 7.0 94.5% 722.4 5066 291 98 2024/05/05
2 なおきち 6326 S 6.4 97.7% 783.5 5074 117 98 2024/05/04
3 りっつ 4977 B 5.1 97.5% 980.6 5009 128 98 2024/04/21
4 やまちやまちゃん 4546 C++ 4.6 97.1% 1072.3 5021 146 98 2024/05/03
5 yosi 3262 D 3.4 96.1% 1493.2 5077 205 98 2024/03/25

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問題文

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(「どう?じょうじさん、このこうけいは?」)

「どう?譲治さん、この光景は?」

(「うん、・・・・・・・・・」)

「うん、・・・・・・・・・」

(「うんとはなによ」)

「うんとは何よ」

(「あきれたもんだね、まさにあざらしにちがいないね」)

「呆れたもんだね、まさに海豹に違いないね」

(「ええ、あざらしよ、いまあざらしがこおりのうえでやすんでるところよ。まえにさんびきねているのも、)

「ええ、海豹よ、今海豹が氷の上で休んでるところよ。前に三匹寝ているのも、

(これもおとこのあざらしよ」)

これも男の海豹よ」

(ひくくみつうんのとざすように、あたまのうえにたれさがっているもえぎのかや、)

低く密雲の閉ざすように、頭の上に垂れ下がっている萌黄の蚊帳、

(・・・・・・・・・よめにもくろく、ながながとといたかみのけのなかのしろいかお、)

・・・・・・・・・夜目にも黒く、長々と解いた髪の毛の中の白い顔、

(・・・・・・・・・しどけないがうんの、ところどころにあらわれているむねや、)

・・・・・・・・・しどけないガウンの、ところどころに露われている胸や、

(うでや、ふくれらっぱぎや、・・・・・・・・・このかっこうは、なおみがいつもこれでわたしを)

腕や、脹らッ脛や、・・・・・・・・・この恰好は、ナオミがいつもこれで私を

(ゆうわくするぽーずのひとつで、こういうすがたをみせられるとわたしはあたかもえさを)

誘惑するポーズの一つで、こう云う姿を見せられると私はあたかも餌を

(なげられたけもののようにさせられるのです。わたしはあきらかに、なおみがれいの)

投げられた獣のようにさせられるのです。私は明かに、ナオミが例の

(そそのかすようなひょうじょうをして、いじのわるいめでびしょうしながら、じっとこちらを)

そそのかすような表情をして、意地の悪い眼で微笑しながら、じっと此方を

(みおろしているのを、うすぐらいなかでかんじました。)

見おろしているのを、うす暗い中で感じました。

(「あきれたなんてうそなのよ。あたしにがうんをきられるとたまらないっていう)

「呆れたなんて嘘なのよ。あたしにガウンを着られるとたまらないッて云う

(くせに、こんやはみんながいるもんだからがまんしてるのよ。ねえ、じょうじさん、)

癖に、今夜はみんなが居るもんだから我慢してるのよ。ねえ、譲治さん、

(あたったでしょう」)

中ったでしょう」

(「ばかをいうなよ」)

「馬鹿を云うなよ」

(「うふふふふ、そんなにいばるなら、こうさんさせてやろうか」)

「うふふふふ、そんなに威張るなら、降参させてやろうか」

(「おい、おい、ちとおだやかでねえね、そういうはなしはあしたのばんにねがいてえね」)

「おい、おい、ちと穏やかでねえね、そう云う話は明日の晩に願いてえね」

など

(「さんせい!」)

「賛成!」

(と、はまだもくまがいのおについていって、)

と、浜田も熊谷の尾に附いて云って、

(「こんやはみんなこうへいにしてもらいたいなあ」)

「今夜はみんな公平にして貰いたいなア」

(「だからこうへいにしてるじゃないの。うらみっこがないように、はまさんのほうへは)

「だから公平にしてるじゃないの。恨みッこがないように、浜さんの方へは

(こっちのあしをだしているし、じょうじさんのほうへはこっちをだしてるし、」)

此方の足を出しているし、譲治さんの方へは此方を出してるし、」

(「そうしておれはどうなんだい?」)

「そうして己はどうなんだい?」

(「まあちゃんはいちばんとくをしてるわよ、いちばんあたしのそばにいて、こんなところへくびを)

「まアちゃんは一番得をしてるわよ、一番あたしの傍にいて、こんな所へ首を

(つきんだしているじゃないの」)

突ン出しているじゃないの」

(「おおいにこうえいのいたりだね」)

「大いに光栄の至りだね」

(「そうよ、あんたがいちばんゆうたいよ」)

「そうよ、あんたが一番優待よ」

(「だがおまえ、まさかそうしてひとばんじゅうおきてるわけじゃねえだろう。いったい)

「だがお前、まさかそうして一と晩じゅう起きてる訳じゃねえだろう。一体

(ねるときはどうなるんだい?」)

寝る時はどうなるんだい?」

(「さあ、どうしようか、どっちへあたまをむけようか。はまさんにしようか、)

「さあ、どうしようか、孰方へ頭を向けようか。浜さんにしようか、

(じょうじさんにしようか」)

譲治さんにしようか」

(「そんなあたまはどっちへむけたって、かくべつもんだいになりやしねえよ」)

「そんな頭は孰方へ向けたって、格別問題になりやしねえよ」

(「いや、そうでないよ、まあちゃんはまんなかだからいいが、)

「いや、そうでないよ、まアちゃんはまん中だからいいが、

(ぼくにとっちゃもんだいだよ」)

僕に取っちゃ問題だよ」

(「そう?はまさん、じゃ、はまさんのほうをあたまにしようか」)

「そう?浜さん、じゃ、浜さんの方を頭にしようか」

(「だからそいつがもんだいなんだよ、こちらへあたまをむけられてもしんぱいだし、)

「だからそいつが問題なんだよ、此方へ頭を向けられても心配だし、

(そうかといってかわいさんのほうへむけられても、やっぱりなんだか)

そうかと云って河合さんの方へ向けられても、やっぱり何だか

(きがもめるし、・・・・・・・・・」)

気が揉めるし、・・・・・・・・・」

(「それに、このおんなはねぞうがわるいぜ」)

「それに、この女は寝相が悪いぜ」

(と、くまがいがまたくちをはさんで、)

と、熊谷が又口を挟んで、

(「ようじんしないと、あしをむけられたほうのやつはよなかにけっとばされるかもしれんぜ」)

「用心しないと、足を向けられた方の奴は夜中に蹴ッ飛ばされるかも知れんぜ」

(「どうですかかわいさん、ほんとにねぞうがわるいですか」)

「どうですか河合さん、ほんとに寝相が悪いですか」

(「ええ、わるいですよ、それもひととおりじゃありませんよ」)

「ええ、悪いですよ、それも一と通りじゃありませんよ」

(「おい、はまだ」)

「おい、浜田」

(「ええ?」)

「ええ?」

(「ねぼけてあしのうらをなめたってね」)

「寝惚けて足の裏を舐めたってね」

(そういってくまがいがげらげらわらいました。)

そう云って熊谷がゲラゲラ笑いました。

(「あしをなめたっていいじゃないの。じょうじさんなんかしじゅうだわよ、かおよりあしのほうが)

「足を舐めたっていいじゃないの。譲治さんなんか始終だわよ、顔より足の方が

(かわいいくらいだっていうんだもの」)

可愛いくらいだって云うんだもの」

(「そいつあいっしゅのはいぶつきょうだね」)

「そいつあ一種の拝物教だね」

(「だってそうなのよ、ねえ、じょうじさん、そうじゃなかった?あなたはじつは)

「だってそうなのよ、ねえ、譲治さん、そうじゃなかった?あなたは実は

(あしのほうがすきなんだわね?」)

足の方が好きなんだわね?」

(それからなおみは、「こうへいにしなけりゃわるい」といって、わたしのほうへあしを)

それからナオミは、「公平にしなけりゃ悪い」と云って、私の方へ足を

(むけたり、はまだのほうへむけかえたり、ごふんおきぐらいに、なんどもなんどもふとんの)

向けたり、浜田の方へ向け変えたり、五分おきぐらいに、何度も何度も布団の

(うえをあっちこっちへねそべりました。)

上を彼方此方へ寝そべりました。

(「さあ、こんどははまさんがあしのばん!」)

「さあ、今度は浜さんが足の番!」

(といって、ねながらからだをぶんまわしのようにぐるぐるまわしたり、まわすひょうしにりょうあしを)

と云って、寝ながら体をぶん廻しのようにぐるぐる廻したり、廻す拍子に両脚を

(あげてかやのてんじょうをけっとばしたり、むこうのはしからこちらのはしへぽんとまくらを)

上げて蚊帳の天井を蹴っ飛ばしたり、向うの端から此方の端へぽんと枕を

(なげつけたりする。そのあざらしのかつやくぶりがはげしいので、それでなくてもふとんの)

投げつけたりする。その海豹の活躍ぶりが激しいので、それでなくても布団の

(はんぶんはみだしているかやのすそがぱっぱっとめくれて、かがいくひきもまいこんで)

半分はみ出している蚊帳の裾がぱっぱっとめくれて、蚊が幾匹も舞い込んで

(くる。「こいつあいけねえ、たいへんなかだ」と、くまがいがむっくりおきあがって、)

来る。「此奴あいけねえ、大変な蚊だ」と、熊谷がムックリ起き上って、

(かたいじをはじめる。だれかがかやをふんづけて、つりてをきっておとしてしまう。)

蚊退治を始める。誰かが蚊帳を蹈んづけて、釣り手を切って落してしまう。

(そのおちたなかでなおみがいっそうばたばたとあばれる。つりてをつくろって、かやを)

その落ちた中でナオミが一層ばたばたと暴れる。釣り手を繕って、蚊帳を

(つりなおすのにまたながいことじかんがかかる。そんなさわぎで、やっといくらか)

釣り直すのに又長いこと時間がかかる。そんな騒ぎで、やっといくらか

(おちついたようなきがしたのは、ひがしのほうがあかるみかけたじぶんでした。)

落ち着いたような気がしたのは、東の方が明るみかけた時分でした。

(あめのおと、かぜのひびき、となりにねているくまがいのいびき、・・・・・・・・・わたしはそれが)

雨の音、風の響き、隣りに寝ている熊谷の鼾、・・・・・・・・・私はそれが

(みみについて、ついとろとろしたかとおもうと、ややともすればめがさめました。)

耳について、ついとろとろしたかと思うと、ややともすれば眼がさめました。

(いったいこのへやはふたりでねてさえせまくるしいうえに、なおみのはだやきものに)

一体この部屋は二人で寝てさえ狭苦しい上に、ナオミの肌や着物に

(こびりついているあまいこうとあせのにおいとが、はっこうしたようにこもっている。そこへ)

こびりついている甘い香と汗の匂いとが、醗酵したように籠っている。そこへ

(こんやはだいのおとこがふたりもよけいふえたのですから、なおさらたまらないひといきれがして、)

今夜は大の男が二人も余計殖えたのですから、尚更たまらない人いきれがして、

(みっぺいされたかべのなかは、なんだかじしんでもありそうな、いきのつまるような)

密閉された壁の中は、何だか地震でもありそうな、息の詰まるような

(むしあつさでした。ときどきくまがいがねがえりをうつと、べっとりあせばんだてだの)

蒸し暑さでした。ときどき熊谷が寝返りを打つと、べっとり汗ばんだ手だの

(ひざだのがたがいにぬるぬるとさわりました。なおみはとみると、まくらはわたしのほうに)

膝だのが互にぬるぬると触りました。ナオミはと見ると、枕は私の方に

(ありながら、そのまくらへかたあしをのせ、いっぽうのひざをたてて、そのあしのこうをわたしのふとんの)

ありながら、その枕へ片足を載せ、一方の膝を立てて、その足の甲を私の布団の

(したへつっこみ、くびをはまだのほうへかしげて、りょうてはいっぱいにひらいたまま、さすがの)

下へ突っ込み、首を浜田の方へかしげて、両手は一杯にひらいたまま、さすがの

(おてんばもくたびれたものか、よいこころもちそうにねむっています。)

お転婆もくたびれたものか、好い心持そうに眠っています。

(「なおみちゃん・・・・・・・・・」)

「ナオミちゃん・・・・・・・・・」

(と、わたしはみんなのしずかなねいきをうかがいながら、くちのうちでそういって、わたしの)

と、私はみんなの静かな寝息をうかがいながら、口のうちでそう云って、私の

(ふとんのしたにあるかのじょのあしをなでてみました。ああこのあし、このすやすやと)

布団の下にある彼女の足を撫でてみました。ああこの足、このすやすやと

(ねむっているまっしろなうつくしいあし、これはたしかにおれのものだ、おれはこのあしを、かのじょが)

眠っている真っ白な美しい足、これはたしかに己の物だ、己はこの足を、彼女が

(こむすめのじぶんから、まいばんまいばんおゆへいれてしゃぼんであらってやったのだ、そして)

小娘の時分から、毎晩々々お湯へ入れてシャボンで洗ってやったのだ、そして

(まあこのひふのやわらかさは、じゅうごのとしからかのじょのからだは、ずんずんのびて)

まあこの皮膚の柔かさは、十五の歳から彼女の体は、ずんずん伸びて

(いったけれど、このあしだけはまるではったつしないかのようにいぜんとしてちいさく)

行ったけれど、この足だけはまるで発達しないかのように依然として小さく

(かわいい。そうだ、このおやゆびもあのときのとおりだ。こゆびのかたちも、かかとのまるみも、)

可愛い。そうだ、この拇趾もあの時の通りだ。小趾の形も、踵の円味も、

(ふくれたこうのにくのもりあがりも、すべてあのときのとおりじゃないか。・・・・・・・)

ふくれた甲の肉の盛り上りも、総べてあの時の通りじゃないか。・・・・・・・

(わたしはおぼえず、そのあしのこうへそうっとじぶんのくちびるをつけずにはいられませんでした。)

私は覚えず、その足の甲へそうッと自分の唇をつけずにはいられませんでした。

(よがあけてから、わたしはふたたびうとうとしたようでしたが、やがてどっという)

夜が明けてから、私は再びうとうとしたようでしたが、やがてどっと云う

(わらいごえにめがさめてみると、なおみがわたしのはなのあなへかんじよりを)

笑い声に眼がさめて見ると、ナオミが私の鼻の孔へかんじよりを

(つっこんでいました。)

突っ込んでいました。

(「どうした?じょうじさん、めがさめた?」)

「どうした?譲治さん、眼がさめた?」

(「ああ、もうなんじだね」)

「ああ、もう何時だね」

(「もうじゅうじはんよ、だけどおきたってしようがないからどんがなるまで)

「もう十時半よ、だけど起きたって仕様がないからどんが鳴るまで

(ねていようじゃないの」)

寝ていようじゃないの」

(あめがやんで、にちようびのそらはあおあおとはれていましたが、へやのなかにはまだ)

雨が止んで、日曜日の空は青々と晴れていましたが、部屋の中にはまだ

(ひといきれがのこっていました。)

人いきれが残っていました。

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