百人一首 86~100
問題文
(なげけとてつきやはものをおもはする)
なげけとて月やはものを思はする
(かこちがおなるわがなみだかな)
かこち顔なるわが涙かな
(むらさめのつゆもまだひぬまきのはに)
むらさめの露もまだひぬまきの葉に
(きりたちのぼるあきのゆうぐれ)
霧たちのぼる秋の夕暮れ
(なにはえのあしのかりねのひとよゆえ)
難波江のあしのかり寝のひとよゆゑ
(みをつくしてやこひわたるべき)
身をつくしてや恋ひわたるべき
(たまのおよたえなばたえねながらへば)
玉の緒よ絶えなば絶えね長らへば
(しのぶることのよわりもぞする)
忍ぶることの弱りもぞする
(みせばやなおじまのあまのそでだにも)
見せばやな雄島のあまの袖だにも
(ぬれにぞぬれしいろはかわらず)
濡れにぞ濡れし色は変らず
(きりぎりすなくやしもよのさむしろに)
きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに
(ころもかたしきひとりかもねむ)
ころもかた敷きひとりかも寝む
(わがそではしおひにみえぬおきのいしの)
わが袖は潮ひに見えぬ沖の石の
(ひとこそしらねかわくまもなし)
人こそ知らね乾くまもなし
(よのなかはつねにもがもななぎさこぐ)
世の中は常にもがもななぎさ漕ぐ
(あまのをぶねのつなでかなしも)
あまのを舟の綱手かなしも
(みよしののやまのあきかぜさよふけて)
み吉野の山の秋風小夜ふけて
(ふるさとさむくころもうつなり)
ふるさと寒く衣うつなり
(おほけなくうきよのたみにおほふかな)
おほけなくうき世の民におほふかな
(わがたつそまにすみぞめのそで)
わが立つそまに墨染の袖
(はなさそふあらしのにわのゆきならで)
花さそふ嵐の庭の雪ならで
(ふりゆくものはわがみなりけり)
ふりゆくものはわが身なりけり
(こぬひとをまつほのうらのゆうなぎに)
来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに
(やくやもしほのみもこがれつつ)
焼くやもしほの身もこがれつつ
(かぜそよぐならのおがわのゆうぐれは)
風そよぐならの小川の夕暮れは
(みそぎぞなつのしるしなりける)
みそぎぞ夏のしるしなりける
(ひともおしひともうらめしあぢきなく)
人も惜し人も恨めしあぢきなく
(よをおもふゆえにものおもふみは)
世を思ふゆゑにもの思ふ身は
(ももしきやふるきのきばのしのぶにも)
ももしきや古き軒ばのしのぶにも
(なほあまりあるむかしなりけり)
なほあまりある昔なりけり