狐や踊れ

(あやしいつきのひかりさそわれ)

怪しい月の 光誘われ

(おどれやおどれきつねやおどれ)

踊れや踊れ 狐や踊れ

(ひとのまどいかかみのたわむれか)

人の惑いか 神の戯れか

(おどれやおどれきつねやおどれ)

踊れや踊れ 狐や踊れ

(おきなもかみもむしゃもぼうれいも)

翁も 神も 武者も 亡霊も

(おとめもきょうじょもおにもけものも)

乙女も 狂女も 鬼も 獣も

(このよにゃおもてとうらがある)

この世にゃ 表と裏がある

(きつねにゃおもてとうらがある)

狐にゃ表と裏がある

(あやしいつきのかげおつるよは)

怪しい月の 影落つる夜は

(あそべやあそべきつねにゃあそべ)

遊べや遊べ 狐にゃ遊べ

(ひとのよくぼうかかみのきまぐれか)

人の欲望か 神の気まぐれか

(あそべやあそべきつねにゃあそべ)

遊べや遊べ 狐にゃ遊べ

(にせもまことも)

偽も真も

(ゆめもうつつも)

夢も現も

(はんにゃもぼさつも)

般若も菩薩も

(ししゃもせいじゃも)

死者も生者も

(このよにゃおもてとうらがある)

この世にゃ 表と裏がある

(きつねにゃおもてとうらがある)

狐にゃ 表と裏がある

(このみはひとつなれどげっこうにやどるかげはふたつ)

この身は一つなれど 月光に宿る影は二つ

(ひとつはわたしひとつもわたし)

一つは私 一つも私

(すがたかたちはおなじなれどこころはひとつのみあらず)

姿形は同じなれど 心は一つのみ非ず

(ひとつはわたしひとつもわたし)

一つは私 一つも私

(せいとどうおもてとうら)

静と動 表と裏

(わたしとおまえ)

私とお前

(おまえとわたし)

お前と私

(かがみあわせのこのこころ)

鏡合わせのこの心

(むきあえばかげのごとく)

向き合えば影の如く

(とけあえばてつのごとく)

溶け合えば鉄の如く

(いまひとつにもどるだろう)

今一つに戻るだろう

(いまひとつにもどるだろう)

今一つに戻るだろう

(ひとなりやものなりや)

人なりや 物なりや

(かみなりやあやかしなりや)

神なりや 妖なりや

(ひとなりやものなりや)

人なりや 物なりや

(かげなりやわれなりや)

影なりや 我なりや