野良犬疾走日和

(りょうめひらくあさもやとあたりひびくたいようのおと)

両目ひらく朝靄と　辺り響く太陽の音

(ただかけろとささやくときはのらいぬのあしとつちぼこり)

ただ駈けろと囁く時は　野良犬の足と土埃

(ふきぬけるはみなみかぜみみかすめるのはだれのこえ)

吹き抜けるは南風　耳掠めるのは誰の声

(うたがいなどなくひたはしるときどきはなにかおいかけながら)

疑いなどなくひた走る　時々は何か追いかけながら

(ひとみうつりただながれさってゆくひゃくせんのまちなみは)

瞳映り　ただ流れ去ってゆく百千の街並みは

(ずっととおくうまれるまえにゆめでみたせかいににている)

ずっと遠く生まれる前に　夢で見た世界に似ている。

(かけてかけてのぞみはただむねのなか)

駈けて駈けて、望みはただ胸の中、

(てものばせないけしきにめがくらむ)

手も伸ばせない景色に目が眩む。

(あおくあおくうくそらとならどこまでもはしれるきがしていた)

青く青く浮く空とならどこまでも走れる気がしていた…

(ただかけろとささやくときはのらいぬのあしとつちぼこり)

ただ駈けろと囁く時は　野良犬の足と土埃

(かげをつくるくろくもとずじょうにひびくからすのこえ)

陰をつくる黒雲と　頭上に響くカラスの声

(まだかけろとささやくときはのらいぬのあしと)

まだ駈けろと囁く時は　野良犬の足と

(うちつけるはにわかあめながれおちるのはだれのなみだ)

うちつけるは俄雨　流れ落ちるのは誰の涙

(ふるえこごえてもひたはしるときどきはなにかにおいかけられながら)

震え凍えてもひた走る　時々は何かに追いかけられながら

(ひとみこらせばただひろがるこのみちのさきのくらやみは)

瞳こらせばただ広がるこの道の先の暗闇は

(いつかたしかにきいたはずのおとぎばなしのきけつににている)

いつか確かに聞いたはずの　お伽噺の帰結に似ている。

(かけてかけておもいはただむねのなか)

駈けて駈けて、思いはただ胸の中、

(みとめられないことば、のどをころす)

認められない言葉、喉を殺す。

(たかくうくそらのとぎれるばしょをみたようなきがしていた)

高く浮く空の途切れる場所を　見たような気がしていた…

(どうかあまぐもはらいあしたはあかるくひのひかりでてらしたまえ)

どうか雨雲はらい明日は明るく日の光で照らし給え、

(こどくをみてしまったのらいぬのこのさきのたびじにさちおおかれと)

孤独を見てしまった野良犬の　この先の旅路に幸多かれと

(さびしさもかなしみもうでのなか)

淋しさも悲しみも腕の中、

(きくこともできぬうたむねにしみる)

聴くことも出来ぬ歌、胸に沁みる。

(つかれはてたからだやすめるよりつぶれるまではしるほうがいい)

疲れ果てた身体休めるより潰れるまで走る方がいい

(かけてかけてのぞみはただむねのなか)

駈けて駈けて、望みはただ胸の中、

(てものばせないけしきにめがくらむ)

手も伸ばせない景色に目が眩む。

(あおくあおくうくそらとならどこまでもはしれるきがしていた)

青く青く浮く空となら　どこまでも走れる気がしていた。

(りょうめひらくあさもやとあたりにひびくたいようのおと)

両目ひらく朝靄と　辺りに響く太陽の音

(ただかけろとささやくときはのらいぬのあしとつちぼこり)

ただ駈けろと囁く時は　野良犬の足と土埃