偶像/カンザキイオリ

(はるぞらでむかしをおもいだした)

春空で昔を思い出した

(やるきならさくらとともにちった)

やる気なら桜と共に散った

(かんがえなくてもけしきはかわるから)

考えなくても景色は変わるから

(なつぐもをみるともじがうかんだ)

夏雲を見ると文字が浮かんだ

(それでもかたちにはならなかった)

それでも形にはならなかった

(だってだってだって)

だって　だって　だって

(ぜんぶぐうぞうだぐうぞうだ)

全部偶像だ　偶像だ

(このことばのすべてがにせものだ)

この言葉の全てが偽物だ

(せいかつのためさ)

生活のためさ

(かんどうするならかねをくれ)

感動するなら金をくれ

(なあわらえないぜ)

なあ　笑えないぜ

(なあわらえないぜ)

なあ笑えないぜ

(なあなにひとつたのしくないんだよ)

なあ　何一つ楽しくないんだよ

(しんあいなるあなたへ)

親愛なるあなたへ

(だってだってだって)

だって　だって　だって

(あきかぜにおされまちをあるいた)

秋風に押され街を歩いた

(からだにちからがはいらなかった)

体に力が入らなかった

(おちばのほうがよっぽどきれいだ)

落ち葉の方がよっぽど綺麗だ

(ふゆばれのかぜがここちよかった)

冬晴の風が心地よかった

(みじかいひるのまにきえたかった)

短い昼の間に消えたかった

(だってだって)

だって　だって

(はきそうなくらいにさ)

吐きそうなくらいにさ

(こぼれてしまうんだ)

溢れてしまうんだ

(かきたいことばかきたいあなた)

描きたい言葉　描きたいあなた

(このからだがしょうもなく)

この体がしょうもなく

(そうさくをほっしてる)

創作を欲してる

(だけど)

だけど

(ぐうぞうだぐうぞうだ)

偶像だ偶像だ

(ぼくのぜんぶにかちがないんだよ)

僕の全部に価値がないんだよ

(ほんとうにすくわれましたとかばかいってんじゃねえよ)

「本当に救われました」　とかバカ言ってんじゃねえよ

(もうわらっちゃうぜ)

もう　笑っちゃうぜ

(もうわらっちゃうぜ)

もう　笑っちゃうぜ

(もうじんせいのねぶみはおわったよ)

もう　人生の値踏みは終わったよ

(しんあいなるあなたへ)

親愛なるあなたへ

(あさめがさめたらかこにもどって)

朝目が覚めたら過去に戻って

(きれいなせんろをたどれたのなら)

綺麗な線路を辿れたのなら

(めがつぶれるほどの)

目が潰れるほどの

(てらうはなびがみたい)

衒う花火が見たい

(のうみそをぜんぶえぐるみたいになにもかもぜんぶこわしてくれよ)

脳味噌を全部抉るみたいに何もかも全部壊してくれよ

(ちりになったらだきしめてくれよ)

塵になったら抱きしめてくれよ

(いきたいとおもうほど)

生きたいと思うほど

(ぐうぞうさぐうぞうさ)

偶像さ偶像さ

(なにひとつすくえなどしないんだよ)

何一つ救えなどしないんだよ

(ぼくみたいになんてなるなよ)

僕みたいになんてなるなよ

(ただはじをしるぜ)

ただ恥を知るぜ

(なあちがいないぜ)

なあ　違いないぜ

(なあちがいないぜ)

なあ　違いないぜ

(なあじんせいはあなたしかかえられない)

なあ　人生はあなたしか変えられない

(だろう)

だろう？

(ぜんぶ)

全部

(ぐうぞうだぐうぞうだ)

偶像だ偶像だ

(でもここちよくてしかたないのさ)

でも心地よくて仕方ないのさ

(はるもなつもあきもふゆもかいた)

春も夏も秋も冬も書いた

(うみだしたいから)

生み出したいから

(なあうみだしたいようみだしたいよ)

なあ　生み出したいよ　生み出したいよ

(なあじんせいのねぶみがおわっても)

なあ　人生の値踏みが終わっても

(よだれがとまらないよ)

涎が止まらないよ

(だれかをすくいたいとかどうでもいいんだよ)

誰かを救いたいとかどうでもいいんだよ

(じぶんをすくいたい)

自分を救いたい

(じぶんをあいせない)

自分を愛せない

(だれかあいしてくれよあいしてくれよ)

誰か愛してくれよ　愛してくれよ

(うみだしてもこどくがとまらないよ)

生み出しても孤独が止まらないよ

(しんあいなるあなたへ)

親愛なるあなたへ

(あなたをすくうのはあなたしかできない)

あなたを救うのはあなたしか出来ない

(それはぼくではない)

それは僕ではない