かなしいうれしい
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問題文
(あるところに、きちよむさんというおとこのひとがいました。)
ある所に、吉よむさんという男の人がいました。
(あるとしのおしょうがつ、きちよむさんはきんじょのひとたちといっしょに、)
ある年のお正月、吉よむさんは近所の人たちといっしょに、
(やまへきをきりにいきました。)
山へ木を切りに行きました。
(ここのやまには、しいのきがたくさんありました。)
ここの山には、しいの木がたくさんありました。
(そこで、みんなはいっしょうけんめいに、しいのきをきりました、)
そこで、みんなは一生懸命に、しいの木を切りました、
(ところが、きちよむさんは、やまへきたのに、ぜんぜんきをきろうとしません。)
ところが、吉よむさんは、山へ来たのに、全然木を切ろうとしません。
(かまをなげだして、たばこをすったり、ねころがってそらをみたりしていました。)
鎌を投げ出して、たばこを吸ったり、寝転がって空を見たりしていました。
(そのうち、ほかのひとたちはしいのきをきって、それをたばねました。)
そのうち、他の人たちはしいの木を切って、それを束ねました。
(そして、「きちよむさん、かえろうか」とこえをかけました。)
そして、「吉よむさん、帰ろうか」と声をかけました。
(すると、きちよむさんは、)
すると、吉よむさんは、
(「おまえたち、そんなしいのきをもってかえるつもりか」と、)
「お前たち、そんなしいの木を持って帰るつもりか」と、
(あきれたかおでいいました。)
呆れた顔で言いました。
(「なんで、そんなことをきくのか」きんじょのひとたちは、)
「なんで、そんなことを聞くのか」近所の人たちは、
(きちよむさんのしつもんをへんだとおもってたずねました。きちよむさんは、)
吉よむさんの質問を変だと思って尋ねました。吉よむさんは、
(「しいのきは、かな「しい」といって、とってもえんぎがわるいものだぞ。)
「しいの木は、かな『しい』といって、とっても縁起が悪いものだぞ。
(それに、いまはしょうがつだ。)
それに、今は正月だ。
(しいのきをもってかえるのは、よくない」といいました。)
しいの木を持って帰るのは、よくない」と言いました。
(「そりゃあ、いやなきだな」むらのひとたちは、)
「そりゃあ、いやな木だな」村の人たちは、
(いっしょうけんめいにきってたばねたしいのきを、かたからおろして、)
一生懸命に切って束ねたしいの木を、肩からおろして、
(べつのきをきりはじめました。)
別の木を切り始めました。
(すると、きちよむさんは、みんながすてたしいのきをひろいあつめて、)
すると、吉よむさんは、みんなが捨てたしいの木を拾い集めて、
(ひとりでもってかえろうとしました。)
一人で持って帰ろうとしました。
(きんじょのひとたちはびっくりして、)
近所の人たちはびっくりして、
(「こら!きちよむさん。おまえ、いま、しいは「かなしい」といって、)
「こら!吉よむさん。お前、今、しいは『かなしい』と言って、
(たいへんえんぎがわるい、もってかえらないほうがいい、)
たいへん縁起が悪い、持って帰らないほうがいい、
(といったじゃないかと、とがめました。)
と言ったじゃないかと、とがめました。
(「いいや、このしいのきは、ちょっとちがうぞ。)
「いいや、このしいの木は、ちょっと違うぞ。
(これは、うれ「しい」といって、たいへんいいものだ。)
これは、うれ『しい』と言って、たいへんいいものだ。
(それにいまはしょうがつだ。とてもえんぎがいいんだ」)
それに今は正月だ。とても縁起がいいんだ」
(ときちよむさんはへいきなかおをして、かえってしまいました。)
と吉よむさんは平気な顔をして、帰ってしまいました。