Artist Dead by Daylight1

(そこらじゅうをさがしまわった。)

そこらじゅうを探し回った。

(するといえのすぐちかくにあるおがわに、)

すると家のすぐ近くにある小川に、

(あかるいあかいろのうわぎがおちているのがみえる。)

明るい赤色の上着が落ちているのが見える。

(まてぃあすのじゃけっとだ。)

マティアスのジャケットだ。

(おがわにとびこんだかるみながみつけたのは、)

小川に飛び込んだカルミナが見つけたのは、

(まばたきせず、うつろなめですいめんにうかぶおとうとだった。)

瞬きせず、うつろな目で水面に浮かぶ弟だった。

(まてぃあすはかわにおち、おぼれしんでいた。)

マティアスは川に落ち、溺れ死んでいた。

(かるみなのつきぬけるようななきさけぶこえがそらにひびいた。)

カルミナの突き抜けるような泣き叫ぶ声が空に響いた。

(かわぎしでかるみなをちちおやがみつけたとき、)

川岸でカルミナを父親が見つけた時、

(かのじょはからすのむれにかこまれながらおとうとを)

彼女はカラスの群れに囲まれながら弟を

(りょううでにしっかりといだきしめ、すすりないていた。)

両腕にしっかりと抱きしめ、すすり泣いていた。

(おとうとのいたいがちちおやにうばいとられると、)

弟の遺体が父親に奪い取られると、

(かるみなはこえがかれるまでなきつづけた。)

カルミナは声が枯れるまで泣き続けた。

(よくじつのあさ、せかいはまるでくらやみにおおわれたかのようだった。)

翌日の朝、世界はまるで暗闇に覆われたかのようだった。

(ちちおやはなにもいわなかった。いわなくてもつたわったからだ。)

父親は何も言わなかった。言わなくても伝わったからだ。

(かるみなは、なにもかもがじぶんのせいでおきたということをさとっていた。)

カルミナは、何もかもが自分のせいで起きたということを悟っていた。

(すうかげつがすぎても、おとうとをうしなったきおくはあさつゆのようにせんめいだった。)

数ヶ月が過ぎても、弟を失った記憶は朝露のように鮮明だった。

(じこけんおにおちいったかのじょはえもかけなくなってしまった。)

自己嫌悪に陥った彼女は絵も描けなくなってしまった。

(まてぃあすのいないじんせいなんてむいみだ。)

マティアスのいない人生なんて無意味だ。

(まてぃあすのたんじょうびのあさ、どんよりとしたそらのした、)

マティアスの誕生日の朝、どんよりとした空の下、

(かるみなはいえからすこしはなれたところにあるせまいはしまであるいた。)

カルミナは家から少し離れたところにある狭い橋まで歩いた。

(じぶんにすくいをもたらすものはなにもない、かのじょはそうかくしんしていた。)

自分に救いをもたらすものは何もない、彼女はそう確信していた。

(ははおやはいなくなり、おとうとはしんで、)

母親はいなくなり、弟は死んで、

(ちちおやはすべてをじぶんのせいだとおもっている。)

父親はすべてを自分のせいだと思っている。

(かるみなは、いきるかてをすべてうしなったとおもいこんだ。)

カルミナは、生きる糧をすべて失ったと思い込んだ。

(はしのさくまであるくと、そのしたにははげしくながれるかわがみえた。)

橋の柵まで歩くと、その下には激しく流れる川が見えた。

(じもとでは「とびおりすぽっと」とよばれている。)

地元では「飛び降りスポット」と呼ばれている。

(くるまがなんだいかよこぎるも、だれもとまろうとはしない。)

車が何台か横切るも、誰も止まろうとはしない。

(だれもきにかけるひとはいないようだった。)

誰も気に掛ける人はいないようだった。

(さくをのりこえはしのふちにたつと、かるみなのあしがふるえた。)

柵を乗り越え橋の縁に立つと、カルミナの足が震えた。

(みおろすと、かわのみずがきょだいないわにいきおいよく)

見下ろすと、川の水が巨大な岩に勢いよく

(ぶつかってはながれていく。かるみなはめをとじた。)

ぶつかっては流れていく。カルミナは目を閉じた。

(するととつぜん、みみざわりなからすのなきごえがそらいっぱいになりひびいた。)

すると突然、耳障りなカラスの鳴き声が空いっぱいに鳴り響いた。

(めをあけたかるみながみたのは、)

目を開けたカルミナが見たのは、

(じぶんのほうへとむかってとんでくるくろいはねのたいぐんだった。)

自分のほうへと向かって飛んでくる黒い羽の大群だった。

(はねのたいぐんがわかれてそらがみえると、)

羽の大群が分かれて空が見えると、

(こうたくのあるくろからすがうえからとびおりてきた。)

光沢のある黒カラスが上から飛び降りてきた。

(そのうち１ぴきがかのじょのかたにとまり、)

そのうち1匹が彼女の肩に留まり、

(まるでたましいをのぞきこむかのようにかるみなのめをじっとみつめている。)

まるで魂を覗き込むかのようにカルミナの目をじっと見つめている。

(かるみながさくをもつてをゆるめると、)

カルミナが柵を持つ手をゆるめると、

(そのからすはうるさくないた。)

そのカラスはうるさく鳴いた。

(かるみなはこんわくして、からすをみた。)

カルミナは困惑して、カラスを見た。

(べつのからすがさくにとまり、またべつのからすもとまった。)

別のカラスが柵に留まり、また別のカラスも留まった。

(はしのさくはあっというまにあつまってきたからすでおおわれ、)

橋の柵はあっという間に集まってきたカラスで覆われ、

(からすたちはかのじょのそばをはなれようとしなかった。)

カラスたちは彼女の側を離れようとしなかった。

(ふかかいでみさだめるようなめせんをたいりょうにかんじる。)

不可解で見定めるような目線を大量に感じる。

(まるでためされているかのようだ。)

まるで試されているかのようだ。

(いっしゅんでもしたをみるとからすのどとうのなきごえがひびき、)

一瞬でも下を見るとカラスの怒涛の鳴き声が響き、

(かるみなのひげきてきなしょうどうはさまたげられた。)

カルミナの悲劇的な衝動は妨げられた。

(からすはかのじょのしあわせをねがっているようだった。)

カラスは彼女の幸せを願っているようだった。

(ふちからぶらさがったかのじょのくろかみがかぜにゆれるなか、)

縁からぶら下がった彼女の黒髪が風に揺れるなか、

(かるみなはからすをじぶんとどうるいだとおもった。)

カルミナはカラスを自分と同類だと思った。

(まてぃあすがしんでから、はじめてじぶんはひとりではないとかんじた。)

マティアスが死んでから、初めて自分は独りではないと感じた。

(かるみなはいえにかえり、もういちどいきてみることにした。)

カルミナは家に帰り、もう一度生きてみることにした。

(からすはさったが、じぶんのみになにかがおきればもどってくるきがした。)

カラスは去ったが、自分の身に何かが起きれば戻ってくる気がした。

(そうぜつなたいけんにしげきされたかるみなはふでをてにとり、)

壮絶な体験に刺激されたカルミナは筆を手に取り、

(そのごなんしゅうかんもかけてそのできごとをえでひょうげんした。)

その後何週間もかけてその出来事を絵で表現した。

(くろいんくをつかってくろいはねのたいぐんがむらがる「とびおりすぽっと」と、)

黒インクを使って黒い羽の大群が群がる「飛び降りスポット」と、

(じぶんのいのちをすくってくれたからすのむれをえがく。)

自分の命を救ってくれたカラスの群れを描く。

(そのたいけんがきっかけで、かのじょのとくちょうであるくろいんくをつかった)

その体験がきっかけで、彼女の特徴である黒インクを使った

(しゅるれありすむのげいじゅつがうまれた。)

シュルレアリスムの芸術が生まれた。

(すうねんごにはしきさいがやみをつきやぶり、)

数年後には色彩が闇を突き破り、

(ひょうげんほうほうがかわったことであーとひょうげんのはばがひろがった。)

表現方法が変わったことでアート表現の幅が広がった。

(かるみなはひとどおりのおおいまちかどでだいきぼのへきがをえがき、)

カルミナは人通りの多い街角で大規模の壁画を描き、

(そうだいないしょうをでざいんして、かげきなしをろうどくした。)

壮大な衣装をデザインして、過激な詩を朗読した。

(かるみなのあーとはじもとでおきたちかしいひとのひげきをひょうげんしたもので、)

カルミナのアートは地元で起きた近しい人の悲劇を表現したもので、

(そんなさくひんをみたじもとみんはかのじょのあーとをむしすることはできなかった。)

そんな作品を見た地元民は彼女のアートを無視することはできなかった。

(そしてかのじょがげいじゅつをひろうするばには、どこにでもからすがついてきた。)

そして彼女が芸術を披露する場には、どこにでもカラスがついてきた。

(かるみなのぱふぉーまんすはますますめだつようになり、)

カルミナのパフォーマンスはますます目立つようになり、

(ほかのげいじゅつかから「こぶするあーとすたいる」が)

他の芸術家から「鼓舞するアートスタイル」が

(ちゅうもくされるようになったかのじょは、いこのくらすむのしてんを)

注目されるようになった彼女は、イコノクラスムの視点を

(りかいしてくれるがかのぐるーぷとつきあうようになる。)

理解してくれる画家のグループと付き合うようになる。

(かのじょはぱふぉーまんすがきっかけでだいきぼな)

彼女はパフォーマンスがきっかけで大規模な

(しゅるれありすむうんどうがおきると、しゃかいげんしょうにまではってんした。)

シュルレアリスム運動が起きると、社会現象にまで発展した。