最後にしたかった／音郷家

(くすりはのめるだけのんでおこう)

薬は飲めるだけ飲んでおこう

(てくびはきれるだけきっておこう)

手首は切れるだけ切っておこう

(ぼくがここにいたこときざんでのこしておこう)

僕がここにいたこと刻んで遺しておこう

(どうせちかいうちにしぬんだからさ)

どうせ近いうちに死ぬんだからさ

(ひげきでしかないじんせいだったし)

悲劇でしかない人生だったし

(しぬひをひきのばしていただけだったし)

死ぬ日を引き延ばしていただけだったし

(なきつづけたよるずつうにくるしんだひる)

泣き続けた夜頭痛に苦しんだ昼

(あきらめててばなしてなにもみえなくなって)

諦めて手放して何も見えなくなって

(これいじょうぼくじしんがくるしまないように)

これ以上僕自身が苦しまないように

(ひとにめいわくをかけないように)

他人に迷惑をかけないように

(めいわくだからしなないでといわれてきたけど)

迷惑だから死なないでと言われてきたけど

(さいごのめいわくだからゆるしてほしい)

最後の迷惑だから許してほしい

(うらんだりねたんだりはもうやめておこう)

恨んだり妬んだりはもうやめておこう

(できるだけおだやかにしんこきゅうしてすごそう)

できるだけ穏やかに深呼吸して過ごそう

(せめてさいごだけでもきれいでいたいんだよ)

せめて最後だけでも綺麗でいたいんだよ

(だってちかいうちにしねるんだからさ)

だって近いうちに死ねるんだからさ

(つぎはそうだなあかるいみらいをみたい)

次はそうだな明るい未来を見たい

(みんながしるようなたのしみをしりたい)

みんなが知るような楽しみを知りたい

(あとはあとはそうだななんだろうな)

あとはあとはそうだななんだろうな

(しあわせをしらないからおもいつかないや)

幸せを知らないから思いつかないや

(これいじょうぼくのかちがさがらぬように)

これ以上僕の価値が下がらぬように

(しゃかいのおにもつをだっきゃくするために)

社会のお荷物を脱却するために

(だれかがかなしむよなんていわないでほしい)

誰かが悲しむよなんて言わないでほしい

(いきてたってめいわくそうにしてるくせに)

生きてたって迷惑そうにしてるくせに

(きみにありがとうってつたえておこう)

君にありがとうって伝えておこう

(ずっとだいすきだってつたえておこう)

ずっと大好きだって伝えておこう

(てがふるえるのはきっとくすりのせいだから)

手が震えるのはきっと薬のせいだから

(こわくなんてないはずなのにねえどうして)

怖くなんてないはずなのにねえどうして

(くすりはのめるだけのんでおこう)

薬は飲めるだけ飲んでおこう

(てくびはきれるだけきっておこう)

手首は切れるだけ切っておこう

(ぼくがここにいたこときざんでのこしておこう)

僕がここにいたこと刻んで遺しておこう

(どうせちかいうちにしんじゃうんだからさ)

どうせ近いうちに死んじゃうんだからさ

(てがふるえるのはきっとくすりのせいだから)

手が震えるのはきっと薬のせいだから

(こわくなんてないはずなのにねえどうして)

怖くなんてないはずなのにねえどうして