忍びのすゝめ

(どれだけあゆめどもみちはなく)

どれだけ歩めども　道はなく

(さまようはせんりさき)

彷徨うは千里先

(それがひとのよだとわらうきみだったんだ)

それが人の世だと　笑う君だったんだ

(されどちりゆくさだめ)

然れど散りゆく定め

(このいっせをたとえるなら)

この一世を例えるなら

(やまずしきるやらずのあめ)

止まず　頻る　遣らずの雨

(きえるやちょうにゆめはなび)

消える夜鳥に夢花火

(みなもにうつるつきをもとめて)

水面に映る月を求めて

(くやむことはもうやめた)

悔やむことは　もうやめた

(しのびしのべこころかくしておどりおどるせかいをまわせ)

忍び偲べ　心隠して　踊り踊る世界を回せ

(かがみごしにかくしていたぼくがなきじゃくっているまに)

鏡越しに隠していた　ボクが泣きじゃくっている間に

(さきみえぬよるにまぎれましょうさとられぬようくちをつぐみましょう)

先見えぬ夜に紛れましょう　悟られぬよう口を噤みましょう

(さいあいもれんじょうもほうゆうもゆうじょうもてにかけるかくごはあるか)

最愛も　恋情も　朋友も　友情も　手に掛ける覚悟はあるか？

(くらがりのむこうにひそむにんじゃになって)

暗がりの向こうに潜む忍者になって

(あのひのゆめまできりすてのめんざいふ)

あの日の夢まで　切り捨ての免罪符

(たそがれどきまではみをかくして)

誰そ彼時までは身を隠して

(そのかげにきょうをおく)

その陰に今日を置く

(にせもちぎれぬままさまよえるぼくは)

二世も契れぬまま　彷徨えるボクは

(ひどくみにくいてのめ)

ひどく醜い『手の目』

(あだばなのそのすがたにこころひかれても)

徒花のその姿に　心惹かれても

(うつしよだっておぼろづき)

現世だって朧月

(なにもかもをとざしたやさきに)

何もかもを閉ざした矢先に

(きみにこいするというむくい)

君に恋するという報い

(かたこいのいくさきをしりたいそのておいのこころをすくいたい)

片恋の行く先を知りたい　その手負いの心を救いたい

(かえりちのしょうぞくじゃなにをのぞもうとねうちない)

返り血の装束じゃ　何を望もうと値打ちない

(かきちがえたしあわせのゆくえよみちがえたていたらくがゆえん)

書き違えた「辛せ」の行方　読み違えた為体が所以

(しょうがいはこっけいなゆうしゅうのしょうめいか)

生涯は滑稽な　憂愁の証明か

(まだじゅうじかをしょいこんで)

未だ十字架を背負いこんで

(うのまねをしていちゃそれがせんりょのいっしつ)

鵜の真似をしていちゃ　それが千慮の一失

(かくごもないならおかえりになってちょうだい)

覚悟もないなら　御帰りになって頂戴

(いつかものごころですてたこころね)

いつか物心で捨てた心根

(わかりあえるなんてゆめのまたゆめ)

わかり合えるなんて夢のまた夢

(やぶれはてたとものむくろに)

破れ果てた友の骸に

(きょうもたっている)

今日も立っている

(おわかれです)

――――お別れです。

(しのびしのべこころかくしておどりおどるせかいをまわせ)

忍び偲べ　心隠して　踊り踊る世界を回せ

(かがみごしになみだしたきみはだれだっけぼくはだれ)

鏡越しに涙した君は誰だっけ　ボクは誰？

(からになったこころならすてたんだやさしくしないでよ)

空になった心なら捨てたんだ　優しくしないでよ

(このちいさなふくめんもぬりかためたつよがりもはがれおちてないてしまう)

この小さな覆面も　塗り固めた強がりも　剥がれ落ちて泣いてしまう

(くらがりのむこうにひそむにんじゃになって)

暗がりの向こうに潜む忍者になって

(あのひのゆめまできりすてのめんざいふ)

あの日の夢まで　切り捨ての免罪符