吾亦紅／すぎもとまさと

(まっちをすればおろしがふいて)

マッチを擦れば　おろしが吹いて

(せんこうがやけにつきにくい)

線香が　やけに　つきにくい

(さらさらゆれるわれもこう)

さらさら揺れる　吾亦紅

(ふとあなたのといきのようで)

ふと　あなたの　吐息のようで

(ぼんのやすみにかえれなかった)

盆の休みに　帰れなかった

(おれのずさんさなげいているか)

俺の杜撰さ　嘆いているか

(あなたにあなたにあやまりたくて)

あなたに　あなたに　謝りたくて

(しごとになをかりたごぶさた)

仕事に名を借りた　ご無沙汰

(あなたにあなたにあやまりたくて)

あなたに　あなたに　謝りたくて

(やますそのあきひとりあいにきた)

山裾の秋　ひとり　会いに来た

(ただあなたにあやまりたくて)

ただ　あなたに　謝りたくて

(ちいさなまちにとついでいきて)

小さな町に　嫁いで　生きて

(ここしかしらないひとだった)

ここしか知らない　人だった

(それでもははをいききった)

それでも　母を　生き切った

(おれあなたがうらやましいよ)

俺　あなたが　羨ましいよ

(いまはいとこがすんでるうちに)

今は　いとこが住んでる　家に

(むかしみたいにあかりがともる)

昔みたいに　明かりが灯る

(あなたはあなたはかぞくもとおく)

あなたは　あなたは　家族も遠く

(きづよくさみしさをこらえた)

気強く　寂しさを堪えた

(あなたのあなたのみせないきずが)

あなたの　あなたの見せない傷が

(みにしみてゆくやっとてがとどく)

身に染みてゆく　やっと手が届く

(ばかやろうとなじってくれよ)

馬鹿野郎と　なじってくれよ

(おやのことなどきづかうひまに)

親のことなど　気遣う暇に

(あとではじないじぶんをいきろ)

後で恥じない　自分を生きろ

(あなたのあなたのかたみのことば)

あなたの　あなたの　形見の言葉

(まもれたためしさえないけど)

守れた試しさえ　無いけど

(あなたにあなたにいばってみたい)

あなたに　あなたに　威張ってみたい

(らいげつでおれりこんするんだよ)

来月で俺　離婚するんだよ

(そうはじめてじぶんをいきる)

そう　初めて　自分を生きる

(あなたにあなたにみていてほしい)

あなたに　あなたに　見ていてほしい

(かみにしらががまじりはじめても)

髪に白髪が　混じり始めても

(おれしぬまであなたのこども)

俺　死ぬまで　あなたの子供