なりすましゲンガー

(ぼくはげんがー)

僕はゲンガー

(いつもこうやってうしろむいてゆびをくわえて)

いつもこうやって後ろ向いて指をくわえて

(どうせあっちにいってもこっちにいっても)

どうせあっちに行ってもこっちに行っても

(にっちもさっちもだれかの)

ニッチもサッチも誰かの

(かげにかくれたままなんでしょ)

影に隠れたままなんでしょ

(おばあさんこのせきどうぞ)

｢おばあさん、この席どうぞ｣

(ぼくはいすにすわったままです)

僕は椅子に座ったままです

(あらどうもたすかりました)

｢あら、どうも助かりました｣

(みてみぬふりふりあぁん)

見て見ぬフリ、フリ、あぁん

(さいきんのわかものたちは)

最近の若者達は、

(なんてよくききますけれど)

なんてよく聞きますけれど

(なにをかくそうわたくしこそがそのさいたるれいなのです)

何を隠そうワタクシこそがその最たる例なのです

(こわいこわいたにんのこころのおくそこ)

こわい、こわい、他人の心の奥底

(いないいないいないだれのめにもはいらない)

いない、いない、いない、誰の目にも入らない

(ぼくはげんがー)

僕はゲンガー

(いつもこうやってうしろゆびさされてわらわれて)

いつもこうやって後ろ指刺されて笑われて

(そんないったりきたりのじんせいなんて)

そんな行ったり来たりの人生なんて

(ひのひかりをあびないからなんどもかげふみするんだ)

日の光を浴びないから何度も影踏みするんだ

(さみしがりやのぼくのくちぐせ)

さみしがり屋の僕の口癖

(あいつみたいになんてなれないよ)

｢あいつみたいになんてなれないよ｣

(ほらきみとぼくのきょりがまたひらいて)

ほら、キミ、と僕の距離がまた開いて

(おいつけないんだ)

追いつけないんだ

(ひとりぼっちだれもいなくて)

ひとりぼっち、誰もいなくて

(こどくなよるをなんどもあかした)

孤独な夜を何度も明かした

(へやのすみっこぽつんとさくはなにゆうきをもらった)

部屋の隅っこぽつんと咲く花に勇気をもらった

(きみのこころのなかのぞいて)

君の心の中、覗いて

(わすれものをみつけました)

忘れ物を見つけました

(ぼくはきどあいらくのかんじょうがたりない)

僕は喜怒哀楽の感情が足りない

(ふかんぜんなそんざいです)

不完全な存在です

(あしたまたたいようのぼって)

明日、また太陽昇って

(いんとようのきょうかいできたら)

陰と陽の境界できたら

(やっぱにげつづけるだけのじんせいなんでしょう)

やっぱ、逃げ続けるだけの人生なんでしょう

(なりすましげんがーそうだこうやって)

なりすましゲンガー、そうだこうやって

(きみのかげにずっとかくれて)

君の影にずっと隠れて

(いつかてらされて)

いつか照らされて

(このままきえちゃえば)

このまま消えちゃえば

(それでいいな)

それでいいな