水茎あやめの話(CV楠木ともり)　フロムアイドル

(だいめいのないびでおてーぷをさしこんで)

題名のないビデオテープを差し込んで

(とぎれとぎれのがめんに)

途切れ途切れの画面に

(ひそやかなゆめをいだきはじめていた)

ひそやかな夢を 抱き始めていた

(すりきれるほどにみたそのじょうけいは)

すり切れるほどに 見たその情景は

(ひとりぼっちのわたしをつなぎとめていた)

ひとりぼっちの私を繋ぎ止めていた

(せかいのはじまり)

世界の始まり

(きらきらとかがやいたそのせかいには)

きらきらと輝いたその世界には

(つたなすぎるあこがれも)

拙すぎるあこがれも

(たよりないひかりも)

頼りないひかりも

(どうしようもないくらいにとおいから)

どうしようもないくらいに遠いから

(しろくろのあめがふるように)

白黒の雨が降るように

(ざあざあとざつおんがなる)

ざあざあと雑音が鳴る

(すりへってしまったてーぷは)

すり減ってしまったテープは

(ぷつんときれてうごかない)

ぷつんと切れて動かない

(ちいさなきみのとなりで)

小さな君の隣で

(わたしはあいまいにほほをあからめる)

私は曖昧に 頬を赤らめる

(ふたりならんだかげがのびて)

二人並んだ 影が伸びて

(とぎれてはまたつながってをくりかえす)

途切れては また繋がってを繰り返す

(ちいさなきみとすごした)

小さな君と過ごした

(ちいさなこうえんが)

小さな公園が

(ただひとつわたしとせかいとのつながりだった)

ただひとつ 私と世界との繋がりだった

(ゆうやけにそまったきみのほほが)

夕焼けに染まった君の頬が

(だいだいのなかにとけていた)

橙の中に 溶けていた

(はずかしそうにわらうきみの)

恥ずかしそうに笑う君の

(そのはかなさにもきづかなかった)

その儚さにも 気づかなかった

(ゆうひのなかにきえていくきみが)

夕日の中に 消えていく君が

(ふりかえることもしないから)

振り返ることもしないから

(あたりまえのようにおとずれるあすを)

当たり前のように訪れる明日を

(うたがうはずもなかった)

疑うはずもなかった

(ちいさなきみがかかえるには)

小さな君が 抱えるには

(それはあまりにもおおきすぎて)

それはあまりにも大きすぎて

(ありがとうとさよならの)

ありがとうとさよならの

(そのつづきがどこにもみつからなくて)

その続きがどこにも見つからなくて

(さいごのことばをくりかえしなぞるように)

最後の言葉を繰り返しなぞるように

(そのつづきをまつように)

その続きを待つように

(きみのわらうこえが)

君の笑う声が

(そのおもいでがすりきれるまで)

その思い出がすり切れるまで

(もしもまたあした)

もしもまた明日

(ちいさなきみがいつかのようにわらうなら)

小さな君がいつかのように笑うなら

(ふたりとなりあったそのじかんを)

二人となりあったその時間を

(いつかのようにすごせたなら)

いつかのように過ごせたなら

(しろとくろのそらのましたで)

白と黒の空の真下で

(ありがとうとさよならのそのつづきを)

ありがとうとさよならのその続きを

(とぎれたせかいのつづきを)

途切れた世界の続きを

(ふたりでまたえがけるように)

二人でまた描けるように

(いつかまたきみがけがれもなくわらって)

いつか また君が穢れもなく笑って

(てをふるそのひまで)

手を振るその日まで

(いつかまたふたりとなりあってわらうそのひまで)

いつかまた 二人となりあって笑うその日まで

(わたしのこえがだいめいのないおとにのって)

私の声が題名のない音に乗って

(すりきれたふぃるむみたいなそらにひびくように)

すり切れたフィルムみたいな空に響くように

(ちいさくいきをした)

小さく息をした