後序

問題文
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(これさらにわたくしのことばにあらずといえども、)
これさらにわたくしのことばにあらずといえども、
(きょうしゃくのゆくじもしらず、ほうもんのせんじんをこころえわけたることもそうらわねば、)
経釈の往く路もしらず、法文の浅深をこころえわけたることも候わねば、
(こしんらんのおおせごとそうらいしおもむき、ひゃくぶんがいち、)
古親鸞の仰せごと候し趣、百分が一、
(かたはしばかりをもおもいいでまいらせて、かきつけそうろうなり。)
かたはしばかりをもおもいいでまいらせて、書きつけ候うなり。
(かなしきかなや、さいわいにねんぶつしながら、)
かなしきかなや、さいわいに念仏しながら、
(じかにほうどにうまれずしてへんちにやどをとらんこと、)
直に報土にうまれずして辺地に宿をとらんこと、
(ひとむろのぎょうじゃのなかにしんじんことなることなからんために、)
一室の行者のなかに信心異なることなからんために、
(なくなくふでをそめてこれをしるす。)
なくなく筆を染めてこれをしるす。
(なづけて「たんにしょう」というべし。げけんあるべからず。)
なづけて「歎異抄」というべし。外見あるべからず。