クロックワーカー‐追想のオルゴール‐

(ぼくのつくったおるごーるはほかのだれのものよりも)

僕の作ったオルゴールは　他の誰のものよりも

(きれいなおとをならしていた)

綺麗な音を　鳴らしていた

(ひとびとはぼくのことをそんけいのねんをこめて)

人々は僕の事を　尊敬の念を込めて

(くろっくわーかーとよんだ)

「クロックワーカー」と　呼んだ

(あいするこんやくしゃとだいじないもうと)

愛する婚約者と　大事な妹

(ふたりがいつもそばにいた)

二人がいつも　そばにいた

(じぶんはせかいいちのしあわせものだとぼくはかみにかんしゃした)

「自分は世界一の幸せ者だ」と　僕は神に感謝した

(ふたりのためにつくろうさいじょうのあいをこめて)

二人の為に作ろう　最上の愛を込めて

(とびきりじょうとうなぼくのおるごーる)

とびきり上等な僕の　オルゴール

(さんにんがあゆむだろうみらいにさちおおかれと)

三人が歩むだろう　未来に幸多かれと

(ぜんまいにそんなおもいをつめこんだ)

ぜんまいにそんな想いを　詰め込んだ

(いまはもうなることのないおるごーる)

今はもう鳴る事のない　オルゴール

(このくにではよりつよいまじゅつをもつものがじょおうとなって)

この国ではより強い魔術を　持つ者が女王となって

(すべてをえるときめられた)

全てを得ると　決められた

(あらたなしはいしゃこうほとしてえらばれてしまった)

新たな支配者候補として　選ばれてしまった

(こんやくしゃといもうと)

婚約者と　妹

(はぐるまがくるいはじめたにくしみあうふたり)

歯車が狂い始めた　憎しみ合う二人

(まじゅつなどそんざいしなければ)

魔術など存在しなければ

(さいあくのけつまつぼくがみたものは)

最悪の結末　僕が見たものは

(ちにそまったおるごーる)

血に染まった　オルゴール

(きんいろのぜんまいがゆがんだおるごーる)

金色のぜんまいが　歪んだオルゴール

(ならないめろでぃはきみへのあいのうた)

鳴らないメロディは君への　愛の唄

(たおれているおんなとなきさけぶおんな)

倒れている女と　泣き叫ぶ女

(どちらもあいしていたのにあいしてたのに)

どちらも愛していたのに　愛してたのに

(いまはもうなることのないおるごーる)

今はもう鳴る事のない　オルゴール

(かつてくにがあったばしょいまははいきょ)

かつて国があった場所　今は廃墟

(しょうきをうしなったろうじんなにかをつくる)

正気を失った老人　何かを作る

(なにをつくっているのかとたびびとがたずねた)

「何を作っているのか」と　旅人が尋ねた

(ろうじんはこたえるおるごーるだと)

老人は答える　「オルゴールだ」と

(だけどそれはただのがらくたにしかみえない)

だけどそれはただのガラクタにしか見えない

(うすよごれたくろいはこだった)

薄汚れた黒い箱だった