Artist Dead by Daylight2

(つぎのひのあさ、かわいたかぜにのってとんできた)

次の日の朝、乾いた風に乗って飛んできた

(すながかおにふれ、かるみなはめをさました。)

砂が顔に触れ、カルミナは目を覚ました。

(さばくのどまんなかで、てあしがしばられたじょうたいでいすにすわっている。)

砂漠のど真ん中で、手足が縛られた状態で椅子に座っている。

(ゆうじんたちはしばられ、じめんによこたわっていた。)

友人たちは縛られ、地面に横たわっていた。

(かるみなのかおにかげがかかる。)

カルミナの顔に影がかかる。

(かるみなはみあげた。)

カルミナは見上げた。

(ながいろーぶにみをつつみ、くろっぽいふーどをかぶって)

長いローブに身を包み、黒っぽいフードをかぶって

(かおをかくしたおとこがちかづいてくる。)

顔を隠した男が近づいてくる。

(おとこはろーぶからぎんのないふをとりだした。)

男はローブから銀のナイフを取り出した。

(かるみなのてをつかむと、おとこはきいたことのないげんごで)

カルミナの手を掴むと、男は聞いたことのない言語で

(せいかをあんしょうしはじめた。)

聖歌を暗唱しはじめた。

(かるみなはおとこからめをはなさなかった。)

カルミナは男から目を離さなかった。

(おとこはあんしょうをやめると、とつぜんないふをいっきにふりおとした。)

男は暗唱をやめると、突然ナイフを一気に振り落とした。

(かるみながくつうでひめいをあげ、めをさましたゆうじんたちが)

カルミナが苦痛で悲鳴を上げ、目を覚ました友人たちが

(みたこうけいはおそろしいものだった。)

見た光景は恐ろしいものだった。

(かるみなのせつだんされたてがすなにおちている。)

カルミナの切断された手が砂に落ちている。

(ふーどをかぶったおとこはまんぞくげなえみをうかべた。)

フードを被った男は満足げな笑みを浮かべた。

(これではもうえをかけないなぁ？)

これではもう絵を描けないなぁ？

(かるみなはおとこにむかってかなきりごえでののしりのことばを)

カルミナは男に向かって金切り声で罵りの言葉を

(あびせながら、こうそくからのがれようとみをよじらせた。)

浴びせながら、拘束から逃れようと身をよじらせた。

(おとこはかるみなのあごをつかんだ。)

男はカルミナの顎を掴んだ。

(かのじょはおとこにつばをはきかけた。)

彼女は男に唾を吐きかけた。

(おとこはひくくうなるとかのじょのくちをこじあけ、したをつかみだした。)

男は低く唸ると彼女の口をこじ開け、舌を掴みだした。

(かるみなはてじょうをはずそうともがいている。)

カルミナは手錠を外そうともがいている。

(おとこはきょうれつないちげきでかるみなのしたをきりおとした。)

男は強烈な一撃でカルミナの舌を切り落とした。

(かのじょはくつうであえいだ。)

彼女は苦痛で喘いだ。

(おとこがろーぶでないふをふくと、ちのあとがのこった。)

男がローブでナイフを拭くと、血の跡が残った。

(これではもうしをろうどくできないだろう？)

これではもう詩を朗読できないだろう？

(かるみなのむねがかなしみでおしつぶされる。)

カルミナの胸が悲しみで押しつぶされる。

(にがみよりもせんめいだった。)

苦味よりも鮮明だった。

(せいぎょできないほどのいかりにあっとうされ、)

制御できないほどの怒りに圧倒され、

(なげきとそうしつかんでしょうきをたもてなくなる。)

嘆きと喪失感で正気を保てなくなる。

(かるみなはおとうとをなくしていた。)

カルミナは弟を亡くしていた。

(そのいたみにたちむかうためのゆいいつのしゅだんを、かのじょはうしなったのだ。)

その痛みに立ち向かうための唯一の手段を、彼女は失ったのだ。

(かるみなはおとうとがしんだひとおなじくらいなきさけんだ。)

カルミナは弟が死んだ日と同じくらい泣き叫んだ。

(あれちにそうぞうしいからすのなきごえがひびきわたった。)

荒れ地に騒々しいカラスの鳴き声が響き渡った。

(そらはくろいくものつむじかぜでおおわれている。)

空は黒い雲のつむじ風で覆われている。

(くろいとりがちまみれになったかるみなのうでにとまった。)

黒い鳥が血塗れになったカルミナの腕に留まった。

(みあげると、そらからげきりゅうのようないきおいでからすがとんできて、)

見上げると、空から激流のような勢いでカラスが飛んできて、

(ふーどをかぶったおとこにむかってつっこんでくる。)

フードを被った男に向かって突っ込んでくる。

(うえたからすたちがおとこのにくたいをようしゃなくついばむなか、)

飢えたカラスたちが男の肉体を容赦なくついばむなか、

(じぶんのかいたしゅるれありすむのさくひんがじつげんしていく)

自分の描いたシュルレアリスムの作品が実現していく

(ようすをみながらかるみなはほほえんだ。)

様子を見ながらカルミナは微笑んだ。

(ところが、からすのたーげっとがじめんによこたわるゆうじんたちにうつったのをみて、)

ところが、カラスのターゲットが地面に横たわる友人たちに移ったのを見て、

(かのじょのしんぞうはいかりでとびでそうになった。)

彼女の心臓は怒りで飛び出そうになった。

(くつうとざいあくかん、きょうふのなみがおしよせ、かるみなはさけんだ。)

苦痛と罪悪感、恐怖の波が押し寄せ、カルミナは叫んだ。

(しかしさけんでもむだだ。)

しかし叫んでも無駄だ。

(うえたからすはせいぎょできないのだから。)

飢えたカラスは制御できないのだから。

(ゆうじんたちのくつうにみちたさけびごえがきょうれつさをますなか、)

友人たちの苦痛に満ちた叫び声が強烈さを増すなか、

(かるみなのめにやみがかかった。)

カルミナの目に闇が掛かった。

(だれかのしがおとずれる。)

誰かの死が訪れる。

(つぎもまた、かのじょのせいで。)

次もまた、彼女のせいで。

(こく、くろいきりがかるみなをつつんだ。)

濃く、黒い霧がカルミナを包んだ。