空空漠漠／志麻

(たとえばぼくのじんせいが)

例えば僕の人生が

(まだはじまってなかったとして)

まだ始まってなかったとして

(へたくそなじでえがくみらいずを)

下手くそな字で描く未来図を

(すこしもうたがわなかった)

少しも疑わなかった

(やたらさわがしいはるのおわりの)

やたら騒がしい春の終わりの

(きみをうつすきょうしつのまど)

君を映す教室の窓

(もろいおもいとむなしさだけが)

脆い思いと虚しさだけが

(ただとおりぬけてった)

ただ通り抜けてった

(ほらきみのりょうていっぱいの)

ほら君の両手一杯の

(ひどいいたみだって)

ひどい痛みだって

(このままきえなくたって)

このまま消えなくたって

(かかえたままでいいよ)

抱えたままでいいよ

(たとえばはなしのつづきが)

例えば話の続きが

(みかんせいでおわるとして)

未完成で終わるとして

(まるでふできなこのきゃくほんの)

まるで不出来なこの脚本の

(なかにいるとおもわなかった)

中にいると思わなかった

(ただつのってくあすのふあんを)

ただ募ってく明日の不安を

(かなしくてだれかのせいにして)

悲しくて誰かのせいにして

(とりとめもないふうけいだけが)

取り留めも無い風景だけが

(ただとおりすぎてった)

ただ通り過ぎてった

(もしこれがさいごだとしってたら)

もしこれが最後だと知ってたら

(もっとやさしくなれたのに)

もっと優しくなれたのに

(もしこれがさいごだとしってたら)

もしこれが最後だと知ってたら

(だれもきずつけなかったのに)

誰も傷つけなかったのに

(ただたらればのこうかいを)

ただ “たられば”の後悔を

(せおいたくないから)

背負いたくないから

(ここからにげだしたって)

ここから逃げ出したって

(のこさずさげたまま)

残さず提げたまま

(ほらもどらないいっしゅんの)

ほら戻らない一瞬の

(ひとつひとつだって)

一つ一つだって

(ならべてつなぎあわせて)

並べて繋ぎ合わせて

(だいじなきおくになるから)

大事な記憶になるから

(きみのりょうていっぱいの)

君の両手一杯の

(ひどいいたみだって)

ひどい痛みだって

(このままきえなくたって)

このまま消えなくたって

(かかえたままでいいよ)

抱えたままでいいよ

(かかえたままでいいから)

抱えたままでいいから