宮沢賢治 ざしき童子のはなし

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1 berry 7875 8.0 98.4% 440.1 3522 56 73 2024/04/28
2 HAKU 7369 7.5 97.2% 468.4 3553 101 73 2024/04/27
3 れおこた 2612 E 2.8 91.8% 1231.5 3529 312 73 2024/04/28

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問題文

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(ぼくらのほうの、ざしきぼっこのはなしです。 )

ぼくらの方の、ざしき童子のはなしです。

(あかるいひるま、みんながやまへはたらきにでて、こどもがふたり、)

あかるいひるま、みんなが山へはたらきに出て、こどもがふたり、

(にわであそんでおりました。おおきないえにはだれもおりませんでしたから、)

庭であそんでおりました。大きな家にはだれもおりませんでしたから、

(そこらはしんとしています。)

そこらはしんとしています。

(ところがいえの、どこかのざしきで、ざわっざわっとほうきのおとがしたのです。)

ところが家の、どこかのざしきで、ざわっざわっと箒の音がしたのです。

(ふたりのこどもは、おたがいかたにしっかりとてをくみあって、)

ふたりのこどもは、おたがい肩にしっかりと手を組みあって、

(こっそりいってみましたが、どのざしきにもたれもいず、)

こっそり行ってみましたが、どのざしきにもたれもいず、

(かたなのはこもひっそりとして、かきねのひのきが、いよいよあおくみえるきり、)

刀の箱もひっそりとして、かきねの檜が、いよいよ青く見えるきり、

(たれもどこにもいませんでした。)

たれもどこにもいませんでした。

(ざわっざわっとほうきのおとがきこえます。)

ざわっざわっと箒の音がきこえます。

(とおくのもずのこえなのか、きたかみがわのせのおとか、どこかでまめをみにかけるのか、)

とおくの百舌の声なのか、北上川の瀬の音か、どこかで豆を箕にかけるのか、

(ふたりでいろいろかんがえながら、だまってきいてみましたが、)

ふたりでいろいろ考えながら、だまって聴いてみましたが、

(やっぱりどれでもないようでした。)

やっぱりどれでもないようでした。

(たしかにどこかで、ざわっざわっとほうきのおとがきこえたのです。)

たしかにどこかで、ざわっざわっと箒の音がきこえたのです。

(もいちどこっそり、ざしきをのぞいてみましたが、どのざしきにもたれもいず、)

も一どこっそり、ざしきをのぞいてみましたが、どのざしきにもたれもいず、

(ただおひさまのひかりばかりそこらいちめん、あかるくふっておりました。)

ただお日さまの光ばかりそこらいちめん、あかるく降っておりました。

(こんなのがざしきぼっこです。 )

こんなのがざしき童子です。

(「だいどうめぐり、だいどうめぐり」)

「大道めぐり、大道めぐり」

(いっしょうけんめい、こうさけびながら、ちょうどじゅうにんのこどもらが、)

一生けん命、こう叫びながら、ちょうど十人の子供らが、

(りょうてをつないでまるくなり、ぐるぐるぐるぐるざしきのなかをまわっていました。)

両手をつないでまるくなり、ぐるぐるぐるぐる座敷のなかをまわっていました。

など

(どのこもみんな、そのうちのおふるまいによばれてきたのです。)

どの子もみんな、そのうちのお振舞によばれて来たのです。

(ぐるぐるぐるぐる、まわってあそんでおりました。)

ぐるぐるぐるぐる、まわってあそんでおりました。

(そしたらいつか、じゅういちにんになりました。)

そしたらいつか、十一人になりました。

(ひとりもしらないかおがなく、ひとりもおんなじかおがなく、)

ひとりもしらない顔がなく、ひとりもおんなじ顔がなく、

(それでもやっぱり、どうかぞえてもじゅういちにんだけおりました。)

それでもやっぱり、どう数えても十一人だけおりました。

(そのふえたひとりがざしきぼっこなのだぞと、おとながでてきていいました。)

そのふえた一人がざしきぼっこなのだぞと、大人が出て来て言いました。

(けれどもたれがふえたのか、とにかくみんな、じぶんだけは、)

けれどもたれがふえたのか、とにかくみんな、自分だけは、

(どうしてもざしきぼっこでないと、いっしょうけんめいめをはって、)

どうしてもざしきぼっこでないと、一生けん命眼を張って、

(きちんとすわっておりました。)

きちんとすわっておりました。

(こんなのがざしきぼっこです。 )

こんなのがざしきぼっこです。

(それからまたこういうのです。)

それからまたこういうのです。

(あるおおきなほんけでは、いつもきゅうのはちがつのはじめに、)

ある大きな本家では、いつも旧の八月のはじめに、

(にょらいさまのおまつりでぶんけのこどもらをよぶのでしたが、あるとしそのひとりのこが、)

如来さまのおまつりで分家の子供らをよぶのでしたが、ある年その一人の子が、

(はしかにかかってやすんでいました。)

はしかにかかってやすんでいました。

(「にょらいさんのまつりへいきたい。にょらいさんのまつりへいきたい」と、)

「如来さんの祭りへ行きたい。如来さんの祭りへ行きたい」と、

(そのこはねていて、まいにちまいにちいいました。)

その子は寝ていて、毎日毎日言いました。

(「まつりのばすからはやくよくなれ」ほんけのおばあさんがみまいにいって、)

「祭り延ばすから早くよくなれ」本家のおばあさんが見舞いに行って、

(そのこのあたまをなでていいました。)

その子の頭をなでて言いました。

(そのこはくがつによくなりました。)

その子は九月によくなりました。

(そこでみんなはよばれました。ところがほかのこどもらは、)

そこでみんなはよばれました。ところがほかの子供らは、

(いままでまつりをのばされたり、なまりのうさぎをみまいにとられたりしたので、)

いままで祭りを延ばされたり、鉛の兎を見舞いにとられたりしたので、

(なんともおもしろくなくてたまりませんでした。)

なんともおもしろくなくてたまりませんでした。

(「あいつのためにひどいめにあった。もうきょうはきても、)

「あいつのためにひどいめにあった。もう今日は来ても、

(どうしたってあそんでやらないぞ」とやくそくしました。)

どうしたってあそんでやらないぞ」と約束しました。

(「おお、きたぞ、きたぞ」みんながざしきであそんでいたときに、)

「おお、来たぞ、来たぞ」みんながざしきであそんでいたときに、

(にわかにひとりがさけびました。)

にわかに一人が叫びました。

(「ようし、かくれろ」みんなはつぎの、ちいさなざしきへかけこみました。)

「ようし、かくれろ」みんなは次の、小さなざしきへかけ込みました。

(そしたらどうです。そのざしきのまんなかに、いまやっときたばっかりのはずの、)

そしたらどうです。そのざしきのまん中に、今やっと来たばっかりのはずの、

(あのはしかをやんだこが、まるっきりやせてあおざめて、)

あのはしかをやんだ子が、まるっきりやせて青ざめて、

(なきだしそうなかおをして、あたらしいくまのおもちゃをもって、)

泣きだしそうな顔をして、新しい熊のおもちゃを持って、

(きちんとすわっていたのです。)

きちんとすわっていたのです。

(「ざしきぼっこだ」ひとりがさけんでにげだしました。)

「ざしきぼっこだ」一人が叫んでにげだしました。

(みんなもわあっとにげました。ざしきぼっこはなきました。)

みんなもわあっとにげました。ざしきぼっこは泣きました。

(こんなのがざしきぼっこです。 )

こんなのがざしきぼっこです。

(また、きたかみがわのろうみょうじのふちのわたしもりが、あるひわたしにいいました。)

また、北上川の朗妙寺の淵の渡し守が、ある日わたしに言いました。

(「きゅうれきはちがつじゅうしちにちのばん、おらはさけのんではやくねた。)

「旧暦八月十七日の晩、おらは酒のんで早く寝た。

(おおい、おおいとむこうでよんだ。おきてこやからでてみたら、)

おおい、おおいと向こうで呼んだ。起きて小屋から出てみたら、

(おつきさまはちょうどそらのてっぺんだ。おらはいそいでふねだして、)

お月さまはちょうどそらのてっぺんだ。おらは急いで舟だして、

(むこうのきしにいってみたらば、もんつきをきてかたなをさし、)

向こうの岸に行ってみたらば、紋付を着て刀をさし、

(はかまをはいたきれいなこどもだ。たったひとりで、しろおのぞうりもはいていた。)

袴をはいたきれいな子供だ。たった一人で、白緒のぞうりもはいていた。

(わたるかといったら、たのむといった。こどもはのった。)

渡るかと言ったら、たのむと言った。子どもは乗った。

(ふねがまんなかごろにきたとき、おらはみないふりしてよくこどもをみた。)

舟がまん中ごろに来たとき、おらは見ないふりしてよく子供を見た。

(きちんとひざにてをおいて、そらをみながらすわっていた。)

きちんと膝に手を置いて、そらを見ながらすわっていた。

(おまえさんいまからどこへいく、どこからきたってきいたらば、)

お前さん今からどこへ行く、どこから来たってきいたらば、

(こどもはかあいいこえでこたえた。そこのささだのうちにずいぶんながくいたけれど、)

子供はかあいい声で答えた。そこの笹田のうちにずいぶんながくいたけれど、

(もうあきたからほかへいくよ。なぜあきたねってきいたらば、)

もうあきたから他へ行くよ。なぜあきたねってきいたらば、

(こどもはだまってわらっていた。どこへいくねってまたきいたらば、)

子供はだまってわらっていた。どこへ行くねってまたきいたらば、

(さらきのさいとうへいくよといった。きしについたらもうこどもはいず、)

更木の斎藤へ行くよと言った。岸についたらもう子供はいず、

(おらはこやのいりぐちにこしかけていた。ゆめだかなんだかわからない。)

おらは小屋の入口にこしかけていた。夢だかなんだかわからない。

(けれどもきっとほんとうだ。それからささだがおちぶれて、)

けれどもきっと本当だ。それから笹田がおちぶれて、

(さらきのさいとうではびょうきもすっかりなおったし、むすこもだいがくをおわったし、)

更木の斎藤では病気もすっかり直ったし、むすこも大学を終わったし、

(めきめきりっぱになったから」)

めきめき立派になったから」

(こんなのがざしきぼっこです。)

こんなのがざしき童子です。

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