たぬきの巣
問題文
(けんさくは、あずまむらでいちばんかしこいひとでした。)
権作は、東村で一番賢い人でした。
(きすけは、にしむらでいちばんあたまがいいひとでした。)
喜助は、西村で一番頭がいい人でした。
(あるひ、このふたりがみちでばったりであいました。)
ある日、この二人が道でばったり出会いました。
(「こんにちは」)
「こんにちは」
(「こんにちは。きょうはほんとうにいいおてんきですね」)
「こんにちは。今日は本当にいいお天気ですね」
(ふたりは、あいさつました。)
二人は、あいさつました。
(「ところで、けんさくさん」と、きすけがいいました。)
「ところで、権作さん」と、喜助が言いました。
(「きょう、うちにたのなかにすんでいるたぬきのあたまのうえに、)
「今日、うちに田の中に住んでいる狸の頭の上に、
(からすがすをつくっていましたよ」)
からすが巣を作っていましたよ」
(「やあ、きすけさん。いくらわたしがあたまがわるくても、)
「 やあ、喜助さん。いくら私が頭が悪くても、
(そんなばからしいはなしをしんじるほど、あたまがわるくはないですよ」)
そんなばからしい話を信じるほど、頭が悪くはないですよ」
(「それなら、もしこのはなしがほんとうだったら、どうしますか」)
「それなら、もしこの話が本当だったら、どうしますか」
(「もしほんとうだったら、うちのこうまを8ひき、あなたにあげましょう」)
「もし本当だったら、うちの子馬を8匹、あなたにあげましょう」
(そこで、ふたりはきすけのたんぼへいきました。)
そこで、二人は喜助の田んぼへ行きました。
(たんぼのなかにはいきがいちぼんはえていて、そのてっぺんに、)
田んぼの中には木がいち本生えていて、そのてっぺんに、
(からすがすをつくっていました。)
からすが巣を作っていました。
(けんさくはそれをみて、「きすけさん、たぬきはどこですか」と、ききました。)
権作はそれを見て、「喜助さん、狸はどこですか」と、聞きました。
(「ほら、そこに。たのきのあたまで、からすがすをつくっているでしょう。)
「ほら、そこに。田の木のあたまで、からすが巣を作っているでしょう。
(どうです。さあさあ。こうまを8ひき、もらいましょう」)
どうです。さあさあ。子馬を8匹、もらいましょう」
(すると、)
すると、
(けんさくは「ここにはいないから、うちへきてください」といいました。)
権作は「ここにはいないから、うちへ来てください」と言いました。
(けんさくはきすけを。)
権作は喜助を。
(じぶんのいえへつれていきました。)
自分の家へ連れて行きました。
(そして、いえにうら、やくにたたない、)
そして、家に裏、役に立たない、
(ひょろひょろのやせたうまをはってきました。)
ひょろひょろの痩せた馬を張って来ました。
(「はい、こうまはちひきです、うけとりなさい」)
「はい、子馬はちひきです、受け取りなさい」
(「うそだ。これはただのいっぴきだ」)
「うそだ。これはただのいっぴきだ」
(「いや、しっぽをみてごらん。はちをひいてるでしょう。)
「いや、しっぽを見てごらん。はちを引いてるでしょう。
(だからこうまはちひきだ」)
だから子馬はちひきだ」
(よくみると、なるほど、やせうまのしっぽには、)
よく見ると、なるほど、痩せ馬のしっぽには、
(からのうえきばちがひもでむすびつてあって、うまがこれをひきずっていました。)
からの植木ばちが紐で結びつてあって、馬がこれを引きずっていました。
(きすけは、あきらめて、たづなをうけとり、)
喜助は、あきらめて、手綱を受け取り、
(「こんなやせうま、やくにたたないし、えさをやらなきゃいけない」と、)
「こんな痩せ馬、役に立たないし、餌をやらなきゃいけない」と、
(くやしそうにいいながら、かえりました。)
悔しそうに言いながら、帰りました。