二季物語　寺尾聰

(こごえたみずうみまぶたにぎんのこもれび)

凍えた湖　まぶたに銀の木洩れ陽

(ふゆにとどいたてがみをあけるたびに)

冬に届いた手紙を　開けるたびに

(あなたがかなしい)

あなたが悲しい

(ぐれいのびんせんみしらぬもじがおしえる)

グレイの便箋　見知らぬ文字が教える

(あなたはにどとおれをたずねはしない)

あなたは二度と　俺を訪ねはしない

(ねむりのきしゃでたびにでた)

眠りの汽車で旅に出た

(あいしてるとくりかえしたおれにかみをゆらしわらった)

愛してると繰りかえした俺に　髪をゆらし微笑った

(まふゆをひとりすごすはずのヴぃらにさそえばよかった)

真冬をひとりすごすはずのヴィラに　誘えばよかった

(みずとりながめるものういごごはくうはく)

水鳥ながめる　もの憂い午後は空白…

(おれのこころのしずかなゆきはやまず)

俺のこころの　静かな雪は止まず

(あなたへあいをとじこめる)

あなたへ愛を閉じこめる

(あなたへあいをとじこめる)

あなたへ愛を閉じこめる

(まなつのなみまであなたとでっきにまどろむ)

真夏の　波間で　あなたとデッキにまどろむ

(ふるいらじおのじゃずにこのみまかせて)

旧いラジオのJazzに　この身まかせて

(ぐらすをうけとる)

グラスをうけとる

(いりえのほてるでとまりあわせたぐうぜん)

入江のホテルで　泊まり合わせた偶然

(すぎたなつごとのいたみがふとよぎる)

過ぎた夏ごとの痛みがふとよぎる

(ことしはあなたがきょうはんしゃさ)

今年はあなたが共犯者さ

(なつはふたりあまいみつにおぼれやけたはだをかさねる)

夏はふたり甘い蜜に溺れ　灼けた肌を重ねる

(つよいさけをあおるようなこいにめまいさえおぼえて)

強い酒をあおるような恋に　めまいさえ憶えて

(てらすにもたれてぬれたせなかをめでおう)

テラスにもたれて　濡れた背中を目で追う

(ふりむくあなたをひかりにうばわれて)

ふりむくあなたを　光に奪われて

(つかのまためいき)

つかのま　ため息

(すなにだかれあなたはなぜに)

砂に　抱かれ　あなたは何故に…

(このままなつをとめてしまえるならば)

このまま夏を止めてしまえるならば

(すべてをすててもおしくないぜ)

すべてを棄てても　惜しくないぜ